日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

侵襲性アスペルギルス症  (2026/04/14 更新)
侵襲性アスペルギルス症:肺または肺外病変


臨床状況

  • 侵襲性肺感染が最も多く,中枢神経,皮膚,消化管などへの播種が起こることがある.
  • リスクグループ:持続的好中球減少症(急性白血病,骨髄異形成症候群),同種異系幹細胞移植(移植片対宿主病),固形臓器移植,慢性肉芽腫疾患,コルチコステロイド高用量.

診断/病原体

診断
  • X線またはCTでの典型的な肺所見(halo sign,空洞形成,巨大結節)(Clin Infect Dis 52: 1144, 2011).CT上のhalo signに基づいて抗真菌薬治療を開始すれば,良好な治療反応と結果が得られる.
  • 侵襲性アスペルギルス症が疑われる患者において,CT肺血管造影上の血管途絶所見および隣接する局所肺病変は診断を裏づける.この所見がないことは本疾患の除外に有用である可能性がある(Clin Infect Dis 54: 610, 2012).
  • 以前にPIPC/TAZおよびAMPC/CVAを投与された患者で起こっていた偽陽性は,製造プロセスの改良によりみられなくなった.
  • 他の真菌(Fusarium属,Histoplasma capsulatumBlastomyces dermatitidis)との交差反応,および一部の血液製剤の調製液によっても偽陽性となることがある:Clin Infect Dis 55: e22, 2012
  • 画像
  • β-Dグルカン検査
  • Aspergillusや他の真菌の細胞壁にある多糖体
  • 比色定量的酵素免疫測定法により血清中で検出される
病原体
  • Aspergillus fumigatus が最も多いが,まれにA. nigerA. flavusA. terreusも疾患を引き起こすことがある

第一選択

  • VRCZ 初日6mg/kg静注または経口12時間ごと,その後4mg/kg静注または経口12時間ごと,または

第二選択

  • PSCZ(注:徐放錠†/注射剤と懸濁液†で用量が異なり,徐放錠のほうが良好な血中濃度が得られる)
  • 徐放錠†300mg経口1日2回・2回,その後300mg経口1日1回
  • 懸濁液†200mg1日4回,病状が安定後,400mg経口1日2回
  • 300mg 90分以上かけて静注1日2回・1日,その後300mg静注1日1回
  • L-AMB 3~5mg/kg/日静注
  • ABLC†5mg/kg/日静注

(†:日本にない剤形)

コメント

  • VRCZ
  • 目標範囲1.0~5.5mg/L(4日間通じて)に達するように血清中濃度の測定を行う:反応率改善および副作用低減と関連(Clin Infect Dis 55: 1080, 2012).
  • 腎不全患者でのVRCZ静注は7日間までなら腎機能悪化には結びつかなかった.VRCZ静注は従来考えられていたほど毒性はない可能性がある(Clin Infect Dis 54: 913, 2012).
  • 196例を対象としたレトロスペクティブ研究では,37例(19%)がVRCZ耐性株に感染し,死亡率増大と関連していた.したがって早期にin vitro 感受性検査を行う必要がある(Clin Infect Dis 68: 1463, 2019).
  • ISCZ(プロドラッグ:イサブコナゾニウム硫酸塩)
  • 侵襲性アスペルギルス症に対するISCZとVRCZのランダム化比較試験では,侵襲性アスペルギルス症治療におけるISCZのVRCZに対する非劣性が示され,ISCZは全体として副作用がより少なかった(特に皮膚,眼および胆肝)(Lancet 387: 760, 2016).
  • PSCZ
  • 侵襲性アスペルギルス症に対してPSCZとVRCZを比較したランダム化比較試験では,VRCZに対するPSCZの非劣性が示された.しかし,全体での治療関連副作用はPSCZのほうが少なかった(Lancet 397: 499, 2021).
  • L-AMBおよびABLC†
  • 多施設レトロスペクティブ研究では,L-AMBは侵襲性アスペルギルス症に対する初期治療において有効なアゾール薬であった(Open Forum Infect Dis 13: ofaf777, 2026).
  • CPFG
  • 侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)では反応率は約50%であり,単剤での使用は推奨されない.
  • 併用治療
  • ランダム化比較試験では,VRCZ+Anidulafungin併用群はVRCZ単剤群に比べ,侵襲性アスペルギルス症の全患者で死亡率の低下傾向を示した(Ann Intern Med 162: 81, 2015).X線所見とガラクトマンナン陽性によって診断が確定した侵襲性アスペルギルス症患者のサブグループでは,併用治療により死亡率が低下した.どの患者が最も恩恵を受けるかを決定するためにさらなるデータは必要ではあるが,併用治療は考慮すべきである.一部の専門家はAMPH-B処方または他のアゾール薬に対してもエキノキャンディン系の追加を推奨している.
  • いつ抗真菌感受性検査を行うか?:(1)患者の事前の抗真菌薬曝露が高度である場合,(2)ヨーロッパの一部の地域でみられるように,地域のアゾール耐性A. fumigatus検出率が高い場合(Emerg Infect Dis 25: 176,2019)(3)治療に対する反応がない場合.
  • どのAspergillusも,一般的にどの抗真菌薬に対しても耐性なのか? A, terreusはAMPH-Bに耐性のことが多く,A. lentulusおよびNeosartorya udagawaeはアゾールに耐性のことがある.

(†:日本にない剤形)

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2026/04/13