• Lenacapavirは，度重なる治療を受けてきたが，抵抗性あるいは不耐のため，または安全性を考慮し，これまでの抗レトロウイルス（ARV）レジメンでは治療できない多剤耐性HIV-1感染症成人患者の治療に適応となる．他のARVと組み合わせて使用される．
  
• 最初のカプシド阻害薬である．Lenacapavirは，2つの隣接カプシドモノマー間でHIVカプシドに直接結合する．ウイルスのライフサイクル初期から後期における複数のプロセス（カプシド分解，核輸送，ウイルス生成，カプシドアセンブリ）を阻害する．
  
• HIV-1感染症に対し，6ヵ月ごとに治療する．リードインが必要（下記参照）．皮下注射の詳細については，添付文書を参照（図1，2が参考になる）
  
• 臨床試験（CAPELLA）では，HIV-1多剤耐性の36名を登録し，Lenacapavirを6ヵ月ごとに皮下注射した．14日間の追加投与では88％（21/24名）がHIV RNAを0.5 log以上減少させたが，プラセボではそのような減少がみられたのは17％（2/12名）であった．
  
• LenacapavirをPrEPとして使用する研究が進行中である．
  
• 警告：多数の薬物相互作用がある．Lenacapavirは，CYP3A，PGP，BCRPの阻害薬であり，PGP，UGT1A1，およびCYP3Aの基質である．下記の主な薬物相互作用を参照のこと（すべてを網羅するものではない）．
  

• 初回用量：2つの推奨処方のどちらか1つを使用する．錠剤は，食事にかかわらず服用できる．
  

• 推奨1
  

• 1日目：927mg皮下注射，600mg経口
  
• 2日目：600mg経口
  

• 推奨2
  

• 1日目：600mg経口
  
• 2日目：600mg経口
  
• 8日目：300mg経口
  
• 15日目：927mg皮下注射
  

• 維持用量
  

• 927mg皮下注射，最終接種の6ヵ月後（26週），6ヵ月（±2週）ごとに繰り返す
  

• 小児患者における安全性と有効性は確立されていない
  

• 軽度，中等度，重度（CrCl≧15mL/分）腎障害の患者に対しては，用量調整は推奨されない．
  
• ESRD（CrCl＜15mL/分）患者でのデータはない．
  

• 軽症（Child-Pugh分類A）または中等症（Child-Pugh分類B）の肝障害患者では，用量調整は推奨されない．
  
• 重篤な肝障害（Child-Pugh分類C）患者でのデータはない．
  

副作用

• 注射部位反応
  
• 悪心
  
• 免疫再構築症候群（IRIS）
  

妊娠時のリスク

• FDAリスク区分（新）：ヒトのデータは不十分，動物での毒性エビデンスなし．
  
• 授乳中の使用：ARTを受けていて，ウイルス量が妊娠期間を通じて抑制されていれば，乳児授乳の選択肢，リスクと有用性についてコンサルトした上でなら授乳は合理的な選択肢となる．
  

1. 注記のない場合は成人用経口製剤
   
2. SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
   
3. V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
   
4. CrCl＞80 mL/分と想定
   
5. 炎症時における脳脊髄液濃度
   
6. CPE（中枢神経系移行効果）値　1：低度，2～3：中等度，4：高度（Letendre, et al., CROI 2010, abs #430）
   
7. AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve．0～inf＝AUC0-inf，0～ｘ時間＝AUC0-x
   5.　酵素・トランスポーター媒介相互
   

血清中薬物濃度への影響は，当該抗微生物薬により影響を受ける併用薬の血清中濃度である．↑：上昇，↓：低下，空白：薬物への影響なし