日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

エボラウイルス/マールブルグウイルス  (2025/07/01 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • 出血熱ウイルス:エボラおよびマールブルグ.アフリカで周期的に流行が起こる.
  • 記録上最大規模のエボラウイルス病(EVD)の症例多発が,2014~2015年西アフリカで1万例以上起こった.症例には症例多発地から帰国後にEVDを発症した米国およびスペイン,英国その他のヨーロッパでの症例も含まれる.
  • ウガンダおよびスーダンで症例多発(2025年2月)
  • タンザニアのカゲラ州でマールブルグウイルス感染の症例多発(2025年1月~2月)
  • エボラウイルス病(EVD)の治療の中心は,早期発見,確実な隔離,最適な支持療法である.免疫治療が有効(下記参照)
  • 回復した患者の回復期血清の新規感染患者への使用が,新たにWHOによって承認された(BMJ 349: g5539, 2014).
  • 2つの新しいモノクローナル抗体治療:Inmazeb(REGN-EB3:Regeneron)は3種類のヒトモノクローナル抗体のカクテル.Ebanga(Ansuvimab-zykl:以前はmb114と呼ばれていた.Ridgeback Biotherapeutics)は,PCRで確診されたエボラウイルス病治療に米国FDAにより承認された.
  • 臨床家,研究所員と診断のための現在のガイダンスとして,CDCガイダンス参照.米国の専門的な医療センター:エモリー大学,ネブラスカ大学,NIH臨床センター.
  • リスク因子
  • EVDの治療にあたる医療従事者(HCW),患者と密接な接触のある家族や友人は,患者の血液・体液に触れる可能性があるため,感染リスクは最も高い.
  • 汚染された保護装備の着脱は,HCWにとって高リスク因子となる可能性がある.
  • 感染した野生動物との接触によってもEVDの危険がある:野生動物の肉(食用に狩猟されたもの)および感染したコウモリ(特にフルーツバット)との接触.
  • 発症と進行
  • 胃腸症状:重度の水性下痢,悪心,嘔吐,腹痛.
  • その他:胸痛,息切れ,頭痛または混迷が起こることがある.患者は結膜充血を呈することが多い.しゃっくりの報告がある.けいれんが起こることもあり,脳浮腫の報告がある.出血はつねにみられるわけではないが,進行するにしたがって,点状出血,斑状出血/あざ,あるいは静脈穿刺部位からの血液滲出,粘膜出血がみられることがある.明白な出血はまれである.妊婦は自然流産を起こすことがある.
  • 通常重症例は感染初期から重篤な症状を呈し,典型的には6~16日で多臓器不全や敗血症性ショックのために死亡する.
  • 非重症例では数日の発熱後,典型的には6~11日以内に改善する.回復する場合も回復期は長期にわたることがある.
  • 曝露後,典型的には8~10日(2~21日の範囲)後に突然発症する.症状は発熱,悪寒,筋肉痛,倦怠感など非特異的.発熱,食欲不振,脱力感/衰弱は自他覚症状として最も多い.びまん性で紅斑性・丘疹状の発疹を呈することもあり(5~7日)(通常,顔,首,胴体および腕に生じる),剥離を起こすこともある.(N Engl J Med 372: 40, 2015にまとめられている)
  • EVDは他のより一般的な感染症と混同されることがある:たとえば,マラリア,腸チフス,髄膜炎菌の菌血症,他の細菌感染(たとえば肺炎).
  • 約5日後に,初期の非特異的症状と異なる症状が発症する.
診断
  • 米国のCDCで検査が行われている.検体採取と輸送については暫定的ガイダンスを参照(Interim Guidance-2018年改訂).
  • 事前相談なしの検体は受け付けられない.疑わしい症例があったら,地域の保健センターに相談すること.
  • 相談の電話はEOCへ:770-488-7100
  • Centers for Disease Control and Prevention
    ATTN STAT LAB: VSPB, UNIT #70
    1600 Clifton Road NE
    Atlanta, GA 30333
    Phone 770-488-7100
  • Emailでの問い合わせは,ECOCEVENT246@CDC.GOV.
  • 症状発現数日以内に,一般的にはELIZAによる抗原検出,IgM抗体ELIZA,核酸増幅法(NAAT)またはウイルス培養により診断が行われる.
感染の時間経過
使用可能な診断検査
症状発現後数日以内
抗原検出酵素免疫測定法(ELISA)
IgM ELISA
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
ウイルス分離
後期あるいは回復後
IgMおよびIgG抗体
死亡例で後ろ向きに
免疫組織化学検査
PCR
ウイルス分離

病原体

  • エボラウイルス(フィロウイルス)
  • マールブルグウイルス

第一選択

  • モノクローナル抗体
  • Inmazeb 3種のモノクローナル抗体をそれぞれ50mg/kgずつ(合計150mg/kg)静注1回投与
  • REGN-EB3(Regeneron)3種の完全ヒトモノクローナル抗体:Atoltivimab,Maftivimab,Odesivimab

第二選択

  • 感染患者の回復期血清を新規感染患者治療に用いることがWHOにより承認された(BMJ 349: g5539, 2014).

予防

  • ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防および曝露後予防に関するワクチンの特徴については,エボラウイルス病ワクチンを参照.
  • 市販されていない.

コメント

  • エボラウイルス病の治療:
  • Ebanga:単独モノクローナル抗体(Ansubimab-zyk)でザイールエボラウイルスに活性がある.Inmazeb(下記)と有効性は同一.副作用はほとんどがエボラウイルス病の症状と同様で識別しにくい.治療を受けた患者の~1%に,注入中または注入後の過敏反応が認められた.
  • Inmazeb:3種のモノクローナル抗体(Atoltivimab,Maftivimab,Odesivimab)のカクテル.上記のように有効性はEbangaと同一で,副作用も同じ:~1%に起こる注入中または注入後の過敏反応に注意
  • PALM(together save lives)試験はエボラウイルス病患者治療のための試験薬4剤(ZMapp,レムデシビル,mAb114、REGN-EB3Z)のランダム化対照比較試験である(N Engl J Med 381: 2293, 2019).
  • PALMにおいて,Inmazeb(REGN-EB3Z:3種ヒトモノクローナル抗体のカクテル)およびAnsuvimab-zykl(Ebanga,以前はモノクローナル抗体114と呼ばれていた)の有効性が示され,どちらもタバコの葉に表現された3種ネズミモノクローナル抗体であるZMappより優れていた.
  • BCX-4430(Biocryst)はNIHにより評価中である:およびGS-5734(Gilead)は動物モデルで活性があり,Brincidofovirは効果がないことが明らかになった.
  • Brincidofovirは経口で生物学的活性があり,エボラウイルスに対する活性をもつが(同様にCMV,アデノウイルス,天然痘にも活性がある),症例報告では有効ではなかった.
  • ZMapp(Mapp Biopharmaceutical):
  • ZMappは,エボラウイルスの小片を曝露させたマウスから得られた,3種類のマウスモノクローナル抗体による製剤である.
  • 西アフリカでのエボラ流行では,2014年中に西アフリカの数名の患者でZMappが奏効した.EbangaおよびINmazebよりは劣っている(上記).
  • 疫学
  • ガボンの研究では,無作為に選択された220村の健常ボランティア4349人中,血清陽性率は15%であった.エボラに類似した疾病は認められなかった.小児の血清陽性率は15歳までは上昇し,それ以降は水平に推移する.血清陽性はフルーツバット(オオコウモリ)の所在地と関連する(PLoS One 5: e9126, 2010).
  • マールブルグの大流行が1998~2000年にコンゴで,2004~2005年にアンゴラで起こった(N Engl J Med 355: 866, 2006).
  • ゴリラやチンパンジーも,死んだ動物の屍体に接触すると感染することがある(Science 303: 387, 2004).
  • アフリカのフルーツバットであるエジプトルーセットオオコウモリに,マールブルグが存在することが報告されている(PLoS One 2: e764, 2007).
  • octopeptide(ナノ粒子)が,マールブルクの治療として研究されている(OpenNano 8: 100094, 2022
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2025/06/30