日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

腸チフス,ワクチン  (2024/02/27 更新)


ワクチンの適応

ルーチン
  • 慢性保菌者の家族または密接な接触者
  • リスクのある検査施設勤務者
海外渡航
  • 発展途上国では,渡航先によって異なる.リスクは,滞在期間,食生活が乱れる頻度,地方および人里離れた地域への旅程,発症国の友人や親類を訪問する旅行で高まる.
投与量とスケジュール
商品名(製造元)
Vivotif (Emergent)
Typhim Vi (サノフィ Pasteur)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
腸チフスワクチン(経口,生,弱毒化:Ty21a)
腸チフスクチン(Vi カプセル多糖: ViCPS)
年齢
≧6歳
≧2歳
用量,経路
1カプセル経口1
0.5mL筋注
初回接種スケジュール(ルーチン)
0,2,4,6日目
1回接種
初回接種スケジュール(加速化)
なし
なし
第1回追加接種
5年後に,初回接種全スケジュールを繰り返し
2年後(米国外では3年後)
その後の追加接種
5年ごとに,初回接種全スケジュールを繰り返し
2年ごと
  1. 移送中あるいは家では,2~8℃で冷蔵しなければならない.食事の1時間前または3時間以上後に37℃以下の温度で冷たい液体とともに服用する.

有効性,予防効果持続期間/選択・互換性

効果と予防効果持続期間
  • 経口ワクチンも注射ワクチンも,流行地での試験では50%から80%予防効果を示した.流行地の住民は,環境中の非チフス性サルモネラ菌につねに暴露されているため,より長い予防効果持続が期待できる.
  • 大量の細菌を摂取すると,強力な免疫性があっても無効となる可能性がある
  • 経口腸チフスワクチンは,パラチフスBに対してはある程度の予防効果があるが,パラチフスAに対しては予防効果がない可能性がある
  • 抗菌薬耐性のS enterica serovar Typhi(特にパキスタンとインドにおけるXDR)およびパラチフスA検出率の増加により,ワクチン接種の必要性が高まっている.
  • 未接種の旅行者では,経口ワクチンによる予防効果が長く続く場合もあれば,続かない場合もある
選択・互換性
  • ViCPSまたはTy21a接種者は,過去に接種したワクチンが無効になった後,同じワクチンまたは別のワクチンを追加投与することができる
  • 渡航前にTy21aを接種できない場合,ViCPSを1回接種することができる

毒性

禁忌
  • ワクチン成分に対するアナフィラキシー歴のある者.
  • ViCPSは,Ty21aへの反応歴がある者に投与可能であり,Ty21aをViCPS反応者に投与することも可能.
警告
  • 定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある.
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず),あるいはTy21aについては,急性胃腸炎や発熱性疾患を併発している場合
副作用
  • 注射用ViCPS:しばしば中等度の注射部位の痛み,紅斑,硬結.過去の腸チフスワクチンでよくみられた発熱,倦怠感,嘔気などの全身反応は非常にまれ
  • Ty21a経口剤:嘔気,腹痛,筋けいれんは,まれではなく,時に嘔吐,発熱,下痢,頭痛を伴う.まれに,発疹または蕁麻疹.
薬物相互作用
  • 注射:ViCPS
  • 抗体含有製剤と同時または任意の間隔で投与可能
  • 経口:Vivotif
  • 生ワクチンを含む他のワクチン(経口コレラ生ワクチン[CVD 103-HgR;Vaxchora]を除く)と同時(または前後のどの時点でも)併用可能
  • ■Ty21aの初回投与は,Vaxchoraの8時間以上後でなければならない
  • 抗体含有製剤と同時(またはその前後のどの時点でも)併用可能
  • Ty21aはメフロキン,Chloroquine,またはアトバコン・プログアニルと同時に投与可能
  • Ty21aは,抗菌薬の最終投与から少なくとも3日後までは投与すべきでなく,また,可能ならば,抗菌薬はVivotifワクチン最終接種後3日以内には開始すべきでない.長時間作用型抗菌薬(例:AZM)については,より長い間隔を検討する必要がある
  • ■Ty21a とDOXYの投与は,24時間の間隔で十分であろう

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 妊娠のデータなし
  • 有用性がリスクを明らかに上回り,ViCPSを利用できない場合を除いて,Ty21aを避ける
  • 可能なら,ViCPSを妊娠第2期まで遅らせる
  • 妊娠可能な年齢の女性に対して,定期的な妊娠検査は推奨されない
  • ViCPSの投与は授乳の禁忌ではないが,Ty21aの投与は避ける
免疫不全/HIV
  • Ty21aは,免疫不全者またはコントロール不良HIV,およびCD4<200(小児:リンパ球<15%)のHIV感染者には,投与すべきではない.
  • 複製能のないViCPSが代替として利用可能であるため,Ty21aをHIV患者には推奨しないガイドラインもある.

血清学検査

  • いかなる状況下でも適応とはならない.

コメント

  • ViCPSはHepAとの混合ワクチンとして,米国以外の多くの国で利用可能
  • 次世代腸チフス結合型(通常は破傷風トキソイドを含む;TCV)ワクチン(TypbarTCV[Bharat Biotech]およびTYPHIBEV[Biological E. Limited])は,WHOにより事前承認され,リベリア,ネパール,パキスタン,サモア,ジンバブエで使用されている.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
  • 以下も参照
  • 腸チフス
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2024/02/26