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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
サイトメガロウイルス-先天性感染
(
2024/05/28 更新
)
臨床状況
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染
広くみられる先天性感染症-感覚神経性難聴の原因としてもっとも多い.
新生児の平均0.6%が感染している.感染率は地域によって異なる.米国では約4万人/年.
感染乳児の約90%は,出生時は無症状.
尿または唾液のPCR陽性の小児では,以下を評価すること
在胎期間および頭囲の評価
CNS画像検査.MRIの方が超音波より感度がよい.
眼科医による眼検査
聴覚スクリーニング検査,異常なら確認のための検査
血算および肝機能検査
有症の乳児での臨床症状はさまざま
点状出血
黄疸
肝腫大
小頭症
感覚神経性難聴
傾眠/低血圧
哺乳力不足
脈絡網膜炎
けいれん
頭蓋内石灰化
溶血性貧血,好中球減少症
肺炎
まれだが,心内膜炎,心筋炎,心筋症
難聴は無症候性乳児でも10~15%に起こることがあるため,新生児聴覚スクリーニングを受けなかった乳児は,確認のための聴性脳幹反応検査(ARB)とCMV検査を受ける必要がある.
診断/病原体
診断
診断はPCR,または尿や唾液の培養による.授乳により唾液培養が偽陽性になることがある.
病原体
サイトメガロウイルス(CMV)
第一選択
輸血,輸液および栄養補給,酸素吸入および人工呼吸,けいれんのコントロールなど必要な支持療法を行う.
有症性の先天性CMV感染乳児に対して
バルガンシクロビル
16mg/kg/回経口12時間ごと・6カ月(コメント参照).乳児の成長に伴い,体重に応じて用量調整
第二選択
重症で経口薬服用ができない乳児:
ガンシクロビル
6mg/kg静注12時間ごと,血算を測定.
耐性が生じることがあるが,まれである.代替薬は
ホスカルネット
コメント
ランダム化臨床試験の結果によれば(
N Engl J Med 372: 933, 2015
),6カ月の抗ウイルス治療により,有症性の先天性CMV感染乳児における聴力と神経発達はわずかに改善した.
治療開始前に,脳画像検査,聴力測定,肝機能検査,血算,腎機能検査を行う必要がある.
血清CMVウイルス量を治療前,2~3カ月,6カ月に測定することが多いが,その意義は不明.有症性で生命の危険がある場合は,治療反応を確認するために出生後1週間ごとに検査を行う
難聴だけがみつかった無症候性小児の評価は行われていない(上記研究では,1例が対象となっている).リスクおよび有用性が不明であることについて家族と話し合ったうえで,上記のようなバルガンシクロビルによる治療を検討する.
ヨーロッパのコンセンサスガイダンスは孤発性の感音難聴(SNHL)の治療を推奨しているが,2024年現在も非常にわずかなデータしかない(
Lancet Reg Health Eur 40: 100892, 2024
).
神経発達と聴力については長期の経過観察が重要.
ガンシクロビル静注治療では,好中球減少症,血小板減少症および静注ライン合併症がみられる.
バルガンシクロビルではガンシクロビルほど一般的でないが,治療開始時は1週間ごと,その後は1カ月ごとに血算を測定すること.
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2024/05/27