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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
トリコモナス症-腟炎,尿道炎
(
2022/11/8 更新
)
臨床状況
大量の泡状腟分泌物,pH>4.5,膿性,悪臭.
女性:灼熱感,排尿障害,そう痒感,性交痛,性交後の出血.
男性:尿道炎の症状,精巣上体炎あるいは前立腺炎(男性同性愛者ではまれ)(
Clin Infect Dis 73: 1119, 2021
)
感染してもほとんどは無症状.
出産アウトカム不良と関連する.
セックスパートナーを検査・治療すること.
3つの病原体
Trichomonas
,
Chlamydia
,
Gonorrhoeae
の検査の主流は,適切な試料のNAATによる検査である.NAATによる検査では,高リスク患者における
Trichomonas
の有病率は女性で27%,男性で9.8%であった:
Clin Infect Dis 59: 834, 2014
.
2021年CDC性感染症ガイドライン:
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
.
CDCガイドラインのエビデンスについての総説:
Clin Infect Dis 74: S127, 2022
.
病原体/診断
病原体
Trichomonas vaginalis
診断
核酸増幅検査(NAAT)が広く普及し,ウェットマウント顕微鏡検査に代わり普及しつつある(ウェットマウントの
Trichomonas
に対する感度はNAATより3~5倍低い).
一部の施設では培養も可能である.
解剖学的女性の検体には,臨床医が採取した子宮頸部内のスワブ,臨床医が採取した膣内のスワブ,女性の尿検体,および液体パップスメア検体が含まれる.
男性の尿または尿道検体に対する検査の信頼性やFDAの承認は,検査によって異なる.
抗原検査も利用できるが,一般的にNAATより感度が低い.
培養検査は薬剤耐性検査が可能になるので,治療失敗の場合に有用な診断検査である.
MNZの薬剤耐性検査を行うためのキットはCDCから入手可能である(
Test Order
またはCDC +1 404-718-4141へ連絡).
第一選択
MNZ
500mg経口1日2回・7日(女性),または2g1回(男性)
HIV陽性の場合:
MNZ 7日間
HIV陽性の女性は全例で1年に1回スクリーニングを行う
直近60日以内に関係のあったセックスパートナーを治療する:
MNZ
2g 1回,パートナーを治療できない場合には,患者の治療を優先する.
治療失敗は,服薬,パートナーの治療,性交渉の制限に関するアドヒアランス不良による.
妊婦に対するMNZ使用は安全と考えられる(
Pharmacotherapy 35: 1052, 2015
).
ランダム化比較試験では,すべての女性で1回治療よりも7日治療が支持されている(
Lancet Infect Dis 18: 1251, 2018
).
男性における至適処方は不明であり,現在の推奨は1回投与.
Trichomonas
に対する治療に案する議論は,妊娠中の問題も含めて,CDC性感染症ガイドライン(2021)を参照:
MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021
.
第二選択
チニダゾール
2g経口1回
治療失敗の場合:
初回の治療失敗:
MNZ
500mg経口1日2回・7日で再治療
2度目の治療失敗:
MNZ
または
チニダゾール
2g経口24時間ごと・7日
3度目の治療失敗:
チニダゾール
2g経口24時間ごと・7日
それでも無効の場合は感染症医(ID)コンサルテーションを受けるか,CDCに連絡:(+1)770-488-4115
Secnidazole
は女性での有効性がRCTで示されており(
Clin Infect Dis 73: e1282, 2021
),パートナーの治療にも使用可能である.1回2gの分包(顆粒)をりんごソース,ヨーグルト,プリンなどに混ぜて経口投与する.
薬剤耐性菌
MNZ
または
チニダゾール
2g経口24時間ごと・7日
高用量で失敗の場合,以下を考慮する
高用量経口
チニダゾール
2g1日1回+
チニダゾール
静注500mg1日2回・14日
高用量経口
チニダゾール
1g1日3回+膣内投与
パロモマイシン
(夜間膣内
パロモマイシン
6.25%クリーム4g)・14日
コメント
T. vaginalis
を有する人に対して,HIV,梅毒,淋病,クラミジアなどの他の性感染症の検査も行う.
症候性感染:パートナー双方の治療が完了し,無症候となってからも1週間は性交渉をもたないこと.
無症候性感染:パートナー双方の治療が完了してからも1週間は性交渉をもたないこと.
チニダゾール
1回は
MNZ
よりも忍容性が良好である.
現在承認されている治療薬はすべて5-ニトロイミダゾール系である.過敏症なら
MNZの脱感作
を行う(
Sex Transm Dis 48: e111, 2021
).
有効性が低いため,MNZのゲル剤の使用は避ける.
女性では再感染が非常に多いため,CDCのガイドライン(
MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021
)に従い3カ月以内に再検査を行うことが推奨される.また,特にT.
vaginalis
の既往歴や単回投与の
MNZ
治療歴のある女性に対し,多くの専門医が治癒検査(TOC)を勧めている(
Sex Transm Dis 49: 231, 2022
).男性での再検査のデータは明らかになっていない.
無症候でHIV陰性の女性には,トリコモナスのスクリーニングを行う必要はないが,HIV陽性の女性は全例で1年に1回スクリーニングを行う.
MNZおよびチニダゾールはアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを誘導せず,アルコール摂取に伴うジスルフィラム様作用を支持するデータは強力なものではない:
Antimicrob Agents Chemother 64: e0216, 2020
.
2021CDC性感染症ガイドラインは,Trichomonasまたは細菌性膣症治療でMNZやチニダゾールを服薬した場合のアルコール摂取禁止を現在では推奨していない:
Clin Infect Dis 74: S152, 2022
.
難治例に対する他の選択肢については,
Clin Infect Dis 53(Suppl 3): S160, 2011
;
MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021
参照.
男性でのトリコモナスに関する総論:
Clin Infect Dis 73: 1119, 2021
.
女性での
Secnidazole
に関するRCT(
Clin Infect Dis 73: e1282, 2021
):プラセボ群(67例)との比較では,トリコモナス症治療群(64例)の治癒率は92.2%(p<0.001).
パートナーも
Secnidazole
で治療可能.
妊婦
いずれの妊娠期においても,
MNZ
が催奇形性や変異原性を示すというデータはない(
MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021
,
Curr Drug Saf 10: 170, 2015
).
充分なデータがないため,
チニダゾール
と
Secnidazole
の使用は控えること.
チニダゾール
2g経口1回投与から72時間は授乳を控える.
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2022/11/07