日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

脳炎および脳症  (2023/05/16 更新)
ウイルス性脳炎,脳症


臨床状況

  • 脳炎,脳症
  • 発熱,意識レベルの変化(嗜眠状態,錯乱,昏迷,昏睡)および神経学的巣症状.
  • ねこひっかき病(Bartonella感染)による脳炎の臨床的特徴:10歳未満の小児の痛みを伴う局所リンパ節炎で,IgG抗体力価>1:250.
  • 髄液中細胞増加,おもにリンパ球.

病原体

  • 病原体が判明するのは症例の約半数.そのうち20~50%はウイルスによるもの.
  • その他の感染病原体(Clin Infect Dis 49: 1838, 2009):結核15%,マラリア,Listeria 10%,その他にR. rickettsiiAnaplasmaEhrlichiaMycoplasmaなどがある
  • ポワッサンはダニ媒介のウイルスであり,マサチューセッツ州およびニューイングランド州北部で報告が増加している(N Engl J Med 380: 380, 2019).
  • 自己免疫抗体による脳炎,たとえば抗NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体脳炎は最も多くみられるが,他にも多くのものが知られている(N Engl J Med 378: 840, 2018)(コメント参照)

第一選択

  • ウイルスによると想定できる場合:H. symplexおよびVZVの髄液PCRの結果が出るまでは,アシクロビル 10mg/kg静注(1時間以上かけて)8時間ごと
  • R. rickettsiiAnaplasmaEhrlichiaMycoplasmaが疑われる患者には,DOXY 100mg静注†12時間ごと
  • 病原体が同定されたら,それに応じて治療を変更

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • なし

コメント

  • 2007~2011年にカリフォルニア脳炎プロジェクトに集められた標本では,30歳以下で最も多かったのは抗NMDA受容体(NMDAR)抗体による自己免疫脳炎であった(41%)(それ以外では,エンテロウイルス38%,HSV 19%,VZVまたは西ナイルウイルス6%)(Clin Infect Dis 54: 899, 2012).
  • 現在では,神経細胞表面に対する他の多くの抗体が同様の臨床疾患を引き起こすことが知られている(N Engl J Med 378: 840, 2018).
  • 症状としてはけいれん,幻覚/精神障害,自律神経失調,運動障害,言語機能障害.抗NMDARは組織障害に対する非特異的な反応である可能性がある.単純ヘルペス脳炎と確定診断された患者の30%で抗NMDARが見出された:Ann Neurol 72: 902, 2012
  • 神経細胞表面の抗原に対する抗体の確認が必要.市販の(たとえばMayo),および検査機関で抗体パネルを利用できる.
  • 総説では,早期診断,ステロイド,免疫グロブリンおよび/または血漿交換による早期治療が,良好な神経学的結果に結びつくことが強調されている(Crit Care Med 46: 1514, 2018).
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2023/05/15