日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

天然痘,ワクチン  (2026/03/31 更新)


ワクチン接種の適応

はじめに
  • Jynneos(複製欠損)はFDAに2019年に承認され,ACAM2000よりも忍容性が高く望ましいワクチンとなっているが,曝露後の状況,特に大集団が関与するような状況では,2回接種が必要であることが選択に影響するかもしれない.
  • ACAM200は従来型の複製能のあるワクシニア生ウイルスワクチンであり,心筋炎が高率に発症し,いくつかの致命的な副作用があるが,戦略的国家備蓄に1億本の備蓄がある.
  • 2つのワクチンの供給はCDCおよび地域の保健衛生施設により完全に管理されている.
  • Jynneosは,2024年中に市販となったが,流通が制限されている.
  • エムポックスとは異なり,天然痘に対する適応使用の以前にCDCに相談すること.
ワクチン接種の適応
  • 曝露前ワクチン接種を行う必要があるのは
  • 天然痘に対する曝露前ワクチン接種に関するACIPガイドラインは2022年エムポックスの流行に先だって作成され,またその影響で近日中に改訂される可能性がある.
  • オルソポックスウイルスを扱う研究施設および臨床検査施設職員あるいは組み替えワクシニアウイルスワクチンの研究をしている臨床研究者.
  • 指名された対応チームのメンバー(ワクチンの提供は公衆衛生機関の裁量による).
  • 指名された米国軍隊メンバー
  • 天然痘ワクチン接種は,別の適応がないかぎりは,海外渡航には推奨されない.
  • 曝露前ワクチン接種を,できれば行ったほうがよいのは
  • 複製能のあるワクシニアウイルスワクチンACAM2000の接種を受けた,あるいは複製能のあるオルソポックスウイルスの感染患者を受け持つ医療従事者。臨床的共同意思決定に基づく.
  • 曝露後ワクチン接種を行う必要があるのは
  • 偶然か故意にか放出された天然痘ウイルスに直接曝露された人
  • 天然痘と確認された/または可能性のある/疑いのある症例に接触した人.
  • 接触とは:症例の家族の一員である,症例が発熱した後に3時間以上同室で過ごした,家族ではないが,発疹の出た症例から2メートル以内で3時間以上接触した.
  • 天然痘に曝露していないが,公衆衛生機関が定めた高リスクである人
  • 天然痘の想定される脅威または流行の状況で,屋外ワクチン再接種が推奨されるのは:
  • 民間対応チームのメンバー
  • 高リスク状況にある米国軍人で免疫を維持する必要のある人
  • ワクチン接種した人-最終ワクチン接種からの間隔が長くても短くても
用量とスケジュール
商品名(製造元)
Jynneos(Bavarian Nordic);ラベルはImvamuneまたは米国以外ではImvanex
ACAM2000(Emergent Biosolutions)
ワクチン
(タイプ,CDC略語)
1
複製欠損ワクシニアウイルス(改変ワクシニアアンカラ),FDAおよびEMAはエムポックスと天然痘の両方に承認している
複製能のあるワクシニアウイルス(クローン化NYCBOH株).FDAは天然痘に承認.エムポックスに対する臨床試験が進行中
年齢
18歳以上
18歳以上:緊急のPEPでは1歳以上
用量,経路
0.5mL皮下注(三角筋がのぞましい)
2.5μL経皮2
初回接種スケジュール-
標準コース(ルーチン)
0,4週(5週までが望ましい):そうでなければ,できる限り早く.注射部位に特別の手当や接種成功確認のための再診は必要ない
1回接種
初回接種スケジュール-
短縮コース
なし
なし
第1回追加接種
ACAM2000接種歴のある人にはJynneosの方が望ましい
天然痘ウイルスやエムポックスウイルスの職業的曝露が続いていれば2年;ワクシニアウイルスや牛痘への曝露なら10年
天然痘ウイルスやエムポックスウイルスの職業的曝露が続いていれば3年;ワクシニアウイルスや牛痘への曝露なら10年
その後の追加接種3
上記のように2年または10年
上記のように3年または10年
  1. どちらのワクチンも天然痘ウイルスやエムポックスウイルスをふくんでおらず,エムポックスや天然痘を拡散させたり発症させたりすることはない.
  2. 特別な訓練を受けた接種者(かれら自身もワクチン接種をうけていなければならない)が,2つに分岐した特殊な針を用いて15回突き刺して三角筋に注入する.消毒した衣服を着用し,6~8日にワクチン接種成功を確認する;接種が成功していなければ,再接種する(1回だけ).かさぶた部位からのウイルス排出は平均21日.
  3. Jynneos追加接種に移行した人は,Jynneos追加接種を受け続けなければならず,追加接種の頻度は追加接種(2年)に使用されたワクチンに対応しなければならない.

有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
  • 動物データでは,曝露後4日以内のACAM2000接種により有意に症状発症が抑えられ,エムポックスが予防されることが示されている.
  • 曝露後4~7日の接種で,重症化が少なくなることがある.
  • 感染者が発疹を呈している場合には,ワクチン接種は予防とはならない.
Jynneos
  • ヒトでは,Jynneos1回接種で2週間後に誘導された力価は,14~28日で横ばい状態となる.
  • Jynneos1回接種で誘導された中和抗体力価は,ACAM2000ワクチン接種14日後と非劣性であった.
  • 抗体最高濃度は第2回接種後14日.
  • 動物では,1回接種で曝露後予防となった.
  • 接種開始後42日でワクシニア中和抗体が最高値となり,ACAM2000の1回接種後の2倍の値であった.
  • 1回または2回接種後の免疫性の持続期間は不明.
ACAM2000
  • ACAM2000,天然痘の予防期間は5~10年.
  • 75%の人が2回接種後では10年間,3回接種後では30年間中和抗体を保持する
選択,互換性
  • 天然痘ワクチンは緊急においては禁忌なし
  • ACAM2000のみ使用可能な場合,重症免疫不全,アトピー性皮膚炎,HIV感染者,その他(妊婦,授乳中,小児)への使用は,リスク対効果を考慮する
  • Jynneosが使用できる場合は,そちらを優先する
Jynneos(ワクチンの選択)
  • Jynneosは安全なため,使用において免疫不全者やHIVを含めて病歴やスクリーニングは不要
  • ACAM2000(複製能のあるワクチン)と比較し,Jynneos(複製欠損)は禁忌が少ない
  • 皮下投与とする
  • 心疾患(心筋炎あるいは心膜炎)あるいは他の毒性のリスクはかなり少ない
  • 接種部位の複製ウイルスを含む痂皮に対するケアは不要である(痂皮はつくられない)
ACAM2000(ワクチンの選択)
  • 初回1回接種コースが成功した場合は,ワクチン接種部位での奏功反応が,明らかな予防効果の基準となる.
  • しかし,病変部の治癒までには6週間以上かかることがある.
  • 緊急の海外渡航の場合,初回1回接種コースはJynneos1回接種より有効なことがある.
  • 複製能のあるワクチンは,ワクチン供給を増やすために希釈されうる.
  • 厳重な冷蔵保存は必要ない.
  • 以前のワクシニアウイルスワクチンであり,天然痘除去の実績のあったDryvaxの誘導体であり:Jynneosは公衆衛生上での証明された実績はない.
互換性
  • Jynneosは安全性の点で,エムポックスに対してはACAM2000より望ましい.
  • 追加接種が必要な場合には,これらのワクチンは互換可能.
  • Jynnneosで開始された初回2回接種コースは,Jynneosで終わらなければならない.

毒性

禁忌
  • Jynneos
  • 以前のJynneos(GM,CPFX,卵タンパク)またはACAM2000接種に対する,またはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応は,それ以降の,そのワクチンまたは問題の成分を含むすべてのワクチンの禁忌となる.
  • 流行時には,重症天然痘のリスクの方がワクチンのリスクを上回る
  • Jynneos接種には,上記以外の禁忌はない.
  • ACAM2000
  • 以前のACAM2000接種に対する,またはワクチン成分に対するアナフィラキシー反応は,それ以降の,このワクチンまたは問題の成分を含むすべてのワクチンの禁忌となる
  • アトピー性皮膚炎のある人または,その密接な接触者に対する緊急性のないワクチン接種.
  • 湿疹,熱傷,伝染性膿痂疹,水痘帯状疱疹ウイルス感染症,単純ヘルペスウイルス感染症,重度の座そう,広範囲に皮膚が剥がれた重度のおむつ皮膚炎,乾癬,ダリエ病(毛包性角化症)など他の剥離性皮膚疾患
  • 免疫機能不全(HIVまたはTNF阻害薬使用)患者または,その密接な接触者
  • 妊娠中または授乳中の女性,あるいはワクチン接種後28日以内に妊娠する可能性のある女性.
  • 1歳未満の家庭内接触者
  • 心臓リスク因子が3つ以上ある人
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高コレステロール血症
  • 一親等の親族に50歳代での心疾患がある
  • 喫煙
  • 以下のような緊急性のない状況ではワクチン接種をしてはならない:
  • 活動性眼疾患があり局所ステロイドでの治療を受けている
  • ワクチン接種当日に中等症~重症の疾患がある
警告
(定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある)
  • 中等症~重症の急性疾患患者では,発熱の有無にかかわらず,症状が解消するまで接種を延期する
  • 心筋心膜炎のリスクがあるため,18歳未満の青少年に対するACAM2000接種を考慮する場合は,警告に相当する.
  • 心リスク因子が3つ以上ある人に対しては,Jynneos接種に先立って心筋心膜炎のカウンセルを行う.
  • ACAM2000:不注意な接種や自己接種のリスク.
副作用
  • Jynneos
  • Jynneosワクチン接種(第1,2回,または追加接種)後の副反応率は,各回接種で同一.
  • もっとも多いのは注射部位の反応(痛み[85%],発赤[61%],腫脹[52%],硬結[46%],かゆみ[43%]),筋肉痛(43%),頭痛(35%),疲労(35%),悪心(17%),悪寒(10%)
  • 重症の副反応発症率はJynneos接種者で1.5%,プラセボ接種者で1.4%:Jynneos接種者の0.08%で,心臓副作用に起因する有害事象(重症例なし)が起こった.
  • トロポニン濃度上昇(正常値上限の2倍以上)が3,003接種中3例で報告されているが,ワクチン接種との因果関係は示されていない.
  • ベル麻痺と関連する可能性がある.
  • ACAM2000
  • 3人に1人が体調不良のために仕事,学校を休む,娯楽活動を中止したり,あるいは睡眠障害となった.
  • 心筋炎および心筋心膜炎(胸痛,トロポニン/心筋酵素上昇,心電図以上などの自他覚所見)が,天然痘ワクチン接種後1,000例に5.7例の割合で報告されている.
  • 種痘性湿疹(ワクシニア),ワクチン後脳症,進行性ワクシニア,および他のいくつかの致死的となりうる反応がまれではないため,注意を要する.
薬物相互作用
  • Jynneosと他のワクチンを併用したデータはない.
  • 他のほとんどのワクチンとは,時期を考えずに併用可能だろう.
  • ACAM200は,他のどの生ワクチン,不活化ワクチンとも併用してはならない.
  • 流行時には,最近のmRNA COVID-19ワクチン接種があったからという理由でJynneosまたはACAM2000接種を遅らせてはならない.間隔はまったくあけないでよい.
  • 既にJynneosまたはACAM2000接種を受けている場合は,mRNA COVID-19ワクチンまたはノババックス接種を少なくとも4週延期することを考慮する.
  • ACAM2000は,RPR結果を偽陽性とすることがある.陽性ならFTA抗体検査での確認が必要.
  • TSTが遅れても実際的な問題にはならない.Jynneosワクチン接種後に最低4週遅らすことは望ましい.

特別な注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • Jynneosは妊婦には禁忌でない;曝露前または曝露後ワクチン接種には,複製欠損ワクチンの方が複製能のあるワクチンより好ましい.
  • ヒトでのデータはないが,動物実験では胎児への有害作用は示されていない.
  • 人乳汁中にJynneosが分泌されるかは不明.Jynneos接種は授乳の禁忌ではない.
免疫機能不全/HIV
  • 天然痘ウイルスに曝露している場合も,ワクチン接種の絶対的な禁忌はない.
  • 重症免疫不全者が天然痘ウイルスに曝露した場合は,ワクチン接種の効果はないだろうが,ただちに抗ウイルス薬使用ができない場合でもJynneosは安全である.
  • 免疫システムが弱体化している人,その人と密接な接触のある人または家庭内接触者はACAM2000接種を受けてはならない.
  • Jynneos:HIV感染成人およびアトピー性皮膚炎成人における誘発性の局所的および全身的副作用の発現頻度は,一般的に,健康成人で観察される頻度と同様である

血清学検査

  • 免疫機能正常な被接種者にルーチンでは推奨されない
  • 免疫機能不全があるJynneos被接種者では,力価検査を考慮してもよい.
  • 予防に関連する要因として結果を解釈することはできない
  • 免疫機能正常者では,Jynneos2回コースの第2回接種後2週で完全に免疫化されると考えられる
  • 力価検査は,より毒性の強いオルソポックスウイルス(たとえば,痘瘡ウイルス,エムポックスウイルス)を扱う人でも考慮してよい.

コメント

  • Jynneosの2剤形
  • 1バイアル凍結液体(再構成なし)であり,長期間の至適保管温度は-90℃~-70℃.凍結乾燥タイプは2023年初頭には利用可能だろうが,FDAはまだ承認していない.
  • 温度が低いと保存可能期間は短くなる.
  • -25℃~-15℃で冷凍する;解凍後4週以内に使用する
  • 凍結乾燥抗原バイアル1本と希釈液バイアル1本(FDA承認2025)をセットにした2バイアルセットで保管可能
  • +2℃~+8℃で冷蔵保存
  • ACAM2000は-25℃~-15℃で長期保存可能.
  • 乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16(KMバイオロジクス):最小複製能のワクシニアウイルスワクチンで,日本では承認されており,小児および成人に利用可能となっている.
  • Dryvax(仔ウシリンパ液ワクチン)は現在では入手不可能.
  • 8500万本のAPSV(アベンティス Pasteur天然痘ワクチン/Wet Vax;アベンティス Pasteur):生,複製能のあるワクシニアウイルスワクチンで,1950年代に製造されたもので,いまだに効力があり,USSNSに保管されている.
  • CNJ-016(VIGIV:Emergent BioSolutions)は抗ワクシニア抗体を含む精製IgG分画であり,特に免疫不全者におけるACAM2000ワクシニアウイルスによる合併症(種痘性湿疹,市膿性ワクシニア,重症全身性ワクシニア)について承認されている.
  • 重症免疫機能不全者が天然痘ウイルスに曝露した場合の予防的使用として,VIGIVを考慮してもよい.
  • VIGIVは米国では市販されていない.
  • すべて戦略的国家備蓄に保管されている.
  • 各州への割り当ておよび他の公衆衛生機関への分配は,CDCが責任を負う.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 情報源
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2026 Life Science Publishing↑ page top
2026/03/31