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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
肺炎-
Nocardia
属
(
2025/07/29 更新
)
Nocardia
肺炎の特異的治療
臨床状況
免疫不全患者における肺炎.
Nocardia
属の培養陽性.
明白な免疫不全がない患者では,Nocardia肺感染は,抗顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)自己抗体の存在と関連している.
病原体
ヒトの感染においては40種以上の
Nocardia
が同定されている(
Clin Microbiol Rev 19: 259, 2006
;
Clin Microbiol Rev 35: e0002721, 2022
).下のリストはもっとも多くみられるもの
Nocardia nova
complex
Nocardia farcinica
Nocardia cyriacigeorgica
Nocardia brasiliensis
Nocardia abscessus
第一選択
ST
(トリメトプリムとして)15mg/kg/日を静注/経口・2~4回に分割+
IPM/CS
500mg静注6時間ごと・3~4週,その後
ST
10mg/kg/日静注または経口2~4回に分割・6ヵ月
至適治療,治療期間についての議論は
Clin Infect Dis 80: e53, 2025
参照
第二選択
(
IPM/CS
500mg静注6時間ごと+
AMK
7.5mg/kg静注12時間ごと)・3~4週,その後
ST
経口
その他の治療選択肢については
Clin Infect Dis 80: e53, 2025
参照
抗微生物薬適正使用
Nocardia属は,ときとして構造的肺疾患(たとえば気管支拡張症)患者の肺に定着する場合がある.したがって,患者の免疫機構が正常であれば,感染の症状も,感染を示唆する放射線画像上の変化もないため,一部の専門家は,ただちに治療をすることなく,臨床症状,放射線画像,微生物学検査によって,定着から感染への進行の注意深いモニターを考慮することがある
コメント
Nocardia
属はCNS病変と関連する傾向がある. 肺ノカルジア症の患者には,脳の画像診断(CTまたはMRI)を行うべき.
in vitroでの抗菌薬処方の活性を確認するために,種同定および感受性試験が推奨される.
抗菌薬の感受性は種によって異なる.
N. farcinica
はCTRXに耐性のため,この種による感染症にCTRXは用いないこと.
STはすべての種に対する選択薬の1つ.in vitroでの耐性増加の報告があるが(
Clin Infect Dis 51: 1445, 2010
),これがアウトカム悪化と関連しているかは不明であり,MICエンドポイントの解釈の難しさを反映している可能性もある(
J Clin Microbiol 50: 670, 2012
).
ST,AMK,LZDへの耐性はまれ.
LZDはin vitroでは高活性であり(
Clin Microbiol Infect 17: 690, 2011
;
Clin Microbiol Infect 12: 905, 2006
),臨床データはわずかだがin vivoでの有効性を示唆している(
Open Forum Infect Dis 7: ofaa090, 2020
).治療期間が毒性によって限定されることがある.
TZDはinvitroで活性があり,おそらく忍容性が高いが,使用は症例報告のみであり有効性は十分に確認されていない(
J Infect Chemother 28: 1172, 2022
).
一部の種に対しin vitroで活性を示す他の薬剤もあるが,有効性に関するデータは少ない:AMPC/CVA, CTRX, CAM, MINO(
Clin Microbiol Infect 17: 690, 2011
;
Clin Microbiol Infect 12: 905, 2006
;
Medicine (Baltimore) 88: 250, 2009
).
スルホンアミド耐性株の場合,あるいは患者がサルファ剤アレルギーの場合,AMK+(IPM/CS,MEPM,CTRXのうちいずれか1剤)を用いる.
感受性試験に関する電話相談:Wallace Lab (+1) 903-877-7680;CDC (+1) 404-639-3158.
【日本の情報】
日和見疾患の診断・治療「ノカルジア感染症」
(HIV感染症とその合併症 診断と治療ハンドブック:国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター).日本で最も多い N. farcinica は薬剤耐性が多い.
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2025/07/28