| Cabotegravir  (2024/12/03 更新)
 | 
Contents
1. 用法および用量
  1. 使用
  2. 成人用量
  3. 小児用量
  4. 腎障害時の用量調整
  5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 薬理学
4. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント
1. 用法および用量
 1. 使用
- 
経口Cabotegravir(CAB)はインテグラーゼ阻害薬(INSTI)であり,注射薬の投与に先立って忍容性を評価する経口リードイン治療,および計画された注射治療ができなかった患者への経口治療として,(経口リルピビリンとの併用,または曝露前予防の場合はCAB単独で)用いられる.
 
- 
患者は経口CABとリルピビリン,またはCAB単独を,毎日ほぼ同じ時間に食事とともに服用する.
 
- 
Cabotegravirの遅延放出型注射用懸濁液は,体重≧35kgで性行為によるHIV感染リスクのある成人および青少年において,リスク低減のための曝露前予防として用いられる.
 
- 
Cabotegravir+リルピビリンの2剤組み合わせ注射剤については,Cabenuvaを参照.
 
 
 2. 成人用量
- 
経口リードイン投与:Cabotegravir 30mg(治療では+リルピビリン25mg,曝露前予防ではリルピビリンなし)1日1回・1カ月.最後の経口投与は注射治療の開始と同日に行う.
 
- 
患者が意図的に予定された注射を>7日遅らせた場合,Cabotegravir 30mg+リルピビリン25mg1日1回による経口治療を,月1回の注射の代わりに行ってもよい.経口治療の最初の投与は最後の注射治療から約1カ月後に行い,注射治療再開まで続ける.
 
- 
曝露前予防
 
- 
処方は2回の導入注射と,その後の維持注射からなる.
 
- 
導入注射:Cabotegravir 600mg/3mL筋注,1カ月以内に繰り返す.
 
- 
維持注射:Cabotegravir 600mg/3mL筋注2カ月ごと,2回目の導入注射から2カ月後に開始.
 
- 
経口Cabotegravirによるリードイン(30mg経口1日1回・28日)を,忍容性を評価するために最初の導入注射の前に投与してもよい.経口リードインを用いた場合は,最初の導入注射を,経口リードインの最終日か最終日から3日以内に投与する.
 
- 
2回目の導入注射,およびすべての維持注射は,予定された投与日の前後7日以内なら投与してよい.
 
- 
注射部位として腹側臀部が推奨される.手技者にとって好ましい場合は背側臀部(上腹部外側)へのアプローチも可.他のルートや部位には投与しないこと.
 
 
 3. 小児用量
 
| 経路,適応 
 | 用量(生後>28日) 
 | 最大/日 
 | 
| 筋注,曝露前予防 
 | 年齢≧12歳,体重≧35kg: 600mg月2回,その後600mg2ヵ月ごと
 
 | - 
 | 
| 経口 
 | 年齢≧12歳,体重≧35kg:30mg24時間ごと 
 | - 
 | 
 
- 
忍容性を評価するために経口リードイン(CAB月1回)を考慮する.
 
 
 4. 腎障害時の用量調整
 
| 半減期(時間)(腎機能正常) 
 | 41 
 | 
| 半減期(時間)(ESRD) 
 | 変化なし 
 | 
| 用量(腎機能正常) 
 | 30mg経口24時間ごと 
 | 
| CrClまたはeGFR 
 | CrCl≧15:用量調整不要 CrCl<15:データなし
 
 | 
| 血液透析 
 | データなし 
 | 
| CAPD 
 | データなし 
 | 
| CRRT 
 | データなし 
 | 
| SLED 
 | データなし 
 | 
 
 5. 肝障害時の用量調整
- 
軽症・中等症の肝障害(Child-Pugh分類 AまたはB)では用量調整は必要ない
 
- 
重症肝障害(Child-Pugh分類 C)のCabotergavir薬物動態への影響は不明
 
 
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
- 
リードイン時にもっとも多くみられる副作用(すべて<1%):頭痛,悪心,悪夢,不安,不眠.
 
- 
過敏反応(発疹,発熱,不快感,疲労,筋肉痛,関節痛,水疱,粘膜障害,結膜炎,顔面浮腫,肝炎,好酸球増多症,血管浮腫,呼吸困難などの自他覚症状).
 
- 
肝毒性
 
- 
抑うつ障害
 
妊娠時のリスク
- 
FDAリスク区分(新):ヒトでのデータは不十分
 
- 
授乳中の使用:ART中かつ妊娠期間を通じてウイルス量が抑制されていれば,乳児栄養方法,リスク,有用性についてのカウンセリングを受けたうえで,授乳は合理的な選択肢.
 
 
3. 薬理学
 
| 薬効分類 
 | INSTI 
 | 
| 剤形 
 | 錠(30mg) 注射剤
 
 | 
| 食事に関する推奨(経口薬)1 
 | 錠:食事とともに 
 | 
| 経口吸収率(%) 
 | データなし 
 | 
| Tmax(時間) 
 | 経口:3 注射:
 
 | 
| 最高血清濃度2(μg/mL) 
 | 8.0(30mg経口24時間ごと,SS) 4.0(600mg筋注月2回,SS)
 
 | 
| 蛋白結合(%) 
 | >99.8 
 | 
| 分布容積8(Vd) 
 | データなし 
 | 
| 平均血清半減期4(T1/2, 時間) 
 | 経口:41 筋注:5.6~11.5週
 
 | 
| 排泄(%) 
 | 代謝 
 | 
| 細胞内半減期(T1/2,時間) 
 | データなし 
 | 
| 脳脊髄液/血液5(%) 
 | 0.3 
 | 
| 中枢神経系移行効果(CPE)6 
 | データなし 
 | 
| AUC7(μg・時間/mL) 
 | 145(30mg経口24時間ごと,0~24時間) 3764(600mg筋注2ヵ月ごと,0~24時間)
 
 | 
 
- 
注記のない場合は成人用経口製剤
 
- 
SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
 
- 
V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
 
- 
CrCl>80 mL/分と想定
 
- 
炎症時における脳脊髄液濃度
 
- 
CPE(中枢神経系移行効果)値 1:低度,2~3:中等度,4:高度(Letendre, et al., CROI 2010, abs #430)
 
- 
AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
 
 
4. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
 
| CYP450の基質 
 | 
 | 
| トランスポーターの基質 
 | PGP,BCRP 
 | 
| CYP450阻害 
 | 
 | 
| トランスポーター阻害 
 | OAT1,OAT3 
 | 
| CYP450誘導 
 | 
 | 
| トランスポーター誘導 
 | 
 | 
| 血清中薬物濃度への影響 
 | ↑ 
 | 
 
血清中薬物濃度への影響は,当該抗微⽣物薬により影響を受ける併⽤薬の⾎清中濃度である.↑:上昇,↓:低下
 
5. 主要な薬物相互作用
 
| 薬剤 
 | 濃度への影響 
 | 推奨される対応 
 | 
| 制酸薬(Al,Mg,Ca) 
 | Cabotegravir↓ 
 | 制酸薬をCABの2時間前または4時間後に投与 
 | 
| カルバマゼピン 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
| メサドン 
 | メサドン↓ 
 | モニター,メサドンの用量を調整 
 | 
| Oxcarbazepin 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
| フェノバルビタール 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
| フェニトイン 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
| リファブチン 
 | Cabotegravir↓ 
 | 経口CAB:用量調整不要 CAB曝露前予防:CABを増量(コメント参照)
 
 | 
| リファンピシン 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
| Rifapentine 
 | Cabotegravir↓ 
 | 禁忌 
 | 
 
6. コメント
- 
リファブチンは経口Cabotegravirとは併用可能だが,Cabotegravir/リルピビリン注射剤との併用は禁忌.
 
- 
CAB曝露前予防:リファブチンを最初の導入注射前または同時に開始する場合,CAB用量を600mg/3mL筋注,2週後に600mg/3mL筋注,その後(リファブチン併用中は)1カ月ごととすることが推奨される.リファブチンを2回目の導入注射時またはそれより後に開始する場合,CAB用量を(リファブチン併用中は)600mg/3mL筋注1カ月ごととすることが推奨される.リファブチン終了後は,推奨CAB用量は600mg/3mL筋注2カ月ごとである.
 
 
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2025 Life Science Publishing↑ page top