日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

住血吸虫症  (2024/02/27 更新)
住血吸虫症,ビルハルツ住血吸虫,片山熱


臨床状況

  • 住血吸虫症:吸虫感染.
  • 宿主である巻貝から幼虫が放出された後,淡水中でのみ皮膚から侵入する.
  • 急性住血吸虫症:感染後4~8週に毒素血症により発熱,しばしば咳および好酸球増加症を伴う.
  • 臨床的にマラリア,腸チフスその他の熱帯性感染症に類似する.好酸球増加症が一般的に住血吸虫症を示すポイントである.
  • 旅行者や一時的滞在者で軽い感染を起こした場合は,慢性の経過とはならない.
  • スクリーニングの推奨については下記診断を参照
  • 脊髄を含めた中枢神経系が侵されることはまれ.
  • 旅行に関連した症例はほとんどすべてアフリカからのものである.
  • 慢性住血吸虫症:肝,膀胱,子宮頸部,子宮,卵管,腸の疾患.S. japonicum による脳病変.
  • 女性性器住血吸虫症(子宮頸部,子宮,卵管卵巣)は,おそらくもっとも放置されている婦人科疾患であり,サハラ以南のアフリカではHIV/AIDS伝播に補助的に関与している可能性がある:PLoS Negl Trop Dis 13: e0007025, 2019

診断/病原体

診断
  • 軽度の感染は血清学的に診断される(ELISA).卵は通常,便や尿中には存在しない.
  • 淡水の皮膚曝露があったアフリカからの帰国者には,全例血清学スクリーニングを行う.
  • 特定にはCDCのウエスタンブロットが必要.
  • 循環アノード抗原の簡易迅速検査(POCT)は,一部の流行地域でモニターのために使用可能
病原体
  • Schistosoma mansoni (マンソン住血吸虫)(肝臓腸管):南米,カリブ海諸国,アフリカに存在
  • S. intercalatumおよびS. gueenensis(アフリカ中西部)はS. mansoniのまれな変種
  • Schistosoma japonicum (日本住血吸虫)(肝臓腸管):アジアに存在
  • S. mekongi(東南アジア),S. malayi(マレーシア半島)はS. japonicumのまれな変種
  • Schistosoma haematobium (ビルハルツ住血吸虫)(泌尿生殖器):アフリカに存在

第一選択

  • S. mansoniS. hematobiumS. intercalatum
  • 初期治療後6~12週で生きた卵がある場合には,治療を繰り返す必要がある
  • S. japonicumS. mekongi
  • 急性毒血性住血吸虫症(片山熱):
  • 短期治療:高用量Prednisone症状消失後48時間まで±プラジカンテル 40~60mg/kg経口・同日に2回または3回・3~6日
  • 神経住血吸虫症による脊髄神経根障害
  • 注:軽度感染の旅行者では免疫反応が十分でないことがあり,1~2カ月後に卵が残存していなくても,経験的に再治療を行うことがある.
  • 不十分なデータながら,抗体価が治癒判定の指標となる可能性,治療による寄生虫の殺虫後に好酸球が増加する可能性がある.

第二選択

  • OxamniquineやMetrifonateなどの古い薬は現在では使用されない.

コメント

  • 再曝露の可能性がない旅行者や一時的滞在者に対しては,すべての種に対しプラジカンテル 60mg/kgを用いることもある.非標準的なプラジカンテル投与に関するレビュー:J Travel Med 2019; 26(7). pii: taz050
  • 急性毒血性住血吸虫症は,淡水での感染曝露から4~6週後の産卵開始に伴って発症する,免疫を介した反応である.
  • プラジカンテルは成熟した成虫にのみ有効,ステロイドが反応をコントロールするための第一選択.プラジカンテルの単独投与は急性病変を悪化させることがある.
  • ステロイドは血中プラジカンテル濃度を半分まで減少させる.
  • 移民での慢性疾患(肝線維症,閉塞性尿路疾患,膀胱がん,子宮頸部病変など)は,卵が存在しなければ薬物治療の必要はない.
  • プラジカンテルは1歳の小児に使用可能だが,錠剤は大きいため,飲み込みにくい.
  • WHOは第1期以後の妊婦での使用を推奨している.

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2024/02/26