日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

コレラ,ワクチン  (2024/01/23 更新)


ワクチン接種の適応

V. choleraeの血清型O1およびO139の毒素産生株による疾患だけを「コレラ」と考える.
  • CVD-103 HgRワクチンは01株以外のコレラには無効.
  • 流行地域住民または毒素産生コレラの既往のある人での有効性のデータはない.
標準コース(ルーチン)
  • コレラ流行の差し迫ったリスクがないかぎり,どの国においてもルーチンには推奨されない.
海外渡航
  • 一般の海外渡航者(感染リスクが非常に低い)にとっては有用性に疑問のあるワクチンで,WHOや多くの国内関連機関は,医療従事者を含む海外・難民援助者や特定の感染しやすい集団にのみ推奨している.
  • ACIPがワクチン接種を推奨しているのは,現在コレラ感染リスクが高いと指定された国の特定地域に渡航する場合や,直接の曝露リスクが大きい地域(CDC渡航先情報を参照),または前年の伝播の再発リスクが>100例だった地域へ渡航する場合のみである.
  • 感染伝播が定常状態に保たれている国(たとえば,インド,バングラデシュ,インドネシア)への渡航では,現在切迫した流行がないならば,推奨されない.
用量とスケジュール
商品名(製薬会社)
Vaxchora(Emergent Biosolution)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
経口,生,弱毒化コレラワクチン
V.cholerae CVD 103-HgR株
年齢
2~641
用量と経路
≧6歳:100mL経口,年齢2~5歳:50mL経口(抗原内容は同じで緩衝剤が少ない).小児にはステビア糖を加えてもよい
初回接種スケジュール-ルーチン
1回接種,曝露前≧10日
初回接種スケジュール-加速化
なし
第1回追加接種
リスクがあるなら,2年後
その後の追加接種
リスクが持続している2なら2年ごと
  1. 多くの臨床家が,>65歳に対して,適応外処方をしている.
  2. 接種2年後の追加接種の適応外推奨は,12~17歳の青少年で抗体の維持が認められたという堅実なデータに基づく.FDAとACIPはこのデータをまだ考慮していない.

有効性,予防効果持続期間/互換性

  • コレラワクチンの予防効果は100%ではない.細菌量が非常に多い場合には,ワクチンに対する反応が良好でも予防できないことがある(それゆえ,ワクチン接種状況にかかわらず,飲食物に対する注意・警戒が必要である).
  • Vaxchoraは,急速にVibrio殺菌作用のある抗体産生を引きおこし(コレラ予防に対する代替指標),血清型O1に対して,10日で90%,3ヵ月で80%の予防効果を示したとする,注目すべき研究結果がある.
  • 12~17歳の青少年では,ワクチン接種後少なくとも2年は抗体が維持された.
選択,互換性
  • Vaxchoraは米国では唯一のワクチン

毒性

禁忌
  • 過去の接種での,あるいはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性疾患(発熱の有無にかかわらず)または急性の消化器疾患患者.
  • 糞便への排出が,少なくとも7日は起こることがある.免疫不全者との接触は避けること.
副作用
  • 疲労,頭痛,腹痛,悪心,嘔吐,食欲不振,下痢(通常は軽症)
薬物相互作用
  • 他のワクチン(例外については下記参照)と同時に(または前後のどの時点でも)接種することが可能.
  • 生細菌ワクチンであり,生ウイルスワクチンとの相互作用はない.
  • 接種1時間前~1時間後は飲食は避ける.Vaxchoraは酸に不安定.
  • Vaxchoraは,経口腸チフスワクチンカプセル(Vivotid)と接種する場合には,Vaxchoraの添加物とVivotidカプセルの干渉を抑えるために,Vivotid第1回接種の最低8時間前に接種しなければならない
  • 全身性の抗菌薬はワクチン株に対して活性を示すことがあるので,抗菌薬との同時摂取は避けること.Vaxchoraの接種は,抗菌薬最終投与後14日まで延期しなければならない.
  • 臨床的に可能なら,抗菌薬を開始するのはVaxchora接種の10日後まで待機すること.
  • Chloroquine開始より最低10日前に接種する.アトバコン・プログアニルについては,使用制限はない.

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 胎児リスクのエビデンスはなく,ワクチンは全身的には吸収されない.適応があれば妊娠中にも接種してよい.
  • 生ワクチンが少なくとも7日間母親の糞便中へ排出されることがあり,それが膣管に移行する可能性が(理論的には)ある.
免疫不全/HIV
  • 免疫不全者での安全性は十分に研究されていないが,免疫反応は低下する可能性がある
  • CVD 103-HgRワクチンの旧製剤には重大な,あるいは全身性の副反応はなく,ただ,HIV感染者での免疫原性のわずかな低下があっただけだった.

血清検査

  • いかなる状況でも適応となることはない.

コメント

  • 米国以外の60カ国で,Dukoral(Valneva)経口,不活化コレラワクチンが,コレラワクチンとして使用されている.
  • WHO国際保健規則(IHR)では,コレラワクチン接種は,いずれの国でも入国条件とはなっていない
  • Euvichol,Euvichol-Plus,Shanchol(Shancholは現在生産中断)はWHOの承認を受け,一部のコレラ流行国で公共保健機関からの入手が可能になっている.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 参照:
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2024/01/22