日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

曝露後の管理-B型肝炎ウイルス  (2023/2/21 更新)


臨床状況

  • B型肝炎ウイルスの曝露:職業上,または非職業上
  • 管理の一般的手順
  • 傷をきれいに洗う/ただちに粘膜面を水で洗い流す(腐食性の物質を用いたり,傷を絞り出すのは勧められない.消毒薬の使用についてのデータはない).
  • 以下を実施して危険性を評価する:
  • (1)曝露の詳細を明らかにする.
  • (2)病歴や危険性のある行為,またB型/C型肝炎,HIVの検査から,曝露源を特定・評価する.
  • (3)B型/C型肝炎,HIVに曝露した人の曝露後の状態を検査・評価する.

予防

  • 予防の手順
曝露を受けた人
曝露源のHBs抗原+
曝露源のHBs抗原-
曝露源の現状が不明または検査材料が入手できない
ワクチン未接種
HBIg 0.06mL/kg筋注.HBワクチンも接種する
HBワクチンを接種
医療従事者の職業的曝露:HBs抗原陽性の場合と同様に治療(MMWR 62(RR-10): 1, 2013,Table 2)

非職業的曝露:HBワクチンを開始(MMWR 55(RR16): 1, 2006,Appendix B)
ワクチン接種済
(抗体価は不明)
曝露を受けた人の抗HBs抗体を測定し,
・抗体価が≧10mIU/mLなら治療不要
・<10mIU/mLならHBIg+HBワクチン1回接種(下記コメントを参照)
治療不要
曝露を受けた人の抗HBs抗体を測定し,
・抗体価が≧10mIU/mLなら治療不要.
・<10mIU/mLならHBワクチン1回接種

  • ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露後予防に関するワクチンの特徴については,B型肝炎ワクチンを参照.

コメント

  • 以前にHBVに感染した人は,再感染に免疫があり,曝露後予防は必要ない.
  • ワクチンの反応をフォローアップまたはワクチン接種を完了させる.
  • 明らかにワクチンに反応した症例(抗体価≧10mIU/mL)では,血清中抗体のモニターや追加抗原接種は現在では推奨されない.
    最初のHBワクチンに反応しない症例(<10mIU/mL)で,HBs抗原陽性あるいは高リスクと考えられる曝露源からの曝露の場合は,HBIg治療を行いワクチンを再開するか,HBIgを1カ月あけて2度投与する.
    2回目のワクチンにも反応がなければ,新たな曝露に対しては,1カ月おきHBIg2回投与が望ましいとされている.
  • 高リスク曝露源とわかっている場合は,曝露源がHBs抗原陽性時と同様に治療.
  • 非職業的曝露
  • 職業上の曝露に関するガイドラインは非職業上の曝露にも適用できる.
  • ワクチン接種者(すなわちワクチン接種の記録書類がある)だがワクチン接種後の体内抗体価の記録がない人がHBs抗原陽性の曝露源に曝露した場合は,体内抗体価のチェックをせずB型肝炎ワクチンを追加接種してもよい.
  • ワクチン接種者がHBs抗原不明の曝露源より曝露した場合は,治療は必要ない.
  • 血液や体液への非職業的曝露で個々に曝露後予防が推奨される.曝露には皮膚(たとえば咬傷,針刺し,または粘膜へのHBs抗原陽性血液または無菌体液の曝露),HBs抗原陽性者との性的関係または注射針の共用,HBs抗原陽性の加害者による強姦または性的虐待などが含まれる.
    非職業上のHIV曝露後の予防も参照.
  • ワクチン予防が適応となる場合は,理想的には曝露後24時間以内に開始する.注射による曝露後7日,性的曝露後14日以降に実施しても曝露後予防の効果は期待できない.
  • いずれにせよB型肝炎ワクチンシリーズは完遂させる.
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2023/02/16