日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Mycoplasma genitalium  (2021/12/21 更新)
尿道炎,子宮頸管炎


臨床状況

  • 男性の持続性および/または再発性非淋菌性尿道炎(NGU)の40%で検出される.中国からの報告では有病率19.7%(Clin Infect Dis 70: 805, 2020).
  • 症候性・無症候性尿道炎が,NGUの男性15~20%,非クラミジア性NGUの20~25%,持続性・再発性尿道炎の40%にみられる.
  • 子宮頸管炎(臨床的子宮頸管炎の10~30%),骨盤内炎症性疾患(PID),早産,自然流産,および不妊症と関連する.
  • 女性の骨盤内炎症性疾患の病原体としての報告もある.
  • しばしば無症状でもある.
  • 直腸や咽頭部位が陽性になることもあるが,通常は無症状である.
  • 英国,ヨーロッパ,オーストラリア,および米国のNGU治療ガイドラインでは,第一選択にDOXY,第二選択にAZMが推奨されている.
  • マクロライド耐性は臨床的失敗と相関し,その分子マーカーの範囲は44~90%である.
  • フルオロキノロン耐性であれば,マクロライドにも耐性であることが多い.
  • FDAはM. genitalium検出のための核酸増幅検査(NAAT)(Hologic)を承認したが(2019年1月),抗菌薬耐性は検出できない.
  • 培養は研究の場でのみ可能.
  • 抗菌薬耐性の検査は開発中だが,一般的には利用できない.

診断

  • NAATが使用可能な場合:尿,尿道,陰茎,子宮頸部,膣のスワブサンプルが検査可能.
  • 無症状の人への検査は推奨されない.
  • 耐性試験が可能な場合は,その結果を治療の指針とする.
  • 持続性または再発性の尿道炎や子宮頸管炎ではM. genitaliumを疑い,PIDを考慮する.

第一選択

  • 現在,以下の2段階での治療が推奨されている:DOXYで菌量を減らし,その後,高用量のAZMまたはMFLXを投与する.
  • マクロライド感受性の場合:DOXY 100mg経口1日2回・7日,その後,AZM 1g経口を初回とし,その後500mg経口1日1回・3日(合計2.5g).
  • マクロライド耐性の場合:DOXY 100mg経口1日2回・7日,その後MFLX 400mg経口1日1回・7日.
  • 耐性試験ができない場合,マクロライド耐性の場合と同様の治療を行う.MFLXを使用できない場合は,治癒試験の実施が推奨される.対症療法の失敗または治癒試験が陽性の場合は,専門医に相談することが推奨される.

第二選択

  • 治療失敗に対してMINOを用いたデータは限られている.
  • Pristinamycin 1g経口1日4回・10日(入手可能なら)(M. genitaliumに高い活性のあるストレプトグラミン抗菌薬だが,米国では市販されていない)

抗微生物薬適正使用

  • AZMを性感染症に対する2剤併用処方に用いることが,N. gonorrhoeaeM. genitalium、腸管および呼吸器病原体の耐性増加につながるとの重大な懸念がある.
  • 耐性出現,抗菌薬の使用をモニターすることが重要.

コメント

  • Pristinamycinは,マクロライドおよびフルオロキノロン系に耐性の株に有効との報告があるが,広く流通してはいない(Emerg Infect Dis 24: 328, 2018).
  • 細胞壁がないため,βラクタム薬は無効.
  • システマティックレビュー/メタアナリシスでは,AZM 1g1回投与での治癒率はわずか67%であった(Clin Infect Dis 61: 1389, 2015).
  • 男性同性愛者に多くみられる病原菌であり,直腸炎患者の直腸検体に含まれる.
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2021/12/21