日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

発疹チフス-シラミが媒介  (2023/10/24 更新)


臨床状況

  • シラミが媒介するリケッチア疾患で,以下の3つの状況でみられる:
  • 戦争や人混みでの不衛生な状況
  • 最初の感染から数年後の再発:Brill-Zinsser病(下記コメント参照)
  • 森林サイクルは,ムササビやそれに付く感染したダニやノミを含む.
  • 臨床症状:
  • 感染したコロモジラミ(Pediculosis humanus)やアタマジラミ(Pediculosis capitis)を保有する患者で,突然の発熱,頭痛,倦怠感.
  • 64%の患者で発疹を認める:体幹部から始まり,遠心的に四肢へと広がる.

病原体/診断

病原体
  • Rickettsia prowazekii
診断
  • 可能ならPCR.

第一選択

  • DOXY 100mg経口または静注†1日2回・5日.ある研究では200mg1回が95%の患者で有効だった(コメント参照).
  • 上記に加えて,患者の衣服からシラミを除去する.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • CP 500mg経口または静注1日4回・5日
  • 上記に加えて,患者の衣服からシラミを除去する.

コメント

  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用は,これまで制限されてきた.これは,8歳未満の小児において,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こるという報告があったためである.DOXYは,他のテトラサイクリン系薬に比べカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.DOXYは短期間(≦21日)ならば,患者の年齢にかかわらず安全に投与できる(AAP Red Book 2018J Pediatr 166: 1246, 2015).
  • 再発性のシラミ媒介チフスはBrill-Zinsser病とよばれる.最初の感染から10~50年後に起こることがある.Can Med Assoc J 73: 560, 1955(第二次大戦中に罹患したシラミ媒介チフスの再発)参照.
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2023/10/23