日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

腸管寄生条虫  (2022/2/22 更新)


臨床状況

  • 無症候性または軽症の非特異的な消化器症状.
  • 有症性のTaenia感染では通常,片節が便と一緒に排泄される.
  • 裂頭条虫症ではビタミンB12吸収不全が起こる.
  • ヒトに感染するDibothriocephalus属は,Taenia属のような吸口のかわりに吸溝(溝)のある頭節をもつ.
  • 脳(神経)嚢中症T. solium幼虫感染)も参照.他のヒトTaenia種では幼虫による疾患はない.

病原体

  • Taenia saginata(無鉤条虫)(ウシ)
  • Taenia solium (有鉤条虫)(ブタ)
  • Taenia suihominis(アジア条虫,Taenia asiaticaともよばれる)(ブタ)(韓国,中国,台湾,インドネシア,タイ)
  • Dibothriocephalus latum(広節裂頭条虫,Diphyllobothrium latum)(魚)(広く分布)
  • Adenocephelus pacificusDiphyllebothrium pacificum)(南米太平洋側)
  • Dibothriocephalus nihonkaiense(日本海裂頭条虫)(魚)(東アジア)
  • その他のDibothriocephalus属(裂頭条虫属,Diphyllobothrium属)(魚)
  • Dipylidium caninum(瓜実条虫)(イヌ)
  • Hymenolepis diminuta(縮小条虫)(ラット)
  • Hymenolepis nana(小形条虫)(ヒト)

第一選択

  • 魚,イヌ,ウシ,ブタ条虫のヒトへの感染:プラジカンテル 5~10mg/kg経口1回(小児,成人同用量)
  • ラット,ヒト条虫(H. hana):プラジカンテル 25mg/kg経口1回(小児,成人同用量)10日以内に繰り返す.
  • T. solium治療後に,片節からの卵を摂取して嚢虫症が起こることがあるため,衛生管理に注意すること.
  • 治療後は3日間の便をすべて採取し,条虫の片節を探索して種を同定する.治癒の指標として頭節も探索する.残存した頭節から条虫が再生することがある.治療後1カ月および3カ月で便の再検査を行う.

第二選択

  • 魚,ウシ,ブタ,イヌ条虫:Niclosamide 成人には2g経口1回,小児には50mg/kg経口1回
  • ヒト(H. hana),ラット条虫:
  • 小児(体重別):
  • 体重11~34 kg:Niclosamide 1g1回・1日目,その後500mg/日経口・6日
  • >34 kg:Niclosamide 1.5g1回・1日目,その後1g/日経口・6日
  • 小児(年齢別):

コメント

  • WHOは妊娠のいずれの段階においてもプラジカンテルの使用を推奨している.FDAの妊娠危険区分はB.
  • アルベンダゾール400mg1日1回は,T. soliumまたはT.saginataについては非常に少数例のデータしかないため,腸条虫症に対する良い選択肢ではない.
  • 腸管T. soliumに脳(神経)嚢虫症を合併している場合,治療中にけいれんや頭蓋内圧上昇が起こることがある.このため,アルベンダゾールの使用は避ける.
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2022/02/17