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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
アライグマ回虫(
Baylisascaris procyonis
)
(
2025/10/21 更新
)
臨床状況
好酸球性髄膜脳炎,一般に劇症で致死的.主に乳児または幼児.
症状:脱力,協調運動不全,運動失調,過敏性,けいれん,精神状態の変化,昏迷,および/または昏睡
神経学的自他覚所見が現れた場合には,一般に重大な病変がすでに存在している.
斑状発疹,腹痛,肝肥大,肺臓炎を伴うこともある
ヒトの脊髄,脳,眼球に侵入する内臓幼虫移行症.不可逆的な神経障害,失明を引き起こし,死に至る場合もある.
トキソカラ症とは異なり,幼虫はヒト体内で死なずに成長し続け,組織から組織へと移動する.
高リスク地域では人口の7%に無症候性感染がみられる(
Emerg Infect Dis 23: 1397, 2017
).米国では主に北部の州および西海岸.
回復症例が
Pediatrics 129: e806, 2012
にまとめられている.
2例の回復例はアルベンダゾール+ステロイドの治療を受けている:網膜での幼虫の画像(
MMWR 74: 444, 2025
).
アライグマ(まれにスカンク,イヌまたはキンカジュー)の糞便中の卵の摂取により起こる.
アライグマの排泄場所への高リスク曝露,関与する動物の排泄物での
Baylisacaris
の卵の存在,アライグマ感染率が高いことで知られる地域でアライグマの排泄物への経口曝露などが最初に疑われた時点で早期治療を行う。
診断/病原体
診断
米国では,血清学的診断は普及していない.
血清または脳脊髄液中のリコンビナント(rBpRAG-1)に対する抗体を検出するイムノブロット.
専門医による眼検査により診断されることがある.
病原体
Baylisascaris procyonis
第一選択
曝露後ただちに
アルベンダゾール
を使用する. 400mg経口1日2回・最低3~4週.
小児(年齢>2歳):
アルベンダゾール
25~50mg/kg/日経口.
検眼鏡で眼球中の幼虫を確認した場合はレーザー光凝固を行う.
コルチコステロイドの追加がしばしば行われる:正式な研究はない
第二選択
なし
治療期間
上記処方参照.
コメント
アルベンダゾールは抗寄生虫薬の中では最も脳脊髄液移行性が最良だが,イベルメクチンは移行性が悪く使用しないほうがよい.
症状が現れる前に幼虫による障害が生じている.
放射線によるCNSの所見は,臨床的な症状発現に遅れをとる.
臨床症状が現れたらステロイドを試みてもよいが(
Clin Infect Dis 39: 1484, 2004
),通常は眼症状に対して用いる.
一般的な総説:
Clin Microbiol Rev 29: 375, 2016
.
好酸球性髄膜炎の他の原因として,
Angiostrongylus cantonensis(広東住血線虫)
,
Gnathostoma spinigerum(有棘顎口虫)
がある.
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2025/10/20