日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

細菌性膣症  (2025/12/02 更新)
細菌性膣症の治療


臨床状況

  • 腟炎および子宮頸管炎を引き起こす(Amsel基準 以下4つのうち3つに該当,Nubent基準 膣グラム染色)
  • 悪臭のある薄い乳白色の多量の膣分泌物
  • pH>4.5
  • Whiff test(膣分泌物に10%KOH 溶液を添加すると,魚臭[fishy odour]を発する)
  • クル-セル (clue cell) (細菌が付着した上皮細胞)
  • 性行為で感染する可能性はあるが,公式には性感染症とされていない.最近のデータでは男性パートナーの治療により再発率が低下する(12週で35%対63%):N Engl J Med 392: 947, 2025
  • 保護作用のある乳酸桿菌の喪失と病因との関連はあるものの,プロバイオティクスやその他のマイクロバイオームを標的とした治療法の役割はまだ評価中である.

診断/病原体

診断
  • 核酸増幅検査(NAAT)
病原体
  • 原因菌は不明だが以下に関連
  • Gardnerella vaginalis
  • Mobiluncus
  • Mycoplasma hominis
  • Prevotella
  • Atopobium vaginae

第一選択

  • MNZ 0.5g経口1日2回・7日(2g経口1回投与を用いないこと:地域によって400mg投与となることもある)
  • MNZ 膣ゲル†(膣内塗布器1個)1日1回・5日
  • 膣内塗布器1個は5gのゲルを含み,MNZ 37.5mgに相当する
  • Lactobacillus:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験において,腟内プロバイオティクスLactin-V(Lactobacillus crispatus)は再発を抑制し,12週での再発率はプラセボ群で45%,Lactin-V群で30%だった(P=0.01).試験では,Lactin-VはMNZ処方の終了時に開始された.用法は腟内塗布1日1回を4日,その後週2回を10週.文献:N Engl J Med 382: 1906, 2020
  • 2%CLDM 膣クリーム†5g就寝前膣内投与・7日
  • 妊娠時の注意
  • 早産と関連するため,妊婦で症候性の場合は全員治療すること.早産歴がなければ無症候の患者をスクリーニングする必要はない
  • 男性パートナーの治療に関するランダム化臨床試験:経口および局所,400mg1日2回+2%CLDMクリームを陰茎表面に7日:N Engl J Med 392: 947, 2025

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • CLDM 300mg経口1日2回・7日
  • CLDM 膣坐剤†100mg就寝前膣内投与・3日
  • Secnidazole 経口顆粒:2g包の顆粒を1回,ヨーグルト,りんごソース,プリンなどとともに30分以内に服用
  • 治療を受けた患者の臨床反応はSecnidazole 68%,プラセボ18%だった
  • 再発性・難治性細菌性膣症では以下を考慮する
  • MNZ 0.5g経口1日2回・7日,次いで
  • ホウ酸ゼラチンカプセル†600mg就寝前膣内投与・21日,次いで
  • MNZ 膣ゲル†1塗布器,週2回・16週
  • パートナーが未治療なら,パートナーの治療を考慮する.

(†:日本にない剤形)

コメント

  • MNZおよびチニダゾールはアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを誘導せず,アルコール摂取に伴うジスルフィラム様作用を支持するデータは強力なものではない:Antimicrob Agents Chemother 64: e02167-19, 2020
  • 2021CDC性感染症ガイドラインは現在では,Trichomonasまたは細菌性膣症治療でMNZを服薬した場合のアルコール摂取禁止を推奨していない:Clin Infect Dis 74: S152, 2022
  • MNZ徐放錠†750mg経口24時間ごと・7日が使用できるが,公表されたデータはない
  • 妊婦
  • 米国予防医学専門委員会は,妊婦では細菌性膣症のスクリーニングをしないよう推奨している(JAMA 323: 1286, 2020

(†:日本にない剤形)

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2025/12/01