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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
サイトメガロウイルス-神経疾患
(
2020/11/24 更新
)
CMV神経疾患(脳炎,脊髄炎,多発神経根症)
臨床状況
サイトメガロウイルス(CMV)関連の神経疾患はまれだが,下記のような高度に免疫抑制された患者に起こることがある
進行したHIV/AIDS患者(CD4数<50/mm
3
)
造血幹細胞移植(HCT)レシピエント
臓器移植および固形臓器移植(SOT)レシピエント
CMV関連神経疾患,特に脳炎は抗ウイルス治療を行っても死亡率が高い(
Clin Infect Dis 27: 345, 1998
;
Bone Marrow Transplant 45: 979, 2010
).
中枢神経系へのCMV感染で起こる疾患としては以下のものがある:
脳炎(精神状態の変化および神経学的巣症状)
脊髄炎(下肢の脱力および反射亢進)
多発性神経根症(下肢の脱力,感覚低下,反射低下,男性での精巣挙筋反射消失)
診断
対応するMRI所見と,多くの場合髄液PCRで高レベルのCMV DNAが検出されることにより診断.
病原体
サイトメガロウイルス(CMV)
第一選択
ガンシクロビル
5mg/kg静注12時間ごと
第二選択
バルガンシクロビル
900mg経口12時間ごと
ホスカルネット
90mg/kg静注12時間ごと
Cidofovir
5mg/kg静注週1回
コメント
治療期間は個々の患者で異なるが,長期になることが多い.髄液と血清の両方でCMV DNAが検出されなくなり,臨床所見が消失するまで治療を続けること.この基準が達成されたら,バルガンシクロビル900mg経口24時間ごとによる二次予防(維持療法)に移行し,一定の免疫回復があるまで(HCTレシピエント),または6カ月間CD4数>100/mm
3
が持続するまで(HIVの場合)続ける.
IVIGまたはCMV高力価免疫グロブリンの追加は有用性が不明なため(
AIDS 14: 517, 2000
;
Bone Marrow Transplant 45: 979, 2010
),一部の症例ではガンシクロビルとホスカルネットの併用治療が行われてきた(
J Neurological Sci, 2018
).
CMV脳炎治療中にコンパートメント内隔離によるガンシクロビル耐性CMVが出現したとの報告がある(
Diagn Microbiol Infect Dis 74: 307, 2012
).
免疫再構築症候群(IRIS)が,CMV神経疾患治療中に抗レトロウイルス治療を開始した患者で報告されている(
HIV Med 1: 107, 2000
).
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2020/11/24