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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
吸虫-肝臓,腸管,肺寄生
(
2023/1/10 更新
)
臨床状況
肝臓,肺,腸に寄生する吸虫による感染症.すべて巻き貝を中間宿主とし,植物,魚,甲殻類についたメタセルカリアの摂取により伝播する.
Fasciola hepatica
感染の急性期には右上腹部痛,発熱,好酸球増多を伴う.
Opisthorchis felineus
(ヨーロッパやアジアにも生息する)感染の急性期には,発熱,顔面浮腫,リンパ節症,関節痛,発疹,好酸球増多を伴うことがある.
腸吸虫感染は通常無症状である:重症感染では下痢,腹痛,発熱,腹水貯留,全身水腫,腸管閉塞が起こる.
長期にわたる
Clonorchis
属および
Opisthorchis
属感染では,胆管炎,胆石症,膵炎,胆管癌が起こることがある.非流行国での胆管癌は肝吸虫とは無関係である.
F. hepatica
は,まれに腸壁,肺,皮下組織,そしておそらく咽頭粘膜にも感染することがある.
Paragonimus
属は,まれに皮下組織,腹腔内内臓,脳に感染することがある.
P. skrjabini
は皮膚結節,皮下膿瘍や,torematode larva migransとして知られる皮膚爬行症を起こすことが多い.
Paragonimus
が疑われる場合には,卵確認のために喀痰染色を行う(肺腔内にさび色の喀痰).
診断:肝吸虫は,急性移行期には糞便検査で陰性.
F. hepatic
aおよび
Paragonimus
に対してはEIA,イムノブロット.
診断/病原体
診断
肝吸虫は急性の幼虫移行期には便検査で陰性となる.
肺吸虫の虫卵のための喀痰検査
F. hepatica
と肺吸虫は,IEAおよびイムノブロットで確認できる.
病原体
肝吸虫
Clonorchis sinensis
(肝吸虫)
Opisthorchis viverrini
(タイ肝吸虫)
Opisthorchis felineus
(ネコ肝吸虫)
Fasciola hepatica
(肝蛭)(ヒツジ肝臓寄生吸虫)
Fasciola gigantica
(巨大肝蛭)
Metorchis conjunctus
肺吸虫
Paragonimus
属(
P
.
westermani
,
P. skrjabini
,
P. africanus
,
P. mexicanus
,
P. kellicotti
が含まれる)
P. kellicotti
は北アメリカで流行している
腸吸虫
Fasciola buski
Heterophyes heterophyes
(異形吸虫)(エジプト腸吸虫)
Echinostoma
属(棘口吸虫属)
Metagonimus yokogawai
(横川吸虫)
Nanophyetus salmincola
(サケ住血吸虫)(サルミンコラ住血吸虫)
第一選択
肝吸虫
C. sinensis
,
O. viverrini
,
O. felineus
,
M. conjunctus
:
プラジカンテル
25mg/kg経口1日3回・2日(小児用量も同様)
F. hepatica
および
F. gigantica
:
Triclabendazole
10mg/kg経口・12~24時間ごとに繰り返す.治療失敗の場合は20mg/kg用いてもよい.FDAは年齢≧6歳に対してのみ承認している.プラジカンテルは無効.一部の患者ではERCPを通じた物理的除去が有用
肺吸虫
Paragonimus
属:
プラジカンテル
25mg/kg経口1日3回・2日
腸吸虫
F. buski
,
H. heterophyes
,
Echinostoma
属,
M. yokogawai
,
N. salmincola
:
プラジカンテル
25mg/kg経口1日3回・1日
第二選択
Clonorchis sinensis
:
アルベンダゾール
400mg1日2回経口・7日(小児用量も同様)
O. viverrini
:50mg/kg1回も有効
Paragonimus
属:
Triclabendazole
10mg/kg経口・12~24時間間隔をあけて2回(
Trans R Soc Trop Med Hyg 97: 451, 2003
)
コメント
腸吸虫には,ここにあげた以外にも多くの小さな種が存在する.
偽肝蛭症(pseudofascioliasis)は,汚染された肝臓(感染していない卵を含む)を最近摂取したために糞便中に
Fasciola
の卵が存在する状態をいう.
F. hepatica
感染動物におけるTriclabendazole耐性増加が懸念され(
Trends Parasitol 32: 458, 2016
),最近ではヒトでも懸念される(
Emerg Infect Dis 27: 1850, 2021
).
治療失敗例に対してTriclsbendazole反復治療を考慮する:
J Glob Antimicrob Resist 25: 264, 2021
.
F. hepatica
治療失敗例でNitazoxanideがある程度の効果を示した:
PLoS Negl Trop Dis 13: e0007779, 2019
.
Triclabendazole
は2019年初頭にFDA承認.総説:
Trans R Soc Trop Med Hyg 113: 797, 2019
.
Novartisから無料で提供される:Tel +1 888-669-6682.有効な処方せんをもつ薬局には無料で提供・配送される.Novartisは,患者氏名,生年月日,薬局の住所/電話番号を確認してくるだろう.
またはVictoria Pharmacy(Zurich:+41-43-344-6060)からも入手可能.
Triclabendazole
10mg/kgで
F. hepatica
の78%が治癒する.検便を3カ月ごとに繰り返し,陽性なら再治療する.
PLoS Negl Trop Dis 6: e1720, 2012
.
Paragonimus
属の中枢神経系感染では,ステロイドを追加.
WHOは,医療従事者が副作用をモニターできる場合にのみ,Triclabendazoleの妊婦への使用を認めている.
非対照試験で
F. hepatica
に対するNitazoxanideの有効性が示された:
PLoS Negl Trop Dis 7: e2553, 2013
.
肝吸虫症に関する総説:
Lancet 387: 800, 2016
;
Lancet Microbe 3: e616, 2022
.
臨床中心の総説:
N Engl J Med 382: 1844, 2020
.
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2023/01/10