日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

発疹チフス-ネズミチフス  (2022/1/18 更新)


臨床状況

  • ノミが媒介するリケッチア感染症.通常の宿主はラット.
  • 感染したラット,マウスあるいはイエネコに寄生しているノミに咬まれた患者で発熱,悪寒,筋肉痛が起こる.
  • 斑丘疹は患者の20~54%でみられる.黒い肌の患者では見分けにくい.
  • 血小板減少症が患者の48%にみられる.

病原体/診断

病原体
  • Rickettsia typhi
診断
  • セロコンバージョン:
  • 少なくとも2週間の間をおいて採取した血清でのIFAで抗体を検出
  • R. prowazekii(発疹チフス)および紅斑熱リケッチア(たとえばロッキー山紅斑熱)との間で抗体交差反応がある.
  • 急性期にはPCRで検出が可能だが,PCRは容易に利用できないことがある(公立の公衆衛生検査機関でチェック)

第一選択

  • 治療をしなくても2週間以内で回復する.致死例はまれ.
  • 経験的治療により罹病期間が5日以下に縮小する
  • DOXY 100mg経口または静注†1日2回・7日(成人または小児-コメント参照)

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 妊婦:CP 500mg経口または静注1日4回・7日(最大2g/日)

コメント

  • AZMは第二選択として許容されない.成人を対象としたプロスペクティブ・ランダム化試験で,AZM治療は2つの異なるDOXY処方に劣性であった(Clin Infect Dis 68: 738, 2019).
  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.DOXYは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.
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2022/01/13