日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

新生児ヘルペス  (2024/09/03 更新)


臨床状況

  • もっとも感染が多いのは周産期だが,感染は子宮内でも,出産後でも起こりうる.
  • 周産期感染に特異的な3病態
  • 皮膚・目・口(SEM)は,典型的には生後9~11日(範囲4~14日)に発症.
  • 播種性感染は,敗血症様症状,肝機能異常を呈し,生後9~11日(範囲4~14日)に発症する.
  • 中枢神経系(CNS感染)は生後16~17日(範囲10~21日)で発症する.乳児では1つの病態から他の病態へ進展することがある.
  • 子宮内感染では,小疱性または瘢痕化病巣,眼症状,小頭症,水頭症を呈する.
  • 活動性病変を有する母親から産まれた無症候の乳児の管理については,Pediatrics 131: e635, 2013参照.

診断/病原体

診断
  • 病巣組織,血液,脳脊髄液のPCRにより診断する.活動性ヘルペスの女性から生まれた無症候の新生児では,PCRのために角膜,鼻咽頭,口腔,肛門のスワブも採取する(PCRが使えない場合には,培養を行うが,時間がかかり感度が高いわけでもない).
  • 結果が出るまでの時間が短いためPCRが培養に取って代わった.
  • トランスアミナーゼの上昇は,播種性または中枢神経感染の疑いが大きい.
  • 活動性病変のある母親から経膣分娩または帝王切開で生まれた乳児の管理は,原発感染か二次性感染かによって異なる.すべての乳児で,少なくともPCRまたは培養のための表面スワブおよび血清HSV培養が必要である.検査結果を待つ間にアシクロビルを開始.全体のアルゴリズムはAAP Red Book参照.
病原体
  • 単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型

第一選択

  • SEM疾患では14日治療
  • 播種性感染およびCNS感染では21日治療
  • CNS感染では生後21日付近で脳脊髄液PCRを行うこと.陽性なら,さらに7日治療し,PCRを繰り返す.それでも陽性ならさらに7日治療
  • 治療後の抑制治療は再発を減少させ,予後を改善する.アシクロビル経口900mg/m2/日1日3回に分割・6カ月

第二選択

  • なし

抗微生物薬の適正使用

  • 活動性病変のある母親から生まれた乳児,小疱性病変,高トランスアミナーゼ血症,DIC,または原因不明の神経症状や脳脊髄液中の細胞増多症のある乳児では,病巣組織,血液,脳脊髄液のPCR結果が出るまでの間,アシクロビルによる経験的治療を行う.

コメント

  • 新生児ヘルペスの患児では,全例で眼科検査と,可能ならMRIによる神経画像検査を行う.
  • リスクスコアにより,播種性病変およびCNS病変について低リスクの乳児をはっきり同定することはできるが,表在性病変は評価していない:Pediatrics 148: e2021050052, 2021
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2024/09/02