日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

麻疹・おたふく風邪・風疹,ワクチン  (2025/12/16 更新)
MMR,MMRV


ワクチン接種の適応

標準コース(ルーチン)
  • 全小児,生後12ヵ月から開始
  • 小児での連続接種を完了しなかった,免疫のない小児および青少年
  • HIV感染でCD4>200の免疫のない人
  • 免疫性のエビデンス基準についてはコメント参照
  • リスクレベルに関わらず,1957年以降に米国で生まれた免疫能不明の成人
  • 中等教育を修了した学生
  • 感染の可能性のある軍人
  • 麻疹への最近の曝露
  • 1963~1967年に麻疹不活化ワクチンまたは種類のわからない麻疹ワクチンの接種を受けた人
  • 免疫性のエビデンスについてはコメント参照
海外渡航
  • 免疫のない海外渡航者(生後>6ヵ月)には,渡航先がどこであろうとも,全員に渡航前のMMRワクチン1回以上の接種が,以下のように推奨される
  • 2回接種(最短接種間隔は28日)
  • 米国で1957年以降に生まれた生後≧12ヵ月の全海外渡航者
  • 海外渡航するすべての医療従事者・生年にかかわらず
  • 1回接種
  • 生後6~11ヵ月の乳児(回数に加算されない);生後12~15ヵ月では,ルーチンのMMR接種(年齢に応じた2回追加接種)を帰国後に続いて行わなければならない.
  • 高リスク地域にとどまる小児は,生後12ヵ月で早ければ4週後に第2回接種でワクチン再接種をしなければならない.
  • 1957年以降に生まれた生後≧12ヵ月のすべての海外渡航者で,MMRワクチンを1回(加算)しか接種していない場合
用量とスケジュール
商品名(製造元)
M-M-R II(メルク)
Priorix(グラクソ・スミスクライン)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
麻疹・おたふく風邪・風疹ウイルスワクチン,生弱毒化(MMR)
麻疹・おたふく風邪・風疹ウイルスワクチン,生弱毒化(MMR)
年齢
生後≧12ヵ月(海外渡航なら≧6ヵ月)
生後≧12ヵ月(海外渡航なら≧6ヵ月)
用量,経路
0.5mL 筋注(2023年3月時点)または皮下
0.5mL 皮下のみ
初回接種スケジュール-ルーチン,生後≧12ヵ月1,2
生後12~15ヵ月および4~6歳
生後12~15ヵ月および4~6歳
初回接種スケジュール-ルーチン,年齢≧18歳(免疫のない,特に出産可能年齢女性でリスク因子のない場合)
1回接種
1回接種
初回接種スケジュール-海外渡航のための加速化,生後6~11ヵ月
出発前に1回接種(非加算)3
出発前に1回接種(非加算)3
初回接種スケジュール-生後≧12ヵ月:すべての海外渡航,一部のHIV患者,すべての医療従事者[生年にかかわらず],大学生,重症免疫不全患者と接触のある人(ワクチン接種あるいは免疫性のエビデンスがない場合)
0,28日4
0,28日4
第1回追加接種
なし5
なし5
その後の追加接種
  
  
  1. 4~6歳での第2回初回接種は1990年に導入されただけである.米国で1957~1993年に生まれた人は,小児期に0~1回のMMR接種しか受けていないかもしれない.そうした人が確実に生涯にMMR合計2回接種を完了するようにしなければならない.疑わしい場合には,海外渡航前にMMR接種を行う;上乗せの接種が毒性を増大させることはない.
  2. 生後12~47ヵ月の小児に対する第1回接種では,MMRと水痘ワクチンは別々に接種する.年齢≧4歳の小児では,第2回はMMRV(Proquad,メルク)を代わりに使用してもよい.
  3. 生後≧12ヵ月では,ルーチンスケジュールに従い,年齢に応じて2回の接種を追加する.
  4. 年齢<4歳の幼児では,第2回加速化接種は加算され,地域の学校が≧4歳での第2回接種を義務としないかぎりは,4~6歳では繰り返す必要はない.
  5. ルーチンでの追加接種は行わない.地域でおたふく風邪が流行している状況では,公衆衛生機関が追加(第3回)接種を推奨することがある.

有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防期間
  • 有効性は95%~98%(麻疹),78%(おたふく風邪),95%(風疹)
  • 第2回接種後,>99%で麻疹および風疹の予防が>20年維持される.
  • 対照的に,第2回接種後のおたふく風邪に対するワクチン効果は,第2回接種後13年で89%から32%に低下する-これは流行時での測定である.
  • G型ウイルス(米国では主流の株)抗HN抗体はA型ワクチンによる抗HN抗体よりも速やかに消失する.18歳までにはMMRワクチン被接種者の1/3で麻疹に対する予防効果はなくなる.Proc Natl Acad Sci USA 120: e2207595120, 2023
  • 米国では,おたふく風邪の症例が,小児期に2回のMMR接種を受けている大学生で劇的に増加している.
選択,互換性
  • 選択:2つの米国製品は,有効性,忍容性も同等.
  • MMR-IIとPriorixは互換性がある.
  • HIV感染者(CD4数にかかわらず)あるいは免疫不全者では,データがないため,MMRV混合ワクチンは使用しないこと.2025年からは<4歳の小児には推奨されない.

毒性

禁忌
  • 以前のワクチン接種での,あるいはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応
  • 重症の免疫不全が明らかな場合
  • HIV感染者(免疫機能が正常であっても)(MMRVのみ)
  • 免疫不全の家族歴がある場合:免疫機能正常であることが臨床的に,または臨床検査で確認された場合は除く
  • 未治療の活動性結核
  • 熱性の呼吸器疾患または発熱を伴う活動性の感染症(軽度の発熱は除く)
警告
(定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある).
  • 中等症あるいは重症急性疾患(発熱の有無にかかわらない)
  • 血小板減少症または血小板減少性紫斑病の既往
  • 最近(直近3~11ヵ月)抗体含有の血液製剤の投与を受けた(製剤により「直近」の間隔は異なる)
  • 何らかの原因によるけいれんの既往または家族歴がある場合(MMRVのみ)
  • ツベルクリン皮膚反応検査またはインターフェロンγ遊離試験(IGRA)の必要がある場合
副作用
  • 注射部位の反応(灼熱感または突き刺すような痛み),発熱(≧39.4℃が1~2日)がワクチン被接種者の最大15%までにみられ,全身性あるいは麻疹様の発赤が最大2%までにみられる.
  • 発熱と発赤は,通常ワクチン接種後7~12日に起こる.
薬物相互作用
  • MMRは,COVID-19ワクチンを含む不活化ワクチンと同時に(または前後のどの時点でも)併用できる.
  • 可能な場合はつねに,同一日に生ウイルスワクチン注射を接種する.
  • わずかなデータだが,生後12~23ヵ月の小児では,可能ならば黄熱病ワクチン接種とMMRワクチン接種は最低30日間隔をとった方がよいことが示唆されている.
  • MMRワクチンは,いかなる血液製剤(たとえば,全血,パック入り赤血球パックおよび血漿)または抗体含有製剤とも併用してはならない.
  • 定期的なIVIG治療または何らかの抗体を含む製剤の投与を行っている場合,MMR,水痘,MMRVワクチンは,最初の/または次回のIVIG/Ig投与の14日前に接種する.
  • 抗体含有製剤投与後,MMR,水痘,MMRVワクチン接種を待期する期間は,投与されたIGの量次第であり,通常の筋注用量では6ヵ月,通常の静注用量の適応では8ヵ月である.

特に注意が必要な患者集団

妊婦,授乳
  • 妊娠中は禁忌.
  • ワクチン接種後4週は,女性は妊娠を避けなければならない.
  • 妊娠可能年齢の女性に対するルーチンの妊娠検査は推奨されない.
  • 不注意による妊婦へのワクチン接種,あるいはワクチン接種後4週以内の妊娠は,妊娠中絶の理由にはならない.
  • 風疹に対する免疫性のエビデンスがない妊婦は,妊娠終了または中絶後にMMRワクチン1回接種を受けなければならない.
  • MMRを受けたことは授乳の禁忌ではない.
免疫不全/HIV
  • 重症免疫不全,コントロールされていないHIV,およびCD4<200(小児ではリンパ球<15%)のHIV患者では禁忌.
  • 一部の免疫のないHIV患者では,28日間隔での2回接種を行う.
  • MMRワクチンが禁忌で,麻疹曝露の高リスクに直面している場合には,短期間予防のためにIGを投与してもよい.
  • 造血幹細胞移植患者では,移植後24ヵ月以上で,移植片対宿主病がなく,患者の免疫機能が正常と考えられる場合にはMMRワクチンの再接種をしてもよい.

血清検査

  • MMRワクチン2回接種の記録がある人は,その後の血清検査の結果にかかわらず,免疫があると考えられる:商業的な血清検査は,長期のワクチン誘導免疫性を確実に検出するに十分な感度はない.
  • 職業的な理由から免疫性が要求される場合には,血清検査が要求されることが多い.それ以外では,ルーチンには推奨されない.
  • HIV:MMRワクチン2回接種後に免疫の血清学的エビデンスがない場合,特にワクチン接種した後もウイルス学的抑制が得られないならば,MMR2回接種コースを繰り返す

コメント

  • 免疫性のエビデンス
  • 1957年以前に生まれた人(医療従事者は除く):その時期では麻疹の有病率が高かったため.
  • 2025年の米国での症例のうち1957年以前に生まれた人は<1%である.
  • 現在の米国のデータでは,過去10年における人口に基づく血清反応陽性率は有意な低下を示していない.
  • MMRワクチン2回接種の記録がある人または1957年以前に生まれた人は,その後の血清検査の結果にかかわらず,免疫があると考えられる.商業的な血清検査は,長期のワクチン誘導免疫性を確実に検出するに十分な感度はない.
  • 免疫性の検査でのエビデンス
  • 検査による確定診断(検査による確認なしで,記憶や書類によるものは認められない)
  • おたふく風邪の免疫について十分な証拠がない医療従事者は,ワクチン接種前の抗体スクリーニングを受ける必要はない.
  • CDCは,「低リスク」の成人では,MMRを生まれてから1回接種したことは免疫性のエビデンスとみなせるが,「高リスク」の成人では2回接種が必要としている.
  • 現在の状況では,多くの用心深い成人は,多くが自身を高リスクと考えるだろう.
  • MMR1回接種後の長期の免疫性についての研究はない.
  • 曝露後予防(PEP)
  • 生後≧12ヵ月,免疫のない正常宿主またはCD4>200のHIV感染者:MMRワクチンはIGより望ましい.曝露後72時間以内に接種.
  • IGが投与されても,その後3~6ヵ月にMMR接種が必要となる
  • 重症免疫不全者(CD4<200のHIV感染者を含む):免疫学的またはワクチン接種状態がどうであろうとも,曝露6日以内にIGIV(400mg/kg)を投与.
  • 麻疹に免疫がない妊婦:IVIG 400mg/kgを投与.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
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2025/12/16