Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 薬理学
4. 主要な薬物相互作用
5. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
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Cabotegravir(CAB)注射薬+リルピビリン(RPV)注射薬(Cabenuva)は2剤同封の製品であり,ARV治療の経験がないか,安定的な処方でウイルス学的抑制がなされて(RNA<50コピー/mL)治療失敗の既往がなく,どちらの成分に対しても耐性やその疑いがない成人HIV-1感染患者において,現処方に対する代替として用いられる.
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忍容性評価のために,経口CAB(30mg24時間ごと)+経口RPV(25mg24時間ごと)のリードイン投与を注射薬開始の1カ月前に行ってもよい.そうでなければ,現行のARV処方の最終日にCAB/RPV筋注に進んでよい(注:日本では承認されていない).
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CAB+RPV注射薬は筋注での徐放溶液であり,さらなる希釈や再構成は必要ない.濃度:CAB 600mg/3mL,RPV 900mg/3mL.
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1回の診療で臀部の別々の部位(反対側か2cm離れた部位)に投与する.腹側臀筋が推奨される.
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注射後の約10分間は反応をモニターする.23ゲージ1.5インチのIM針が推奨される(パッケージに同梱).BMI>30kg/m2の患者には,より長い針(2インチ)を使用すること.
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注意:薬物相互作用が多い(下の表を参照,すべて網羅しているわけではない).
2. 成人用量
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経口リードインまたは現行の経口ARV処方の最終日に開始
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用量:CAB 600mg筋注+RPV 900mg筋注
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初回注射の1ヵ月後に開始
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用量:CAB 400mg筋注+RPV 600mg毎月,±7日ズレても良い
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経口リードインまたは現行の経口ARV処方の最終日に開始
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用量:CAB 600mg筋注+RPV 900mg筋注.1ヵ月後に繰り返す
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初回注射第2回の2ヵ月後に開始
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用量:CAB 600mg筋注+RPV 900mg筋注.2ヵ月後ごとに繰り返す,±7日ズレても良い
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月1回コースから隔月コースへの変更:月1回コースの持続的注射最終回の1ヵ月後にCAB 400mg+RPV 600mg注射,その後2ヵ月ごと
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隔月コースから月1回コースへの変更:2ヵ月1回コースの持続的注射最終回の2ヵ月後にCAB 400mg+RPV 600mg注射,その後1ヵ月ごと
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意図的に注射を受けなかった場合(月1回コース)
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患者が意図的に予定された注射を>7日受けなかった場合,受けなかった予定の注射に代えて経口治療(CAB 30mg24時間ごと,RPV 25mg24時間ごと)または,いずれか他の維持経口ARV処方の全コースを2ヵ月後まで行う.
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最後の2剤注射の約1ヵ月後に経口治療を開始,注射再スタートまで持続する.
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最後の2剤注射からの時間が2ヵ月以内の場合,すみやかに月1回コースを再開する(CAV 400mg,RPV 600mg).
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最後の2剤注射から>2ヵ月経ってしまった場合,患者に初回注射を行い,月1回コースを再開する.
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月1回2剤注射を受けなかった,または>7日遅れ,暫定的な経口治療を受けていない場合は,注射再開が適切か患者を評価する.適切であれば,注射を受けなかった期間に当初定められていた通りに行う(上記参照).
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患者が意図的に予定された注射を>7日受けなかった場合,受けなかった予定の注射に代えて経口治療(CAB 30mg24時間ごと,RPV 25mg24時間ごと)または,いずれか他の維持経口ARV処方の全コースを2ヵ月後まで行う.
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最後の2剤注射の約1ヵ月後に経口治療を開始,注射再スタートまで持続する.
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初回2剤注射の第2回が行えなかった場合
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初回注射からの時間が2ヵ月以内なら,すみやかにCAB 600mg+RPV 900mg注射を行い,その後は隔月コースのスケジュールに従う.
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初回注射から>2ヵ月経ってしまった場合,患者に初回注射を行い,隔月コースを再開する.
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最後の2剤注射からの時間が3ヵ月以内なら,すみやかにCAB 600mg+RPV 900mgを注射,その後は隔月コースのスケジュールに従う.
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最後の2剤注射から>3ヵ月経ってしまった場合,患者に初回注射を行い,隔月コースを再開する.
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2ヵ月ごとの2剤注射が行えなかった,または>7日遅れたが暫定的な経口治療も受けられなかった場合は,注射再開が適切か患者を評価する.適切であれば,注射を受けなかった機関に当初定められていた通りに進行する(上記参照).
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3. 小児用量
用量(生後>28日)
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年齢≧12歳,体重≧35kg 月1回注射: 600mg/900mg筋注,その後400mg/600mg月1回 隔月注射: 600mg/900mg筋注,1ヵ月以内に繰り返し,その後は2ヵ月に1回
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最大/日
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忍容性を評価するための経口リードイン(CAB/RPV・1ヵ月)を考慮する.
4. 腎障害時の用量調整
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体重およびクレアチニンクリアランス(CrCl)推定値の計算法
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CAPD: 持続的携行型腹膜透析, CRRT: 持続的腎代替療法,SLED: 長時間低効率血液透析
半減期(時間)(腎機能正常)
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CAB:5.6~11.5週 RPV:13~28週
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半減期(時間)(ESRD)
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CAB:データなし RPV:データなし
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用量(腎機能正常)
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CAB:600mg1回,その後400mg月1回 RPV:900mg1回,その後600mg月1回
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CrClまたはeGFR
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CrCl≧30:用量調整不要 CrCl<30:用量調整不要,毒性をモニター
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血液透析
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データなし
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CAPD
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データなし
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CRRT
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データなし
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SLED
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データなし
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5. 肝障害時の用量調整
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軽症・中等症の肝障害(Child-Pugh分類 AまたはB)では不要
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重症肝障害(Child-Pugh分類 C)のCarbotegravirまたはリルピビリンの薬物動態への影響は不明
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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過敏反応(発疹,発熱,不快感,疲労,筋肉痛,関節痛,水疱,粘膜障害,結膜炎,顔面浮腫,肝炎,好酸球増多症,血管浮腫,呼吸困難などの所見/症状)
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リルピビリン注射後の反応(患者の<1%):呼吸困難,不穏,筋けいれん,潮紅,発汗,口のしびれ感,血圧変化.おそらくは不注意な(部分的)静注投与に関係している.
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肝毒性(トランスアミナーゼをモニター)
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抑うつ障害
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QT延長(リルピビリンに関係)
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筋肉内投与によるCPK上昇
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注射部位の疼痛は多いが,ほとんどは短期間であり注射後数日で解消する.
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ACTH負荷試験の変化(臨床的な重要性は不明)
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(新):ヒトでのデータは不十分
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授乳中の使用:ARTがなされていて,妊娠期間を通じてウイルス量が抑制されていれば,リスクと有用性についてのカウンセリングを行った上での乳児哺乳は合理的な選択肢となる.
3. 薬理学
薬効分類
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インテグラーゼ阻害薬+非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬
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剤形
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CAB 400mg/RPV 600mg注射キット CAB 600mg/RPV 900mg注射キット
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食事に関する推奨(経口薬)1
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経口吸収率(%)
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Tmax(時間)
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CAB 7日 RPV 3~4日
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最高血清濃度2(μg/mL)
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CAB 4.2(400mg筋注,SD) RPV 0.12(600mg筋注,SD)
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蛋白結合(%)
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CAB >99.8 RPV 99.7
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分布容積3(Vd)
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CAB データなし RPV データなし
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平均血清半減期4(週)
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CAB 5.6~11.5 RPV 13~28
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排泄
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CAB 代謝 RPV 代謝
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細胞内半減期(時間)
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CAB データなし RPV データなし
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脳脊髄液/血液移行性5(%)
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CAB 0.3 RPV 1
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中枢神経系移行効果(CPE)6
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CAB データなし RPV データなし
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AUC7(μg・時間/mL)
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CAB 2415(400mg筋注1ヵ月ごと,0~1ヵ月) RPV 65.5(600mg筋注1ヵ月ごと,0~1ヵ月)
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注記のない場合は成人用経口製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
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CrCl>80 mL/分と想定
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炎症時における脳脊髄液濃度
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CPE(中枢神経系移行効果)値 1:低度,2~3:中等度,4:高度(Letendre, et al, CROI 2010, abs # 430)
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AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
4. 主要な薬物相互作用
薬剤
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濃度への影響
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推奨される対応
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カルバマゼピン
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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クラリスロマイシン
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リルピビリン↑
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併用を避ける
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デキサメタゾン
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リルピビリン↓
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禁忌
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エリスロマイシン
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リルピビリン↑
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併用を避ける
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メサドン
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メサドン↓
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モニター,用量調整
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Oxcarbamazepine
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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フェノバルビタール
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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フェニトイン
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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リファブチン
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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リファンピシン
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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Rifapentine
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Cabotegravir↓,リルピビリン↓
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禁忌
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セイヨウオトギリソウ
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リルピビリン↓
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禁忌
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5. コメント
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月1回および隔月注射がFDAにより承認されている.
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隔月注射の有効性がATRAS 2M研究で示された
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