日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

網膜炎-サイトメガロウイルス  (2022/11/1 更新)
サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎,HIV/AIDS


臨床状況

  • CMV網膜炎は,CD4<50/mm3のAIDS患者の失明原因として最も多い.
  • 鑑別診断
  • HIV網膜炎
  • 単純ヘルペス網膜炎
  • 水痘・帯状疱疹網膜炎(まれ,診断は難しい)
  • 非活動性CMV網膜炎患者で抗レトロウイルス治療(ART)に反応(CD4≧60/mm3に上昇)した30例中19例で,免疫再構築硝子体炎(immune recovery vitreitis)(視力低下と後眼部の炎症による浮遊物-硝子体炎,乳頭炎,黄斑変性)が治療開始後平均43週で発症(J Infect Dis 179: 697, 1999).
  • コルチコステロイド治療(眼周囲のコルチコステロイド投与あるいは短期の全身性ステロイド治療)により,CMV網膜炎の再燃なしに免疫再構築硝子体炎の炎症反応を抑制できる.

病原体

  • サイトメガロウイルス(CMV)

第一選択

  • 辺縁の病変:バルガンシクロビル 900mg経口12時間ごと・14~21日,その後900mg経口24時間ごとの維持療法.
  • 治療後抑制(CD4数<100/mm3):バルガンシクロビル 900mg経口24時間ごと.CD4数>100/mm3が6週続けば中断.

第二選択

  • ホスカルネット 60mg/kg静注8時間ごとまたは90mg/kg静注12時間ごと・14~21日,その後90~120mg/kg静注24時間ごと,または
  • Cidofovir 5mg/kg静注2週,その後5mg/kg隔週(投与はそれぞれ生食静注補液およびプロベネシド経口とともに行う),または
  • 再発に対してのみ:Fomivirsenの硝子体内注入を繰り返す

コメント

  • 注:抗レトロウイルス治療(ART)を受けた患者では免疫再構築炎症症候群(いわゆる免疫回復ぶどう膜炎)に注意.IRISの懸念があってもARTを遅らせてはならないことに注意!
  • Fomivirsenは作用機序が独特なため,分離ウイルスが他の薬剤に耐性ならば試みてもよい.
  • ガンシクロビル/ホスカルネット/バルガンシクロビル
  • 静注ガンシクロビルとホスカルネットの効果は同等.
  • ガンシクロビルはホスカルネットのような腎毒性はない.
  • ホスカルネットにはガンシクロビルのような骨髄抑制はないが,骨髄毒性はガンシクロビルと同等.
  • 経口バルガンシクロビルが両者に代わって用いられる.
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2022/10/27