日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

水痘・帯状疱疹ウイルス-帯状疱疹  (2026/04/28 更新)


臨床状況

  • 水痘・帯状疱疹感染(帯状疱疹).合併症リスクは年齢とともに増大する.多くみられる合併症として,ヘルペス後神経痛(PHN)(7.9%),眼合併症(2.9%),運動神経障害(1.6%),髄膜炎(0.5%),耳帯状疱疹(0.2%)がある(Arch Intern Med 157: 1209, 1997).
  • 播種性水痘・帯状疱疹ウイルス感染症が起こることがあり,免疫不全患者でもっとも多い.
  • 抗ウイルス治療は,特に免疫不全患者で治癒を早め,症状の持続時間を短縮させ,合併症リスクを低下させる.
  • 抗ウイルス治療は,以下の基準のいずれかを満たす患者で適応となる:(1)>50歳,(2)中等症~重症の皮疹あるいは痛み,(3)顔面/眼の病変,(4)感染の急性合併症,(5)免疫不全状態(N Engl J Med 369: 255, 2013).
  • 治療適応は小児でも同様.
  • 免疫正常者では,発症後72時間を超えると抗ウイルス治療の有用性は明らかでない.免疫不全患者では活動性感染のどの時期でも治療が推奨される.
  • 眼病変が疑われる場合は眼科医が診察を行うこと.
  • 関連:帯状疱疹ワクチンは50歳以上の生児で心筋梗塞および脳卒中の低リスクと関連している(Clin Infect Dis 81: e441, 2025).
  • 小児
  • 水痘・帯状疱疹は小児にも起こる.ワクチン接種を受けた小児では,水痘は野生株かワクチン株による.
  • 小児では,急性期の痛みは多くないため,診断は発疹を認めることに基づく.
  • ヘルペス後神経痛は小児ではまれだが,他の合併症は成人と同等の率で生じる.
  • 帯状疱疹は免疫正常の小児でも起こるが発症率は免疫不全のある小児の方がはるかに高い.慎重に病歴を聴取,CBC,HIV検査を全例に施行する,できれば免疫グロブリンとリンパ球パネル検査を行う.

病原体/診断

病原体
  • 帯状疱疹ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZV)
診断
  • 病歴と臨床検査だけで行われることが多い.小疱内の液体のDFAまたはPCRにより確定可能.小疱内の液体のウイルス培養の感度は低い.固形臓器移植患者では特異的診断が推奨される(Clin Transplant 33: e13622, 2019).

第一選択

  • 軽症~中等症
  • 重症(眼病変または神経病変あるいは播種性)

第二選択

  • アシクロビル 800mg経口1日5回・7日(有効だが,投与法が簡便でない)
  • 小児:アシクロビル80mg/kg/日6時間ごとに分割

治療期間/予防

治療期間
  • 上記処方参照.
予防
  • ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防に関するワクチンの特徴については帯状疱疹ワクチン参照.
  • 2022:>18歳の特定の免疫不全者がルーチンの適応に追加された.

コメント

  • ヘルペス後神経痛(PHN)
  • >50歳の患者では,バラシクロビルのほうがアシクロビルよりヘルペス後神経痛をより早期に軽減した.帯状疱疹に関連した疼痛の持続期間中央値は,バラシクロビルで38日,アシクロビルで51日(Antimicrob Agents Chemother 39: 1546, 1995).毒性は両者ともファムシクロビルと同等(Arch Fam Med 9: 863, 2000).
  • ファムシクロビル:治癒までの期間が短い.>50歳では,プラセボに比べヘルペス後神経痛を軽減した:有痛期間はファムシクロビルで63日,プラセボで163日.急性疼痛とヘルペス後神経痛の軽減については,ファムシクロビルとアシクロビルは同等(J Microbiol Immunol Infect 37: 75, 2004).
  • アシクロビル:4つのプラセボ対照試験(患者数691人)のメタアナリシスでは,アシクロビルによって約2倍の疼痛改善が得られることがどの指標からも示され,3カ月,6カ月時のヘルペス後神経痛も減少した(Clin Infect Dis 22: 341, 1996).>50歳では,疼痛消失までの期間(中央値)がプラセボ101日に対してアシクロビル41日.
  • デュロキセチンの前投薬は,プラセボと比較して疼痛を軽減した(視覚的アナログスケールによる評価).デュロキセチンの用量は,最初の1週間は20mg/日経口,2週目に40mg/日に,3週目に60mg/日に増量して10週間継続.疼痛が消失した場合,または10週目に達した場合,1週間は40mg/日に減量し,その後1週間は20mg/日に減量し、その後投与を中止した(Clin Infect Dis 78: 880, 2024).
  • ヘルペス後神経痛の疼痛コントロールについて,ガバペンチン,リドカインパッチ(5%),オピオイド鎮痛薬の有効性が比較試験で示されている(Drugs 64: 937, 2004).ノルトリプチリンとアミトリプチリンは有効性は同等だが,ノルトリプチリンのほうが忍容性が高い(Clin Infect Dis 36: 877, 2003).
  • デュロキセチンに関するランダム化対照比較試験(PROCESS試験)では,統計的に有意差はないものの,PHN抑制に有効である傾向がしめされた.デュロキセチン群とプラセボ群でのPHNの発症は,それぞれ22.9%,28.8%であった(p=0.067,mITTによる).しかし,VAS(visual analog pain scale)での評価が≧3との報告はプラセボ群の方に有意に多かった(Clin Infect Dis 78: 880 2024).
  • 免疫不全患者
  • 水痘帯状疱疹の重症化,臓器病変,播種化のリスクが大きい.早期の治療開始が重要であり,合併症の注意深いモニターが推奨される.7日治療が合理的だが,すべての病変の痂皮形成まで治療を続ける専門家もいる.
  • 免疫不全の小児全員に治療が適応となる.
  • 悪化すれば静注に変更.
  • HIV感染小児でART後に免疫再構築症候群(immune reconstitution syndrome)が多く発症する(J Allergy Clin Immunol 113: 742, 2004).発症72時間以内に治療を始める必要がある.
  • 過去にアシクロビル治療を受けたHIV陽性患者では,アシクロビル耐性水痘・帯状疱疹ウイルスが出現する.5人中4人の患者でホスカルネット(40mg/kg静注8時間ごと・14~26日)が有効だったが,2人が7日目,14日目に再発(Ann Intern Med 115: 19, 1991).
  • TNFα阻害薬治療を受けている関節リウマチ患者で帯状疱疹のリスクが高い可能性がある.帯状疱疹はより重度だが,ヘルペス後神経痛は少ない(JAMA 301: 737, 2009).(訳注:論文では,関節リウマチ患者でのTNFα阻害薬による帯状疱疹のリスク上昇は,有意ではないがさらに研究が必要とされている.95%CIは0.97-2.74)
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2026/04/27