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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
マクロライド系-概説および一覧
(
2022/1/11 更新
)
概説
臨床的用法については個々の薬剤を参照.
アジスロマイシン
,
クラリスロマイシン
,
エリスロマイシン
,
フィダキソマイシン
.
すべてのマクロライド系に共通の副作用:胃腸障害,QTc延長,薬物相互作用,耳鳴り,薬剤誘発性肝炎.
胃腸障害:モチリンは消化管ホルモンで,十二指腸/空腸の受容体を活性化し蠕動を促す.経口剤および静注剤に用いられるEMおよびEMエステル類はモチリン受容体を活性化して非協調性の蠕動を高め,20~25%の頻度で食欲不振,悪心,嘔吐を起こす.重症患者におけるマクロライド系の有用な腸運動促進作用は明確には示されなかった(
Expert Opin Pharmacother 14: 1171, 2013
;
Eur J Pharmacol 715: 10, 2013
).
AZM/CAMはモチリン受容体への結合力は弱く,消化管障害は少ない.
副作用
妊娠中のリスク(
BMJ 368: m331, 2020
)
妊娠第1期でのマクロライド:奇形リスク増大に関連.特にペニシリン系抗菌薬に比べ心血管系の奇形.
マクロライドは妊娠1~3期のいずれにおいても,性器奇形のリスク増大と関連する.
出生後2週間以内にEMを全身投与すると,新生児幽門狭窄症になるおそれがある(
J Pediatr 139: 380, 2001
).レトロスペクティブ研究では,AZMにも同様のおそれがあることが示唆されている(
Pediatrics 135: 483, 2015
).
AZM,CAM,EMにより心電図上のQTc延長:
QTc延長作用
,および
crediblemeds.org
を参照.
QTc延長は先天性あるいは後天性に起こりうる.
先天性のQTc延長は,心筋K+/Na+チャネルを規定する6遺伝子(LQT1-3)の変異により起こることがある.
変異の浸透度はさまざまで,無症状から,反復する失神,まれに突然死まで起こることがある(
N Engl J Med 358: 169, 2008
).
QTc>470msecの男性,>480msecの女性,さらに男女ともQTc>500msecでリスクが上昇!
他の薬剤によりさらにリスクが増強(マクロライド,アゾール,抗不整脈薬,および多数の薬剤).QT延長によりTorsades de pointes(心室頻拍)および/または心室細動が起こることがある.文献:
Clin Infect Dis 43: 1603, 2006
.高齢,女性,心疾患の既往,電解質不均衡でリスクはより大きい.文献:
J Clin Med 7: E533, 2018
.
レトロスペクティブ研究において,AZM5日間投与で心血管死リスクが上昇(ハザード比2.88, P<0.001).AMPCと比較して,治療コース100万回あたりの血管死増加は47と推定(
N Engl J Med 366: 1881, 2012
).
よって,原因不明の失神,原因不明の急性心臓死の家族歴,電解質異常の存在,またはQTcを延長させうる他の薬剤投与の必要性がある患者に対しマクロライド系抗菌薬を用いる場合は,慎重に行うこと.
入院患者では,マクロライド系,フルオロキノロン系,アゾール系抗真菌薬投与の前にQTc検査を行うのが妥当である.
QTcの問題に関する総説.リスクと有用性のバランスについて:
Am J Med 128: 1362, 2015
EM estolateを投与された成人(小児でなく)の約1000人に1人で胆汁うっ滞性肝炎が発生.リスクはCAMと同等かつAZMよりかなり低い.文献:
J Antimicrob Chemother 66: 1431, 2011
腎または肝障害のある患者に≧4g/日のEMを静注すると,一過性で可逆性の耳鳴または難聴が発生.AZM≧600mg/日でも同様の報告(
Clin Infect Dis 24: 76, 1997
).マクロライドによる聴器毒性に関する総説
:Front Neurol 12: 652674, 2021
;
J Antimicrob Chemother 76: 2708, 2021
.
AZMによる重症筋無力症悪化の報告あり.
薬剤
アジスロマイシン
(AZM)
クラリスロマイシン
(CAM)
エリスロマイシン
(EM)
フィダキソマイシン
(FDX)
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2022/01/06