日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ポリオ,ワクチン  (2024/02/20 更新)
不活化ポリオワクチン(IPV),経口生ポリオワクチン(OPV)


ワクチンの適応

ルーチン
  • 米国の全ての乳児と小児に対する初回接種コース
  • 年齢18歳以上で,ポリオに対するワクチン未接種あるいは未完了が明らか又は疑われる場合にはIPV初回ポリオワクチン接種コースを完了しなければならない.
  • ワクチン接種を完了した米国の成人で,ポリオウイルス曝露のリスクが大きい(米国の地域での症例多発など)場合には,生涯に1度のIPV追加接種を受けてもよい.
  • 18歳未満の先進国への移住者で,IPV(つねに三価)または三価OPVのいずれかの組み合わせによる3種ポリオウイルスワクチン接種の適切な記録がない例
  • 重要:すべての流行国でtOPVは2016年に二価OPVに代わった.
  • ポリオのリスクが高い国からの養子縁組みの家族または世話人で,ワクチン未接種の(または不十分な)人,あるいは過去の接種がOPVであった可能性がある人では初回接種を完了させる.
  • tOPVまたはIPV(どの組み合わせでも)の初回接種コースを受けた成人で,ポリオウイルス曝露のリスクが増大している状況にある場合は,IPVの追加接種を受けてもよい.
  • リスク増大の定義:ポリオウイルスがびまんしている(たとえば地域的な流行)地域に住んでいる又は働いている人,すべての検査施設職員,リスクの高い医療従事者で,ポリオ感染の可能性がある人または献体との接触の機会がある場合
旅行
  • リスクの高い国への渡航(特に救援活動,難民,医療従事者)(CDCによる)
  • サウジアラビアへの大巡礼/小巡礼の聖地巡礼.
  • 初回ワクチン接種を完了していない旅行者,または完了していても,成人になってから追加接種1回を受けていない旅行者.
  • 避難勧告(野生株ポリオウイルス[WPV]またはワクチン由来ポリオウイルス[VDPV]のため)が出ている国の居住者,またはその国に渡航して4週間以上滞在する予定の人.
  • ポリオのない一部の国では,ポリオ流行国または感染国からの移住者または渡航者に対して,ポリオワクチン接種を入国資格としていることがある.
  • いくつかの国には避難勧告が出ており,長期滞在(>4週)旅行者や居住者は出国する度に最近の毎年の接種証明が必要になることがある.

投与量とスケジュール
商品名(製造元)
IPOL(Sanofi Pasteur)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
注射ポリオウイルスワクチン,三価ワクチン1,2,3型,不活化(IPV)
年齢
生後6週以上
用量,経路
0.5mL筋注
初回接種スケジュール-ルーチン,生後6週~17歳
生後2,4,6~18ヵ月で3回接種
通常の年齢で開始しなかった場合のキャッチアップスケジュール:4歳未満なら0,1,2ヵ月,4歳以上なら0,1,6ヵ月
初回接種スケジュール-ルーチン,18歳以上(ワクチン接種歴がない場合でも,米国で育った成人で特殊な環境にあって初回ポリオワクチン接種が十分と考えられる場合は除く)
2回目1接種後 0,1~2ヵ月,6~12ヵ月で3回接種
初回接種スケジュール-短縮,生後6ヵ月~17歳
第1回接種後,0,1,2ヵ月2
初回接種スケジュール-短縮,18歳以上
0,4,2ヵ月3(高リスク地域への渡航前に可能な限り多数回接種)
第1回追加接種-初回接種を乳児で受けた小児
4~6歳またはその後できるだけ速やかに1回接種4
追加接種>18歳(初回接種コース3回接種の記録がある場合)
適応となる場合(危険地域への渡航;地域での症例多発)5に限り,成人用量を1回だけ接種
  1. 1回または2回ポリオワクチンを接種している成人は,最終の1回または2回接種を標準的な間隔(第1回と2回の間が4週以上,第2回と3回の間が6ヵ月以上)で受けて,3回で一生分の接種を完了しなければならない
  2. 生後<6ヵ月の渡航予定者は,渡航前または流行中に3回接種できるように,生後6週から接種開始してもよい.追加接種(第4回)は第3回の≧6ヵ月後に行わなければならない.この次善の投与方法は,出国のため必要な場合に限る.
  3. 第1回と第2回,および第2回と第3回の最短間隔は4週である.出国前に可能な限り複数回の接種を行うが,1回接種でも有効性はある.
  4. 4歳またはそれ以降にIPV初回接種の第3回接種を最後の接種から少なくとも6カ月は間隔を開けて受けた場合,4~6歳のポリオワクチン追加接種は省略すること.
  5. 現在までのデータでは,成人に対する生涯に1回以上の追加接種の必要性は示されていない.

効果と予防効果持続期間/選択・互換性

効果と予防効果持続期間
  • まひ性ポリオに対するワクチン効果(VE):1回接種で36~89%,2回接種で89~98%.
  • 3回のIPV初回接種完了後のセロコンバージョン達成率は99~100%.2回接種後でのセロコンバージョン率は,富裕国で≧90%.
  • まひ性疾患に対する免疫性は,抗体が検出されなくとも存在することがある
  • 一部の血清型に対する免疫性は10年後には減弱するので,リスクの高い旅行者の成人では追加接種が必要となることがある.
  • IPVは臨床的発症を予防するが,経口感染後のポリオウイルスの消化管での増殖や排出は予防しない.
  • OPVワクチンを接種していても,流行国から他の国へとウイルスは移動する.
  • 三価IPVの1回接種は,(発展途上国で)三価OPV接種を人生のどこかの時点で少なくとも1回は受けた人での,ポリオウイルス排出を有意に抑制する.
  • そのため,発展途上国ではOPV接種は少なくとも1回のIPV接種で補完されている.
選択,互換性
  • さまざまな国で市販されている単価IPV製品は,すべて互換可能である.
  • IPVを含む小児の初回接種ワクチンの組み合わせは,スケジュールがそれぞれに異なり,製品の互換性についての複雑な規則がある
  • 米国外で接種されるポリオワクチンでも,接種が生後>6ヵ月で行われるか,IPVまたは三価OPV(tOPV)であることが明らかならば正当である.
  • 2016年から,世界的にOPV接種はすべて二価となり,米国での目的に沿うものではなくなった.
  • 三価OPVだけの接種で全3回接種が年齢<4歳で行われた場合,IPVを1回接種する.
    (日本では2012年まで三価OPVが用いられていたが,そのときの投与回数は2回)
  • 三価OPVの記録が不十分な場合は,米国IPVスケジュールに従ってIPV再接種を全て行う.

毒性

禁忌
  • 以前の接種またはワクチン含有成分に対するアナフィラキシー反応
  • IPVには微量のSM,PL-B,Neomycinが含まれている
  • 抗菌薬局所製剤に対する反応の既往は問題ではない
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず)
副作用
  • OPV:特に免疫不全者において,100万~200万回の接種でワクチン株から病原性の高いポリオウイルスに戻る危険性があり,米国や流行していない先進国では20年以上使用されていない.
  • IPV:軽微な反応(痛み,発赤,硬結)が注射部位に起こることがある.重大な副反応は起こらない.
薬物相互作用
  • IPVおよびIPV含有ワクチンは,他のワクチンや抗体含有製剤と同時に(または接種前,接種後のどの時点でも)接種することができる.
  • OPVがロタウイルスワクチンの免疫反応を減弱させるかどうかについては相反したデータがある.

特に注意が必要な対象

妊娠,授乳
  • IPV接種を受けた妊婦での胎児へのリスクについては,エビデンスがない.
  • WHOは妊婦でのOPVを推奨している
  • IPV接種は授乳の禁忌ではない.
免疫不全/HIV
  • IPVは免疫不全者にも多少の予防となるかもしれず,安全性の問題はない.
  • CD4>200のHIV患者の無症候性感染では二価OPVを接種しなければならない.

血清学検査

  • どのような状況でも適応とならない.

コメント

  • 2000年以降,米国で接種されたポリオワクチンはすべてIPVで,経口生ポリオワクチンではない.
  • 2022年7月,New Yorkでのワクチン由来ポリオウイルス2型の症例多発があった:CDC症例報告
  • 米国外では,多くの主要製薬会社が三価IPVを製造している.
  • 二価(1型および3型)または単価(1型,2型,または3型)のOPVは,主に発展途上国で,それぞれの国の管理プログラムの特殊な必要性に従って使用されている.
  • ポリオ流行国およびポリオの輸入感染リスクが高い国について,WHOは二価OPV3回およびIPV2回のワクチン接種スケジュールを推奨している.
  • 生後6,10,14週で二価OPV接種,その後少なくとも生後14週でIPV接種,≧4ヵ月後にIPV第2回接種する.
  • 一部の国ではスケジュール外の生後二価OPV接種が推奨される.
  • 急性灰白髄炎と既に診断された人も,ワクチン接種を完了させる必要がある.1つの血清型に対する免疫は他の血清型をカバーしない.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
  • 米国CDCの国別のワクチン推奨:Travelers Healthから国を選択.
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2024/02/19