日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

エボラウイルス病,ワクチン  (2026/02/24 更新)
エボラウイルス病(EVD),ザイールエボラウイルス,スーダンエボラウイルス


ワクチン接種の適応

標準コース(ルーチン)
  • ザイールエボラウイルス種の流行に積極的に対応する人
  • 政府あるいは州指定のエボラウイルス病治療施設の医療従事者,搬送要員を含む.
  • リスクのある研究施設職員
  • びまんしている集団では「リング接種」が望ましい戦略である
海外渡航
  • 上記参照
用量とスケジュール
商品名(製造元)1
Ervebo(メルク)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
ザイールエボラワクチン,水疱性口内炎ウイルス(VSV)を元にザイールエボラウイルスエンベロープ糖タンパクを挿入(rVSVΔG-ZEBOV-GP,Kikwit 1995年株)した,複製能のある組み替え生ウイルスワクチン
年齢
>生後12ヵ月
用量,経路
1mL筋注(三角筋)
初回接種-標準コース
1回接種
第1回追加接種
なし.予防有効期間は不明.一部の抗体は5年持続.WHOは暫定的に,急性の曝露が持続する場合には6ヵ月での追加接種を推奨している.
反応者,国内 ETU 医療スタッフ,検査従事者を対象とした個別ベースの6ヵ月追加免疫のためのCDC 拡張アクセスINDプロトコル)
  1. 米国以外:Zabdeno(Ad26ZEBOV-GP ;ヤンセン/Bavarian Nordic)およびMvabea(MVA-BN-Filo;ヤンセン/Bavarian Nordic)

  • EMA承認,WHO事前認定
  • 現時点では市販されておらず,症例多発対応用の世界的な備蓄にも存在しない.
  • Zabdeno接種8週後にMvabea・それぞれ0.5mL筋注の,2回接種初回追加接種処方
  • Zabdenoは,リスクが続いている場合には,初回接種コース完了>6ヵ月で1回追加接種.
  • EMAは年齢1歳以上での使用を承認している.

有効性,予防効果持続期間/選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
  • Erveboはザイールエボラウイルス(EBOV)に対してのみ有効であり,スーダンエボラウイルス(または,その他のまれなEBOV株)およびマールブルグウイルスには有効でない.
  • スーダンエボラウイルスに対する臨床試験の進行状況は不明
  • 臨床的EVDに対するワクチン効果(VE)は94~100%
  • 症状発症前<2日接種では死亡率27%
  • 症状発症前3~9日接種では死亡率20%
  • 症状発症前>10日接種では死亡率18%
  • 2015年の流行時のリングワクチン接種(包囲接種):ただちにワクチン接種を受けたひとでは,ワクチン効果(VE)100%.
  • 2018~2020年コンゴでの流行時VEは感染伝播に対して97.5%.
  • ワクチン接種後3年までは強力な抗体反応がみられるが,VE持続期間についての臨床試験はない.
  • 長期の精液中への排出についてのデータはない.
  • 関連のフィロウイルス,マールブルグウイルスに対する効果についてのデータはない.
選択,互換性
  • ErveboとZbadeno/Mvabeaの比較データはない.
  • 最初に接種したものとは異なるエボラワクチンの追加接種に関するデータはない.
  • Zbadeno/Mvabeaの方がErveboより忍容性は高いようだ.

毒性

禁忌
  • 以前のワクチン接種での,またはワクチン成分(米タンパクを含む)に対するアナフィラキシー反応
  • 熱性疾患の併発
警告(定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.)
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず)
  • Ervedoには米蛋白が含まれている:ワクチン被接種者を慎重に経過観察すること,米に対するアナフィラキシー既往がある場合には使用を避ける.
  • Ervebo接種後にワクチンウイルス伝播が起こることがある:
  • ワクチンウイルスのRNAは,血液,唾液,尿,皮膚の小胞からの体液で検出されることがある.
  • ≧6週は献血はしない.
  • 2週間は注射針,カミソリ,食器,歯ブラシの共用は避け,口を開けたままのキスは避ける.
  • 2ヵ月は性交時に有効な避妊器具を用いる.
  • ≧6週は高リスク者および免疫不全者との密な接触は避けることを考慮する.
  • ワクチン被接種者の体液を家畜に曝露させる場合は,≧6週の期間をおく.
副作用
  • 注射部位の痛み(70%),腫脹(17%),発赤(12%)
  • 全身性:頭痛(37%),熱感(34%),筋肉痛(33%),疲労(19%),関節痛(18%),悪心(8%),関節炎(関節の腫脹;5%),発疹(45%),異常発汗(3%).
  • どこかの関節痛(ワクチン接種後0~42日)2.9~40%.
  • 重症関節痛約1.7%
  • 関節炎(ワクチン接種後5~56日)0~23.5%
薬物相互作用
  • 同一日に接種しないなら,生ウイルスワクチンは少なくとも4週おいてから接種すべきである.
  • EVDに対して使われた抗ウイルス薬,血液製剤,モノクローナル抗体治療のエボラ免疫反応への影響は不明.

特別な注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 妊婦または授乳についてのデータはないが,一般的に妊娠中は生ウイルスワクチンは避ける.
  • 妊娠ラットを対象とした限定的な研究では安全性シグナルは認められなかった
  • ワクチン接種のリスクとEVDのリスクの比較検討は,個々の例に応じて行わねばならない
  • 母親が急性EBOV感染症に罹患すると多くの場合胎児は生存できない.
  • WHOは,活動性のエボラウイルス病を経験した地域での妊婦および授乳中女性へのErvebo使用を,厳密な研究と例外的使用プロトコールにおいて推奨している
免疫不全/HIV
  • 免疫不全者でのデータはないが,一般的に免疫不全者では生ウイルスワクチンは避ける.
  • ワクチン接種のリスクとEVDのリスクの比較検討は,個々の例に応じて行わねばならない.
  • 年齢65歳以上または,抗レトロウイルス治療を受けて制御されているHIVの患者では用量調整は必要ない.

血清検査

  • Erveboワクチン接種を受けた人では,EBOV糖タンパク(一部の血清および分子診断検査の標的)検査が陽性になることがある.
  • ERVEBOワクチン接種後に抗エボラ糖タンパク(GP)抗体および/またはエボラGP核酸もしくは抗原の検査で陽性反応を示す場合がある.
  • ワクチンウイルス血症の期間中,GPに基づく検査の診断価値は限定的となることがある.
  • ワクチン接種を受けた人でのEVD診断検査は,糖タンパク以外の標的を含まなければならない.

コメント

  • 米国では市販されてないが,戦略的国家備蓄に備蓄されている.
  • 米国CDCのウイルス特別病原体部門から入手可能:spathvax@cdc.gov.
  • 世界的にはGAVIによる備蓄がある.
  • スーダンエボラウイルスに対する3種のワクチン候補の臨床試験が,ウガンダで2022年11月から開始されている.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
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2026/02/24