日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

感染性心内膜炎-人工弁,経験的治療  (2025/11/04 更新)


臨床状況

  • 人工弁装着患者で心内膜炎の所見/症状がある場合の,培養結果が出るまでの間の経験的治療.
  • 初期症状はとらえにくく,原因不明の心不全とされ,発熱も顕著でないことがある.

病原体

  • 早期(手術後<2カ月):
  • S. aureus
  • S. epidermidis
  • まれに:腸内細菌科,ジフテロイド,真菌
  • 晩期(手術後>2カ月)
  • S. aureus
  • S. epidermidis
  • Viridans streptococci
  • Enterococcus

第一選択

  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)CFPM 2g静注8時間ごと(コメント参照)

第二選択

  • VCM同上+GM 3mg/kg静注1日1回

抗微生物薬適正使用

  • 微生物学的診断が確定したら,病原体を標的とした特異的治療を行わなければならない

コメント

  • 心内膜炎が疑われる場合の経験的治療には,エビデンスに基づいた推奨処方はない.上記に第一選択とした処方は,最も可能性の高い病原菌であるS. aureus および S. epidermidis(Methicillin耐性株を含む),腸内細菌科 (早期発症感染で考慮),Streptococcus属,Enterococcus属,HACEKを十分カバーする初期治療である.GMは,特にVCMなどの腎毒性の可能性がある別の薬剤を併用した場合には,短期間・低用量でも毒性があるため,推奨薬剤としていない.RFPはStaphylococcusによる人工弁心内膜炎に推奨されているが,菌量が多いために耐性が出現する可能性を最小限にするために,効果的な抗菌薬の3~5日後に投与する必要があり,経験的治療の薬剤とはしていない.
  • 特にS. aureusが原因菌であり,心不全が明らかで,糖尿病や腎不全があり,あるいは弁輪部膿瘍の危険がある場合には,早期の外科コンサルテーションが推奨される(JAMA 297: 1354, 2007Clin Infect Dis 44: 364, 2007).
  • 早期の弁手術は,S. aureusの人工弁心内膜炎における1年生存率改善と関連しなかった(Clin Infect Dis 60: 741, 2015).
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2025/11/04