日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

吸虫-肝臓,腸管,肺寄生  (2024/12/10 更新)


臨床状況

  • 肝臓,肺,腸に寄生する吸虫による感染症.
  • すべて巻き貝を中間宿主とし,植物(クレソン),汚染された水,魚,甲殻類にあるメタセルカリアの摂取により伝播する.
  • 肝臓
  • Fasciola hepatica 感染の急性期には右上腹部痛,発熱,好酸球増多を伴う.
  • 慢性期は胆管関連の症状を伴う
  • F. hepaticaは,まれに腸壁,肺,皮下組織,そしておそらく咽頭粘膜にも感染することがある.
  • Opisthorchis felineus(ヨーロッパやアジアにも生息する)感染の急性期には,発熱,顔面浮腫,リンパ節症,関節痛,発疹,好酸球増多を伴うことがある.
  • 長期にわたるClonorchis属およびOpisthorchis属感染では,胆管炎,胆石症,膵炎,胆管癌が起こることがある.
  • 非流行国での胆管癌は肝吸虫とは無関係である.
  • Fasciola gigantiaは関連種であり,主に家畜や野生動物に感染するが,ヒトへの感染もある.

  • Paragonimus属は,まれに皮下組織,腹腔内内臓,脳に感染することがある.
  • P. skrjabiniは皮膚結節,皮下膿瘍や,torematode larva migransとして知られる皮膚爬行症を起こすことが多い.
  • Paragonimus属は肺腔内にさび色の喀痰を生み出す
  • 腸吸虫感染は通常無症状である:重症感染では下痢,腹痛,発熱,腹水貯留,全身浮腫,腸管閉塞が起こる.

診断/病原体

診断
  • 肝吸虫は急性の幼虫移行期には便検査で陰性となる.
  • 胆管ERCPで肝吸虫の成虫をみることができる
  • 肺吸虫の虫卵のための喀痰検査
  • F. hepaticaと肺吸虫は,IEAおよびイムノブロットで確認できる.
  • 米国でのClonorchis血清学検査:Kephera Diagnostics
  • 血清学検査では現在の感染か過去の感染かはわからない
病原体
  • 肝吸虫
  • Clonorchis sinensis (肝吸虫)
  • Opisthorchis viverrini (タイ肝吸虫)
  • Opisthorchis felineus(ネコ肝吸虫)
  • Fasciola hepatica (肝蛭)(ヒツジ肝臓寄生吸虫)
  • Fasciola gigantica(巨大肝蛭)
  • Metorchis conjunctus
  • 肺吸虫
  • Paragonimus属(P. westermaniP. skrjabiniP. africanusP. mexicanusP. kellicottiが含まれる).P. kellicottiは北アメリカで流行している.
  • 腸吸虫
  • Fasciola buski
  • Heterophyes heterophyes (異形吸虫)(エジプト腸吸虫)
  • Echinostoma属(棘口吸虫属)
  • Metagonimus yokogawai (横川吸虫)
  • Nanophyetus salmincola(サケ住血吸虫)(サルミンコラ住血吸虫)

第一選択

肝吸虫
  • C. sinensisO. viverriniO. felineusM. conjunctus
  • F. hepaticaおよびF. gigantica
  • Triclabendazole 10mg/kg経口・12~24時間ごとに繰り返す.治療失敗の場合は20mg/kg用いてもよい.
  • FDAは年齢≧6歳に対してのみ承認している.
  • プラジカンテルが無効な吸虫はこれらだけ.
  • 一部の患者ではERCPを通じた物理的除去が有用
肺吸虫
  • Paragonimus属:
腸吸虫
  • F. buskiH. heterophyesEchinostoma属,M. yokogawaiN. salmincola

第二選択

コメント

  • 腸吸虫には,ここにあげた以外にも多くの小さな種が存在する.
  • 偽肝蛭症(pseudofascioliasis)は,汚染された肝臓(感染していない卵を含む)を最近摂取したために糞便中にFasciolaの卵が存在する状態をいう.
  • Novartisから無料で提供される:Tel +1 888-669-6682.有効な処方せんをもつ薬局には無料で提供・配送される.Novartisは,患者氏名,生年月日,薬局の住所/電話番号を確認してくるだろう.
  • またはVictoria Pharmacy(Zurich:+41-43-344-6060)からも入手可能.
  • Paragonimus属の中枢神経系感染では,ステロイドを追加.
  • 妊婦:WHOは,医療従事者が副作用をモニターできる場合にのみ,Triclabendazoleの妊婦への使用を認めている.
  • 授乳:ヒト乳汁中に薬剤が移行することがある
  • 母親が臨床的にTriclabendazoleを必要とするか,授乳された乳児での副作用の可能性はないかを考慮する
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2024/12/09