日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Providencia 属-P. stuartii, P. rettgeri, P. alcalificiens  (2026/03/31 更新)
P. stuartiiP. rettgeriP. alcalifaciens


臨床状況

  • 尿,血液,創部培養から分離される
  • Providencia stuartii
  • Providencia rettgeri
  • Providencia alcalifaciens
  • 一般に複数の耐性機構をもつ院内病原菌である.
  • 耐性は種によって異なる
  • P. stuartiiは一般にもっとも耐性が強く,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生することが多い.さらに分離株の50%以上は,アミノグリコシド系薬,フルオロキノロン系薬にも耐性である
  • P. alcalifaciensおよびP. rustigianiiは,ペニシリン系薬および旧世代のセファロスポリン系薬に感受性のことが多い
  • P. rettgeriの感受性は,P. stuartiiP. alcalifaciensの中間である
  • Providencia属は,ポリミキシンに自然耐性
  • 特異的治療は,感染部位や重症度,患者の衰弱度,in vitroの抗菌薬感受性試験結果に従って行う

分類

  • 通性嫌気性グラム陰性桿菌

第一選択

  • 治療
  • 感受性のある株による合併症のない感染症(たとえば,尿路感染症)または重症度の低い感染症では,下表にあげた薬剤に加えて,
  • 感受性ある株であれば,STも選択肢となるが,耐性が多いため経験的治療の薬剤としての有用性は限られたものである.
  • Nitrofurantoinに対してProvidencia属は自然耐性であるため,合併症のない尿路感染症には使用してはならない.IPM/CSは他のカルバペネムより活性が低い.FOM経口は合併症のない尿路感染症での選択肢のひとつ(訳注:FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる)
検査結果
関与する状況要因
推奨される処方
コメント
培養でProvidencia属が陽性だったが,感受性試験結果が出ていない場合,経験的治療
地域のESBL率<10~15%
PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと

CTRX 1~2g静注24時間ごと

CFPM 1~2g静注8~12時間ごと
CPFX 400mg静注12時間ごと,または750mg経口12時間ごと
生命の危険がある感染症:MEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごとを考慮
地域のESBL率>15%
MEPM 1~2g静注8時間ごと
生命の危険がある感染症:MEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごとを考慮
in vitroでAZT,CTRX,CAZ,CFPM,PIPC/TAZに感性

PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと

CTRX 1~2g静注24時間ごと

CFPM 1~2g静注8時間ごと
CPFX 400mg静注12時間ごと,または750mg経口12時間ごと

ペニシリンアレルギーの場合:AZT 2g静注6~8時間ごとがひとつの選択肢
Providencia属が臨床的培養で検出された場合について,2023年IDSAガイダンスはAST結果に基づいて抗菌薬治療を選択することを推奨している.

しかし,AmpCに対する安定性がより大きいことから,菌量の大きい感染(たとえば,心内膜炎)または感染源コントロールが難しい場合(たとえば,CNS感染)ではCTRXよりもCFPMの使用を考慮する方が合理的.
AZT,CTRX,CTX,CAZ,またはCFPM(ESBL)に耐性,カルバペネム系に感性
ESBL産生の可能性
MEPM 1~2g静注8時間ごと,またはErtapenem 1g静注24時間ごと
感性であれば:CPFX 400mg静注1日2回または750mg経口1日2回,またはLVFX 750mg静注1日1回
  
カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬にin vitroで耐性
セリン型カルバペネマーゼ(たとえば,KPC)産生が示唆される
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,または
MEPM/Vaborbactam 4g3時間以上かけて静注8時間ごと
AZT/Avibactamも選択肢となる(用量は下記参照)
代表薬1剤のみでなく,すべてのカルバペネム系薬の感受性をin vitroで確認すること

感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される

これらの薬剤の耐性株出現に関する議論:Clin Infect Dis 68: 519, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e01551, 2018
上記の薬剤およびCAZ/Avibactam,MEPM/Vaborbactam,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系,STに耐性
メタロ・カルバペネマーゼ産生と同様のパターン
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g3時間以上かけて静注8時間ごと,または
AZT/Avibactam 2.67g(AZT 2g/Avibactam 0.67g)初回3時間以上かけて注入,次の投与間隔をおいて2g(AZT 1.5g/Avibactam 500mg)3時間以上かけて注入
または
CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される

第二選択

  • βラクタム薬に対する重症IgE媒介反応(たとえばアナフィラキシー,血管神経浮腫)がある場合,in vitroで感受性があれば,
  • AZT 2g静注6~8時間ごと
  • CPFX 400mg静注12時間ごとまたは750mg経口1日2回
  • LVFX 750mg静注または経口1日1回
  • ESBLおよび/またはAmpC産生株に対して:
  • CTLZ/TAZ 1.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,またはTemocillin 2g静注12時間ごと(入手可能な場合)
  • CFPM/Enmetazobactam 2.5g2時間以上かけて静注が最近FDAによりESBL産生菌を含む複雑性尿路感染症治療に承認された.
  • 欧州医薬品庁(EMA)は,複雑性尿路感染症,院内肺炎,人工呼吸器関連肺炎に承認.
  • in vitroでProvidencia属がMEPM/Vaborbactamを含むすべてのカルバペネム系薬に耐性で,同時にCAZ/Avibactam,フルオロキノロン系藥,ST,アミノグリコシド系藥に耐性の場合
  • 感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
  • メタロβラクタマーゼ(MBL)産生株
  • 処方はAZTがMBLによる加水分解に抵抗性であることに基づく.Avibactamは同時に存在するESBLおよびセリン型カルバペネマーゼによる分解からAZTを保護する
  • MBL産生株を含むカルバペネマーゼ産生株に対して活性がある.18歳以上の複雑性腹腔内感染症患者で治療選択肢が限られているか,代替選択肢がない場合でのMNZとの併用をFDAは承認している.複雑性腹腔内感染,院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎,腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症,好気性グラム陰性菌によるその他の感染症の患者で治療選択肢が限られている場合についてはEUでも承認されている(Lancet Infect Dis 25: 218, 2025Drugs 86: 79, 2026参照)
  • CFDC
  • FDAは以下の適応を承認した:腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症,院内細菌性肺炎,人工呼吸器関連細菌性肺炎.

抗微生物薬適正使用

抗菌薬選択において考慮すべきこと
  • ESBL
  • in vitroで感受性であっても臨床的治療失敗の報告があるため,PIPC/TAZは避ける(JAMA 320: 979, 2018
  • in vitroでフルオロキノロン系薬とアミノグリコシド系薬に同時に耐性のことが多い.アミノグリコシド系薬は毒性リスクがあるため,他に選択肢のない場合以外は避ける
  • Providencia属はポリミキシン(コリスチン,PL-B)に自然耐性.
  • Providencia属は通常Nitrofurantoinに耐性.

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2026/03/31