日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

炭疽,ワクチン  (2026/04/14 更新)


はじめに/ワクチン接種の適応

はじめに
  • Biothraxのアジュバント製剤Cyfendusは,2023年6月にFDAの認可を受けたが,適応は曝露後予防(PEP)のみであり,曝露前予防(PrEP)ではない.最新のACIP推奨は2019年.
  • 米国政府の備蓄には、数百万回分のCyfendus(名称AV7909)が残っている.2026年までに米国の備蓄を補充するため、8,000万ドル相当の未確定の接種回数分の購入が進行中.
  • Cyfendusでは,PEPの4週目の第3回接種の必要はなくなる.抗菌薬の併用は必要である.
  • Cyfendusにより,炭疽を含む公衆衛生上の大規模な緊急事態に対する対応が単純化される.

ワクチン接種の適応
 標準コース(ルーチン)(曝露前予防:PrEP)
  • 曝露の可能性がある軍人
  • リスクがある検査施設職員
  • 研究所で感染の可能性がある動物を扱う職員,農夫,獣医,家畜業者
  • リスクのある環境研究に従事している人
  • 接種を検討:空気中に散布された芽胞の曝露にむすびつく活動に従事する救急隊員その他.救急隊員以外はルーチンではない.
  • 推奨されない:(1)胃腸または皮膚の曝露後,吸入曝露のリスクがない場合:抗菌薬処方のみ.(2)動物を扱う人,郵便局職員,医療従事者.

 曝露後予防(PEP)
  • 免疫機能正常でワクチン未接種の人で,B. anthracisアエロゾルに曝露した,または曝露した可能性がある場合
  • 職業的曝露を繰り返す人
  
 用量とスケジュール
PrEP
商品名(製造元)
Biothrax(Emergent Biosolutions)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
炭疽ワクチン吸入(AVA,無細胞濾過)
年齢
18~65歳
用量,経路
0.5mL筋注
初回接種スケジュール-曝露前予防(PrEP)
0,1,6ヵ月
初回接種スケジュール-短縮コースのPrEP
なし
現在あるいは将来の高リスクに対する初回追加接種
初回接種コースの完了後6ヵ月,12ヵ月に1回ずつ接種
それ以降の追加接種
リスクが続いている場合は12ヵ月ごとに1回接種,現在リスクはないが将来高リスク1となる場合には3年ごとに接種.
  1. 高リスク状況へ移行するワクチン被接種者は,高リスク地域への移行を2週間延期するべきである(免疫反応を確保するため),延期ができない場合には,抗菌薬による予防を2週間受ける.

PEP
商品名(製造元)
Cyfendus(Emergent Biosolutions);AV7909とも呼ばれる
Biothrax(Emergent Biosolutions)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
吸収型炭疽ワクチン(アジュバント)
炭疽ワクチン吸入(AVA,無細胞濾過)
年齢
18~65歳
生後6ヵ月以上1
用量,経路
0.5mL筋注
0.5mL皮下注(皮下注ができなければ筋注)
初回接種スケジュール-PEP
2回:0,14日+同時に,予防的抗菌薬治療42日(下記参照)
0,2,4週で1回ずつ合計3回+同時に予防的抗菌薬治療を42日(下記参照)
初回接種スケジュール-短縮コースPrEP
なし
なし
初回追加接種
なし
なし
その後の追加接種
なし
なし
  1. 生後6ヵ月~17歳については臨床試験が進行中で,年齢>65歳,妊娠中または授乳中の女性については緊急時使用許可(EUA).生後6ヵ月未満の小児には,ただちに抗菌薬治療を行うこともある.

注:ワクチン供給が制限されている場合は,2回総量接種(0および2~4週に0.5mL)または半量を3回(0,2,4週に0.25mL)としてもよい

Raxibacumab(40mg/kg1回静注)またはObiltoxaximab(16mg/kg1回静注)もPEP用として使用可能(ワクチンまたは他の手段が利用できないか適切でない場合).

炭疽-曝露後予防参照


   
同時に行う抗菌薬治療
  • エアロゾル曝露が起こっている可能性がある場合の曝露後予防の経験的処方
  • 健康で,年齢>18歳の成人,妊婦以外
  • CPFX 500mg 12時間ごと,またはDOXY 100mg 12時間ごと,またはLVFX 500mg経口24時間ごと
  • 抗菌薬治療の治療期間(年齢18~65),
  • AVA初回接種後42日,または最終接種後2週の遅くなる方まで
  •   Cyfendusの最終接種が14日,Biothraxの最終接種が28日
  • 高齢成人(年齢≧66歳)および免疫不全者
  • CPFX 500mg 12時間ごと,あるいはDOXY 100mg 12時間ごと
  • 抗菌薬治療期間
  • ワクチン接種の有無にかかわらず60日
  • 第二選択,抗菌薬の望ましい順序,小児用量,妊婦については,炭疽-曝露後予防を参照.

有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
 Biothrax
  • BioThrax初回接種コースの第2回接種または第3回接種後のセロコンバージョン率は85~100%.
  • 疾患予防の効果は92%.
  • 9ヵ月での抗体濃度と予測生存率は,筋注と皮下注で有意な差はない
  • 初回接種コース第3回後の予防とワクチンは,高リスク地域で有用であり,PPEも併用される.
  • 高抗体価は,現在曝露の高リスク状態である人にとってはもっとも重要だが,時間とともに低下するものであり,追加接種の間隔を1年以上あけてはならない.
 Cyfendus
  • 重要な第IIIb相試験では,健康な成人において,CyfendusはBioThraxワクチン接種に比較して保護レベルの免疫応答,非劣性,良好な忍容性を示した(Vaccine 72: 128068, 2026).

選択,互換性
  • 異なる状況でBiothraxとCyfendusをどう使用するかは,ACIPでまだ検討されていない.

毒性

禁忌
  • 以前のワクチン接種での,あるいはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応があった人には,BiothraxもCyfendusも接種してはならない.
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず)
  • 炭疽感染の既往.
副作用
  • 注射部位の反応,頭痛,筋肉痛,疲労
  • Biothrax筋注は皮下注とくらべても注射部位の有害事象は少ない.
  • Cyfendusでもっとも多い副作用は筋肉痛(75.2%),疲労(67.1%),頭痛(58.0%).
  • Cyfendusでの重大な副作用は報告されていない.
薬物相互作用
  • Cyfendus 0.5mLとCPFXまたはDOXY経口との併用は,CPFXおよびDOXYの薬物動態あるいはCyfendusの免疫原性に臨床的に重大な影響を及ぼさなかった.
  • BioThraxは標準の小児用ワクチンと併用すべきではない.
  • ルーチンのワクチンはBioThrax接種から4週間後に接種可能である.
  • 他のワクチンと併用するならば,BioThraxは他の部位に注射すること.

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • Biothraxは被接種者から出生した乳児に出生異常を引き起こすことが知られており,アジュバント製剤であるCyfendusもBiothraxと同一の活性抗原を含んでいる.
  • BiothraxはPrEPに禁忌.どちらのワクチンも,特殊な状況についての公衆衛生ガイダンスにより決められた状況でのみ用いるべきである.
  • 妊娠中のRaxibacumabおよびObiltoxaximabは,必要性が明確な場合にのみ使用すべきである.
  • 妊婦や授乳中の女性では,CPFXがPEP薬剤として望ましい.
  • BioThraxは,授乳に対して禁忌でも警告でもない.
  • Cyfendusのヒトでのデータはない.特殊な状況についての公衆衛生ガイダンスにより決められた状況でのみ用いるべきである.
免疫不全/HIV
  • 免疫機能不全のある人は,推奨されている用量/スケジュールでは十分に予防できないことがある.
  • ワクチンと併用する場合,抗菌薬治療は42日ではなく,60日行う.

コメント

  • 州が資金提供している研究プロジェクトに参加している研究者で,職業的リスクからして曝露前予防が必要な人には,CDC薬剤サービスはBiothraxを提供している.(404)639-3670またはdrugservice@cdc.gov.
  • 初回接種コースを完了していない免疫機能正常者が,曝露高リスク地域に早急に入らなければならない場合,または研究施設で炭疽アエロゾルに曝露してしまった場合のPrEPからPEPスケジュールへの移行の必要についてCDCの詳細なプロトコールがある.
  • ワクチン接種を完了した研究施設職員が,研究施設での曝露を経験した場合は,抗菌薬30日を考慮する.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • CDCの細菌特殊病原体部門は,患者管理に関する緊急の問い合わせに24時間365日対応している.
  • CDC緊急オペレーションセンター(770-488-7100)に電話し,BSPBの当直担当者を呼び出す.
  • 緊急を要しない公衆衛生または臨床に関する問い合わせは,bspb@cdc.gov までメール.
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2026/04/13