日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

トリコモナス症-腟炎,尿道炎  (2022/11/8 更新)


臨床状況

  • 大量の泡状腟分泌物,pH>4.5,膿性,悪臭.
  • 女性:灼熱感,排尿障害,そう痒感,性交痛,性交後の出血.
  • 感染してもほとんどは無症状.
  • 出産アウトカム不良と関連する.
  • セックスパートナーを検査・治療すること.
  • 3つの病原体TrichomonasChlamydiaGonorrhoeaeの検査の主流は,適切な試料のNAATによる検査である.NAATによる検査では,高リスク患者におけるTrichomonasの有病率は女性で27%,男性で9.8%であった:Clin Infect Dis 59: 834, 2014

病原体/診断

病原体
  • Trichomonas vaginalis
診断
  • 核酸増幅検査(NAAT)が広く普及し,ウェットマウント顕微鏡検査に代わり普及しつつある(ウェットマウントのTrichomonasに対する感度はNAATより3~5倍低い).
  • 一部の施設では培養も可能である.
  • 解剖学的女性の検体には,臨床医が採取した子宮頸部内のスワブ,臨床医が採取した膣内のスワブ,女性の尿検体,および液体パップスメア検体が含まれる.
  • 男性の尿または尿道検体に対する検査の信頼性やFDAの承認は,検査によって異なる.
  • 抗原検査も利用できるが,一般的にNAATより感度が低い.
  • 培養検査は薬剤耐性検査が可能になるので,治療失敗の場合に有用な診断検査である.
  • MNZの薬剤耐性検査を行うためのキットはCDCから入手可能である(Test OrderまたはCDC +1 404-718-4141へ連絡).

第一選択

  • MNZ 500mg経口1日2回・7日(女性),または2g1回(男性)
  • HIV陽性の場合:
  • MNZ 7日間
  • HIV陽性の女性は全例で1年に1回スクリーニングを行う
  • 直近60日以内に関係のあったセックスパートナーを治療する:MNZ 2g 1回,パートナーを治療できない場合には,患者の治療を優先する.
  • 治療失敗は,服薬,パートナーの治療,性交渉の制限に関するアドヒアランス不良による.
  • 男性における至適処方は不明であり,現在の推奨は1回投与.
  • Trichomonasに対する治療に案する議論は,妊娠中の問題も含めて,CDC性感染症ガイドライン(2021)を参照:MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021

第二選択

  • 治療失敗の場合:
  • 初回の治療失敗:MNZ 500mg経口1日2回・7日で再治療
  • それでも無効の場合は感染症医(ID)コンサルテーションを受けるか,CDCに連絡:(+1)770-488-4115
  • Secnidazoleは女性での有効性がRCTで示されており(Clin Infect Dis 73: e1282, 2021),パートナーの治療にも使用可能である.1回2gの分包(顆粒)をりんごソース,ヨーグルト,プリンなどに混ぜて経口投与する.
  • 薬剤耐性菌
  • 高用量で失敗の場合,以下を考慮する

コメント

  • T. vaginalisを有する人に対して,HIV,梅毒,淋病,クラミジアなどの他の性感染症の検査も行う.
  • 症候性感染:パートナー双方の治療が完了し,無症候となってからも1週間は性交渉をもたないこと.
  • 無症候性感染:パートナー双方の治療が完了してからも1週間は性交渉をもたないこと.
  • 有効性が低いため,MNZのゲル剤の使用は避ける.
  • 女性では再感染が非常に多いため,CDCのガイドライン(MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021)に従い3カ月以内に再検査を行うことが推奨される.また,特にT.vaginalisの既往歴や単回投与のMNZ治療歴のある女性に対し,多くの専門医が治癒検査(TOC)を勧めている(Sex Transm Dis 49: 231, 2022).男性での再検査のデータは明らかになっていない.
  • 無症候でHIV陰性の女性には,トリコモナスのスクリーニングを行う必要はないが,HIV陽性の女性は全例で1年に1回スクリーニングを行う.
  • MNZおよびチニダゾールはアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを誘導せず,アルコール摂取に伴うジスルフィラム様作用を支持するデータは強力なものではない:Antimicrob Agents Chemother 64: e0216, 2020
  • 2021CDC性感染症ガイドラインは,Trichomonasまたは細菌性膣症治療でMNZやチニダゾールを服薬した場合のアルコール摂取禁止を現在では推奨していない:Clin Infect Dis 74: S152, 2022
  • 妊婦
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2022/11/07