日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

アライグマ回虫(Baylisascaris procyonis  (2024/11/26 更新)


臨床状況

  • 好酸球性髄膜脳炎,一般に劇症で致死的.主に乳児または幼児.
  • 症状:脱力,協調運動不全,運動失調,過敏性,けいれん,精神状態の変化,低迷,および/または昏睡
  • 神経学的自他覚所見が現れた場合には,一般に重大な病変がすでに存在している.
  • 斑状発疹,腹痛,肝肥大,肺臓炎を伴うこともある
  • ヒトの脊髄,脳,眼球に侵入する内臓幼虫移行症.不可逆的な神経障害,失明を引き起こし,死に至る場合もある.
  • トキソカラ症とは異なり,幼虫はヒト体内で死なずに成長し続け,組織から組織へと移動する.
  • 高リスク地域では人口の7%に無症候性感染がみられる(Emerg Infect Dis 23: 1397, 2017).米国では主に北部の州および西海岸.
  • アライグマ(まれにスカンク,イヌまたはキンカジュー)の糞便中の卵の摂取により起こる.
  • ただちに治療が適応となるのは,アライグマ糞便の経口曝露が明らかな場合,病原動物(複数の場合も)の糞便でのBaylisascarisの卵が認められた場合,およびアライグマ感染率が高いことが知られている地域でのアライグマ糞便の経口曝露の場合などである.

病原体/診断

病原体
  • Baylisascaris procyonis
診断
  • 米国では,CDC以外では血清学的診断ができない.
  • 血清または髄液中のリコンビナント(rBpRAG-1)に対する抗体を検出するイムノブロット.
  • ヒトでの無症候性感染の広がりは不明
  • 専門医による眼検査により診断されることがある.

第一選択

  • 検眼鏡で眼球中の幼虫を確認した場合はレーザー光凝固を行う.

第二選択

  • なし

コメント

  • アルベンダゾールは抗寄生虫薬の中では最も髄液移行性が良いが,イベルメクチンは移行性が悪く使用しないほうがよい.
  • 症状が現れる前に幼虫による障害が生じているため,アライグマの糞便への高リスクな曝露,病原動物(複数の場合も)の糞便でのBaylisascarisの卵が認められた,アライグマ感染率が高いことが知られている地域でのアライグマ糞便の経口曝露など,疑わしい場合にはただちに治療を行うことが重要である.
  • 放射線によるCNSの所見は,臨床的な症状発現に遅れをとる.
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2024/11/25