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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
有棘顎口虫
(
2024/02/06 更新
)
皮膚幼虫移行症
臨床状況
感染した淡水魚を調理不十分または生で食すことで感染するが,感染した淡水ウナギ,カエル,爬虫類などを調理不十分または生で食すことでも感染する.
米国やヨーロッパのスシは通常塩水魚が使われているため,東南アジアでの感染がもっとも多いが,特に南アメリカやアフリカでも報告されつつある.
皮膚の幼虫移行症で,じんま疹を伴い,多くは皮膚出血性壊死を伴うがみられないこともある.
髄液中の好酸球増加を伴う髄膜炎/髄膜脳炎.
幼虫が血管に侵入した場合脳出血を起こす.
神経症状のある患者は注意深く経過を観察し,早急に介入の計画を整えなければならない.
他の組織へ移行した場合(内臓幼虫移行症)は,咳,血尿,眼球病変を引き起こすことがある.
好酸性髄膜炎は
Angiostrongylus cantonensis
や
Baylisascaris procyonis
によっても起こり得る.
診断/病原体
診断
血清検査はアジアとヨーロッパの専門施設で行われる.
CTスキャンで大きな脳内出血を確認できるが,硬膜下出血やくも膜下出血,幼虫の奇跡は感受性強調MRIで最もよく確認できる.
病原体
Gnathostoma spinigerum
(皮膚±中枢神経疾患)
アジアにおける他の
Gnathostoma
属,
G. hispidum
を含む(皮膚疾患のみ)
ラテンアメリカにおける
G. binucleatum
(皮膚疾患のみ)
第一選択
皮膚疾患
アルベンダゾール
400mg経口24時間ごとまたは1日2回・21日
イベルメクチン
200μg/kg/日経口・2日
中枢神経疾患:対症療法を行い,脳出血に注意する.
第二選択
中枢神経疾患:ステロイドを用いた症例が報告されている.症例報告においてアルベンダゾールまたはイベルメクチン治療の有効性と危険性が示されている(
Emerg Infect Dis 17: 1174, 2011
).
治療に関する包括的総説:
Waterbone Parasitol 33: e00207, 2023
.
小児
WHOは,1歳以上の小児でのアルベンダゾール使用を承認しており,このことはCDCの情報にも取り入れられている.
年齢>2歳小児についてのCDC推奨:400mg/日経口;1~2歳 100mg/日経口
妊婦
WHOは,妊娠第2,3期でのアルベンダゾール使用を承認している.FDA妊娠リスク区分はC.
大規模システマティック解析では,妊娠第1期にアルベンダゾールを使用しても害はなかった(
Intl J Parasitol 49: 541, 2019
).
コメント
どの疾患に関しても臨床試験または重要な症例検討はまったく行われていない.
1つの薬剤に反応しない皮膚疾患の場合,他の薬剤が有効なことがある.
時間が経ってから再発することがあるため(26カ月まで),少なくとも1年は経過を観察する.再治療は同じ薬剤でも他の薬剤でも可.
アルベンダゾールは幼虫の体外移行を促進し,切除生検を容易にする.
イベルメクチンは,一次的に皮膚症状を増加させることがある.
アルベンダゾール200mg錠はExpert Compounding Pharmacyから入手可(入手困難な抗寄生虫薬の供給元参照).
アルベンダゾールのジェネリック(Albenza)はAmnealから販売されているが,薬価が非常に高く,一般の薬局からは入手しにくい.
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2024/02/06