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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
クリプトコッカス症-髄膜炎(HIV患者以外)
(
2020/11/17 更新
)
臨床状況
免疫正常者における,頭痛,視覚異常,脳神経または神経学的な巣症状を伴う慢性髄膜炎.
髄液はリンパ球増加, 高タンパク,および/または糖低下を示す.
髄液または血清の
Cryptococcus
抗原陽性,または培養陽性.
診断でのPCRの使用が増えつつある.
脳脊髄液,および
Cryptococcus
数が少ない患者では,PCRは陰性だが抗原は陽性が続くことがある.
マルチプレックスPCR髄膜炎パネルでは,
Cryptococcus
は偽陰性となる.
文献:
Diagnostic Micro and Infect Dis 84: 268, 2016
;
Medical Mycology 58: 408, 2020
;
Clin Infect Dis 68: 2094, 2018
.
病原体
Cryptococcus neoformans
Cryptococcus gattii
(まれ)
第一選択
導入療法:(
L-AMB
3~4mg/kg静注24時間ごと,または
ABLC
†5mg/kg静注24時間ごと)+
5-FC
25mg/kg経口6時間ごと
治療期間:移植患者では少なくとも2週間,免疫正常患者では少なくとも4週間.患者が無熱になり,かつ培養陰性になるまで治療.
頭蓋内圧モニターが必要.>25cmの場合,髄液を排出する必要がある.コメントを参照.
地固め療法:
FLCZ
400~800mg経口1日1回・8週
維持療法:
FLCZ
200mg経口1日1回・6~12カ月
(†:日本にない剤形)
第二選択
導入療法(処方ごとの治療期間を示す)
(
L-AMB
3~4mg/kg静注24時間ごとまたは
ABLC
†5mg/kg静注24時間ごとまたは
AMPH-B
0.7~1mg/kg静注24時間ごと)+
FLCZ
800~1200mg/日静注または経口・2週間(地固め療法は
FLCZ
800mg経口24時間ごとで行う)
L-AMB
3~4mg/kg静注24時間ごとまたは
ABLC
†5mg/kg静注24時間ごとまたは
AMPH-B
0.7~1mg/kg静注24時間ごと・4~6週
FLCZ
800~1200mg(高用量が好ましい)/日静注または経口+
5-FC
25mg/kg経口6時間ごと・4~6週
FLCZ
1200~2000mg経口1日1回・10~12週
どの処方を用いた場合でも,髄液圧>25cmであれば髄液を排出する.コメントを参照.
(†:日本にない剤形)
コメント
2010年のIDSAガイドラインは
Clin Infect Dis 50: 291, 2010
を参照.
神経学的症状のある患者は,導入治療を6週間に延長することを考える.
導入療法においてFLCZ経口処方を推奨するにはデータが不十分.
髄液排液開始圧>25cmH
2
Oなら,腰椎穿刺を繰り返し髄液を排出し圧をコントロールする.
固形臓器移植レシピエントでの治療期間は6~12カ月.固形臓器移植レシピエントの5~12%で免疫再構築症候群(IRIS)が起こるが,多くは診断後4~6週で起こる(
Clin Transplant 33: e13543, 2019
)
太平洋岸北西部での
C. gattii
髄膜炎の流行が報告されている(
Emerg Infect Dis 13: 42, 2007
).
頭蓋内圧亢進,水頭症,神経学的後遺症が高率で起こることから,重症度および予後は
C. neoformans
より悪いようだ(
Clin Infect Dis 55: 789, 2012
).
AMPH-B+5-FCによる初期治療が推奨される.
C
.
gattii
は
C. neoformans
よりもFLCZに対する感受性が低い(
Clin Microbiol Infect 14: 727, 2008
).
神経学的異常を伴うまたは菌数の多かったクリプトコッカス髄膜炎(AIDSおよび非AIDS)患者に対してAMPH-B+5-FC 14日間での導入治療を行ったところ,アウトカムが改善した(
PLoS ONE 3: e2870, 2008
).
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2020/11/17