日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

COVID-19,多臓器炎症症候群(MIS-C,MIS-A)  (2022/09/27 更新)
COVID-19,MIS-C,MIS-A


臨床状況

  • 多臓器炎症症候群(MIS-C,MIS-A)はCOVID-19の感染後合併症であり,小児および21歳未満の青少年に認められる.年齢中央値8歳.
  • 通常,発症は急性感染の2~6週後だが,必ずしも急性感染が確認されるとは限らない.
  • 小児多臓器炎症症候群(MIS-C)(CDC HAN No. 432[2020年5月14日]).小児多臓器炎症症候群(PMIS-TS)とも呼ばれる.一時的にSARS-CoV-2と関連している.
  • CDCの症例定義
  • 年齢<21歳,発熱,臨床検査で炎症を認める,重症入院患者,多臓器に及ぶ:心臓,腎臓,呼吸器,血液,消化器,皮膚,神経系+他の診断がつかない+現在/直近のSARS-CoV-2検査陽性または症状発症の4週間以内にCOVID-19曝露あり.
  • もっとも多い症状
  • 発熱,腹痛,嘔吐,下痢
  • その他の症状:発疹,結膜炎,頭痛,頸部リンパ節腫脹,唇腫脹
  • ほとんど(60~80%)がSARS-CoV-2抗体陽性,一部(15~30%)はPCR陽性
  • 臨床検査上の異常
  • リンパ球減少,血小板減少,フェリチン,d-ダイマー,CRP,ESR,可溶性IL-2受容体,トランスアミナーゼ上昇
  • 多くは心臓病を併発し,トロポニンおよびBNPの上昇,機能低下,伝導異常を伴う.少数例だが冠動脈拡張が起こる.心エコー,心電図検査が推奨される.
  • 臨床的な表現型は,ショック症状から心臓病,川崎病様症状,炎症を伴う持続的な発熱,頭痛など広範囲にわたる.
  • 症状を引き起こす他の原因を除外する必要がある:小児が説明のつかない発熱をきたした場合に,MIC-Cと診断しがちな認知的バイアスの多くの例があり,治療の遅れにつながる.
  • デルタ変異株についての重要な注(2021年8月)
  • 重要な特徴は感染力が強く,ウイルス量が高いこと.
  • COVID-19に関する臨床的,疫学的知見,治療および診断的側面のほとんどは,デルタ株の出現以前に行われた研究に基づいており,デルタ株出現以前の論文に基づく推奨もその点を考慮して解釈する必要がある.もちろん,われわれは最新の知見に基づき,COVID-19に関する情報と推奨を更新し続ける予定である.
  • オミクロン変異株についての重要な注(2021年12月)
  • オミクロンの感染力はデルタよりも少なくとも2倍強い.初期のエビデンスからは,臨床症状の重症度は,特にワクチン接種完了者(mRNAをまず2回接種し,その後3回目を追加接種した人)ではデルタより低いことが示唆されているが,ワクチン未接種者に対する病原性は不明.

病原体

  • SARS CoV-2

第一選択

  • 至適治療についての決定的なデータやコンセンサスはない.
  • IVIG 2g/kgおよび/またはメチルプレドニゾロン2mg/kgが通常は第一選択治療
  • 観察研究によると,IVIGとステロイドの併用は,ステロイド単独よりも治療失敗の減少およびICU滞在期間の短縮に関連していた:JAMA 325:855, 2021
  • 傾向スコアを用いた第2の大規模観察研究では,IVIG+グルココルチコイドによる初期治療はIVIG単独に比べ,新規または持続的な心血管不全のリスク低下に関連することが示された(N Engl J Med 385: 23, 2021
  • 第3の観察研究では,処方間の優越性に関する確定的なエビデンスは得られなかったが,副次評価項目ではグルココルチコイド使用のほうが優れていた(N Engl J Med 385: 11, 2021).
  • 難治性症例:Anakinraまたはインフリキシマブを考慮
  • 全患者に低用量アスピリン.重症心臓病変には抗凝固治療を考慮する

第二選択

  • 強心薬と昇圧薬によるサポート,および必要ならばECMOを使用する.

コメント

  • 一般的に予後は良い
  • 血栓症のリスクは高いが,至適抗凝固治療は確立していない:Blood 138: 190, 2021
  • 心臓病を併発する患者には心エコー検査によるフォローアップが適応となる.<10%に冠動脈瘤.
  • 至適治療についての研究が必要
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