日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

COVID-19,SARS CoV-2  (2020/10/27 更新)
コロナウイルス,SARS CoV-2, COVID-19


最新情報

  • WHO SOLIDARITY試験の結果(未発表でピア・レビューを受けていない)はmedRxiv 2020年10月15日でみられる(要旨は下記コメント参照).
  • Regeneronの抗体カクテルについては,臨床試験に関するRegeneronのプレスリリースでみられる(さらなる議論についてはコメント参照).
  • COVID-19抗原検査の最新情報を追加(検査/診断を参照)

臨床状況

  • COVID-19の病態生理学,伝播,診断,治療に関する包括的な総説:JAMA 2020年7月10日
  • SARS-CoV-2は呼吸器コロナウイルスであり,COVID-19の原因となる
  • ウイルスの起源:SARS-CoV-2は2019年,中国武漢の動物市場から現れた.コウモリが宿主であり,動物の中間宿主からヒトへと伝播したと考えられている(進化の歴史についてはNat Microbiol 2020年7月28日参照).
感染伝播
  • ダイアモンドプリンセス号でのアウトブレイクの解析(MedRxiv,未発表,ピアレビューを受けていない)から,エアロゾル吸入が伝播の有力な経路である可能性が示唆されている.より包括的な疫学的解析から,伝播は濃厚接触により一般的に起こることが示唆されている(Emerg Infect Dis 2020年8月21日).
  • 川クルーズを含むクルーズ船を避ける.
  • 若者を中心とする夜明かしの行動で容易に伝播する:夜明かしキャンプ,参加者の年齢範囲中央値12歳,スタッフ17歳:11~17歳の年齢グループで44%が陽性(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 69: 1023, 2020).
  • 非常に伝播しやすい
  • ほとんどの状況で飛沫感染が主である.
  • 空気/エアロゾル感染はあり得るが,おそらくほとんどの場合主要な感染経路ではない(JAMA 2020年7月13日).ただしエアロゾル発生リスクがある処置からの感染はありうる.バス乗客間のSARS-CoV-2伝播から(JAMA Intern Med 2020年9月1日),密集した換気の悪い空間での空気感染の可能性が示唆される.
  • 媒介物による接触感染はあり得るが,主要な感染経路ではない
  • ウイルス排出のピークは発症の5~8時間前に生じる.下図参照(Nat Med 26: 672, 2020;図1cを許可を得て引用).

  • 平均潜伏期間は曝露後5日までと推定される(範囲4.1~7.0日,ただし最短では36時間).無症状の感染者からも伝播は起こりうる(症状発症前.上記参照).
  • 軽症から中等症のCOVID-19患者(患者の90%以上を占める)を対象とした詳細な研究からは,感染性ウイルスは発症後8日以降には分離されないことが示されている.無症状者と有症状者のウイルス量は診断時には同等だが,無症状者との接触では伝播の可能性が低いとのエビデンスもある.
  • 重症または重篤なCOVID-19患者からの確実性の高いデータでは,感染性ウイルスを排出する期間は発症後0~20日(中央値8日)であることが示されており,15日後には,感染性ウイルスの検出率は5%に落ちる.これらの最近のデータからは,入院患者での感染制御の重要性が示唆される.
  • 重症または重篤な患者では,一般に30日以上の入院と長期の在宅療養が必要であり,これらのデータからは典型的な患者の職場や地域への復帰に関する指針は示唆されない.軽症患者では,唾液および鼻咽頭分泌物のRT-PCRで測定されるウイルスRNAの排出は,発症日にピークがあり,約6日高値を保つが,2週目には大幅に減少し通常14日で終了する.
  • いくつかの大規模症例シリーズにおいて,鼻咽頭PCR検査陽性期間の最大値は,発症後43日,症状消失後28日であり,19%の患者では症状消失後2週でもPCR陽性であった.特異な例として,病状が長期にわたる患者でウイルスRNA排出が発症後95日続いた一例が報告されている.
予防/隔離
  • 予防法
  • 市中および医療施設でのSocial distancing,N95マスク,サージカルマスク,眼球保護に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシス(Lancet 395: 1973, 2020)は,それぞれがCOVID-19予防に有用であることを示している.
  • 頻繁に手を洗う(アルコールを含む消毒液および/または石けん,水)
  • 社会的責任
  • 人と距離をとる(Social distancing:1メートルでもいくらかは予防効果があるが,少なくとも1.8メートルが望ましい)
  • 人前に出るときはマスクをつける:鼻/呼吸器飛沫の拡散を防ぎ自分自身と他者を保護する.
  • 人混み,人が密集した場所を避ける.特に屋内(レストラン,バー,教会)-伝播の中心であることに変わりはない.
  • 咳エチケット(くしゃみや咳をするときは鼻や口を覆う)
  • 目,鼻,口に触れない
  • 特定の状況での活動再開および封じ込めの方法については,地域の指針に従う.
  • COVID-19陽性で有症状だが,自宅(またはホテル,宿泊施設)での自己療養を指示された患者は,次の場合には隔離を中止してよい:
  • 発症後10日,かつ解熱後(解熱薬を用いないで)24時間経過し,かつ他の症状が改善している
  • SARS-CoV-2のRT-PCR陽性後,無症状が続いている患者の場合:
  • 検査陽性から10日後
  • 自宅隔離の終了時期を決める方法として,検査に基づく方法は(特殊な状況,たとえば免疫不全の場合などを除き)現在では推奨されない.
  • 医療従事者
  • COVID-19患者を治療・看護する場合は個人防護具(PPE)をつける.
  • エアロゾル発生リスクのない処置を行う場合:N95マスクが望ましいが,サージカルマスクでもよい.顔面シールド,ガウン,手袋
  • 鼻咽頭スワブなどエアロゾル発生リスクのある処置を行う場合:N95マスクまたは電動ファン付き呼吸用防護具(PAPR),顔面シールド,ガウン,手袋
  • 軽症/中等症:発症後10日+(解熱薬を使用しないで)解熱後24時間経過+症状改善
  • 重症:発症後20日+(解熱薬を使用しないで)解熱後24時間経過+症状改善
  • ワクチン開発・供給:ワクチン開発および臨床試験の概要についてはCOVID-19-予防参照.
臨床症状
  • 平均潜伏期間は曝露後~5日(範囲4.1~7.0日)と推測されるが,最短では36時間.
  • 症状
  • 頭痛,関節痛/筋肉痛,倦怠感,発熱,咳,息切れ,味覚および/または嗅覚障害,悪心/嘔吐,下痢,咽頭痛,「ぼんやりした思考」,せん妄
  • 前駆症状が1週間から10日続き,どの時点からでも息切れが起こるが,第2週に起こることが多い.
  • 平均8日で呼吸困難に進行し,9日で肺炎/肺臓炎が発症する.
  • 重要なバイタルサイン(トリアージ):体温>38℃(30.7%),酸素飽和度<90%(20.4%),心拍数>100回/分(43.1%)
  • 約15%の患者は重症化し,5%は人工呼吸器が必要になる.
  • 関連する併存疾患/リスク因子
  • もっとも多い:高血圧(56.6%),肥満(41.7%),糖尿病(33.8%)
  • リスク因子:
  • 予後不良:高齢(>65歳),高SOFAスコアおよびDダイマー>1μg/mL(レトロスペクティブコホート研究:Lancet 395: 1054, 2020
  • 入院時の赤血球分布幅高値(RDW>14.5%)が,死亡の相対リスクと有意に相関した.コホート全体(n=1641)でのRRは2.73であり,50歳未満の患者では最も高かった(RR 5.25):JAMA OPen Network 2020年9月23日
  • 重症化に関連することが多い他の疾患:心筋炎,心不全,心筋梗塞,脳卒中,血栓塞栓症,急性腎障害,ARDS,多臓器不全
  • 臨床経過
  • 軽症/中等症(外来患者):健康な若年成人であっても経過が長引くことがある.2020年3月から6月にかけて170例の有症状成人を観察した結果では,SARS-CoV-2のRT-PCR陽性から14~21日後,35%(18~34歳では20%)は通常の健康状態に回復していなかった(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 69: 993, 2020).
  • 米国での死亡率を下表に示す:
年齢(歳)
1000人あたりの死亡率
<18
0.4
18~29
1.1
30~39
3.5
40~49
8.6
50~64
29.7
65~74
105.0
75~84
210.5
85以上
304.9

検査/診断
  • 無症候だが,SARS-CoV-2への最近の明らかな接触があるまたは疑われる者(伝播制御のため)
  • COVID-19に該当する徴候または症状のある者
  • 無症候で,SARS-CoV-2への明らかな曝露やその疑いもないが,感染が急速に広がりうる特別な環境にある者(たとえば長期療養施設,刑務所/拘留施設,ホームレスシェルター,その他の集合作業所や生活環境)
  • 感染解消の確認検査が必要な一部の状況にある者(たとえば,医療従事者や免疫不全者が早期に職場復帰するための検査に基づく方法)
  • SARS-CoV-2の公衆衛生サーベイランスを目的とした個人に対する検査
  • RT-PCRおよび核酸増幅検査
  • 検体:鼻咽頭スワブが好ましい(他の検体の意義については,上記CDCガイドラインおよびJAMA 323: 1843, 2020参照).
  • 検査キット:米国FDAは,次々と開発されるSARS-CoV-2/COVID-19診断検査について緊急時使用(EUA)レターを発行している.検査の正確性や信頼性には大きなばらつきがある.現状の詳細についてはFDA緊急時使用リストを参照.
  • 抗原検査は,スワブにより鼻腔より採取された検体からウイルスタンパク断片を検出する.
  • 鼻腔または鼻咽頭スワブ検体を用いて行われる抗原検査は,比較的安価,迅速に行えるpoint of care検査であり,高リスクの状況におけるスクリーニング,COVID-19症例への明らかな接触があった者の感染診断,有症状者における感染診断に有用である.感度はRT-PCRより低いが,特異度は高い.迅速抗原検査は,ウイルス量が一般にもっとも高い感染初期に行うことで,もっとも感度が良くなる.

治療-第一選択

重症例への対応も参照
低酸素血症がある患者
  • 成人用量(体重>40kg):初回200mg静注・1日目,その後維持用量100mg静注1日1回
  • 各回30~120分以上かけて静注
  • 人工呼吸器/ECMO非使用なら5日.5日までに臨床的改善がみられなければ,10日まで延長
  • 人工呼吸器/ECMO使用患者では10日治療
  • 小児用量(体重3.5~40kg):初回5mg/kg・1日目,その後維持用量2.5mg/kg
  • 人工呼吸器/ECMO非使用なら5日.5日までに臨床的改善がみられなければ,10日まで延長
  • 人工呼吸器/ECMO使用患者では10日治療
  • デキサメタゾン(コメント参照)
  • 酸素吸入または人工呼吸器使用患者では,6mg1日1回静注または経口・10日
  • 酸素吸入または人工呼吸器が必要でない患者では使用しない:有用性がなく,有害な可能性がある(コメント参照)
  • 有効性が証明された他の治療はない.可能ならランダム化臨床試験への参加が強く推奨される.
低酸素症がない患者
  • 支持的治療

治療-第二選択

  • なし

治療-重症例への対応

  • 輸液:調整晶質液
  • 昇圧薬:ノルエピネフリン>バゾプレシン/エピネフリン,心原性ショック:ドブタミン,ドブタミン以外
  • ステロイド
  • 難治性ショック:低用量ヒドロコルチゾンを考慮する
  • デキサメタゾン:第一選択参照
  • 抗炎症薬:アセトアミノフェンおよび/またはイブプロフェン
  • SARS-CoV-2に対する抗ウイルス治療:レムデシビル(上記第一選択参照)
  • 細菌性または真菌性重複感染
  • ■2019年12月25日~2020年3月31日までの3448例の入院患者を対象とした28研究(中国22,米国2,英国1,スペイン1,シンガポール1,タイ1)のメタアナリシス(Clin Microbiol Infect 2020年7月22日):細菌感染率は全体で7.1%であり,発症時の重複感染例は3.5%,経過中に二次性の細菌感染を起こした例は15.5%,重症患者および死亡例での感染率はそれぞれ8.1%,11.6%だった.71%の患者は全身性の抗菌薬治療を受けていた.感染患者で同定された細菌種(n=41)で多くみられたものは,Mycoplasma属(29.3%),H. influenzae(19.5%),P. aeruginosa(12.2%),腸内細菌科(30%)だった.
  • ■2020年3月1日~2020年4月28日にニューヨーク市で入院した4267例を対象にした単施設での研究(Infect Control Hosp Epidemiol 2020年7月24日):細菌および真菌の感染率は全体で3.6%であり,46%は呼吸器のみ,40%は血液のみ,14%は両方への感染だった.呼吸器検体培養陽性患者の95%は挿管されていた.細菌または真菌重複感染があった患者の死亡率は57%であり,28%は研究発表時点でも入院していた.もっとも多かった分離種はS. aureus(呼吸器44%,血液30%),P. aeruginosa(呼吸器16%,血液6%),Klebsiella属(呼吸器10%,血液3%),Enterobacter属(呼吸器8%,血液3%),E. coli(呼吸器4%,血液7%),S. epidermidis(血液12%),Streptococcus属(血液12%),Enterococcus属(血液7%)であった.カンジダ血症は8例,肺アスペルギルス症は1例であった.COVID感染患者の71%は,重複感染の有無にかかわらず抗菌薬治療を受けていた.腸内細菌科の抗菌薬感受性の大幅な低下が観察された.
  • 経験的抗菌薬治療
  • ・考慮することは理にかなっているが,上記のデータからは,細菌性重複感染が起こるのは少数例のみであることが示唆される.38病院の入院患者1705例を対象としたコホート研究では,細菌性重複感染の有病率は低かった(Clin Infect Dis 2020年8月21日).
  • ・開始した場合は2~3日後に再評価し,臨床状態や微生物学状況に基づき,適正に抗菌薬を調整または中断する.

コメント

  • WHO SOLIDARITY試験では,2020年3月22日~10月4日の間に,30カ国(米国を除く)の405施設からCOVID-19患者11266例が登録され,以下の5群に分けられた:レムデシビル群,ヒドロキシクロロキン群,ロピナビル・リトナビル群,インターフェロンβ1a群,地域の標準的治療群.28日死亡率,人工呼吸器を使用していなかった患者の人工呼吸器開始,退院までの時間について,いずれの試験薬でも地域の標準的治療に比べ減少はみられなかった.SOLIDARITYおよびレムデシビルに関する3つの既発表の研究をメタ解析した結果では,低リスク患者(すなわち人工呼吸器を必要としない患者)での死亡率低下が示唆された(相対リスク(RR)0.80[95%CI 0.63~1.01],全体でのRRは0.91[95%CI 0.79~1.05]).いずれの処方でも人工呼吸器使用患者での有効性は示唆すらされず,治療は早いほどよいことが示唆された.この試験の大きな限界として,試験デザインがオープンラベルであること,ランダム化前の罹病期間に関する情報がないこと,405施設での標準的治療に大きなばらつきがあった可能性(試験薬以外の薬剤[たとえば抗凝固薬,試験薬以外の抗ウイルス薬,抗IL-6薬,ステロイド,試験薬以外のインターフェロン,回復期血漿など]が影響した可能性など)があげられる.
  • レムデシビル
  • 1つのプラセボ対照ランダム化試験で有効性が示されており,入院患者の回復までの時間をプラセボより短縮させた(N Engl J Med 2020年5月22日).NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の出資による,1059例を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験(NCT04280705)では,回復までの期間中央値はレムデシビル群で11日,プラセボ群で15日だった(p<0.001).副次評価項目である臨床的改善のオッズ比も,15日目の診察でレムデシビル群の方がプラセボ群より高かった(844例において改善のオッズ比1.50,95%CI 1.18~1.91,p=0.001).14日死亡率はレムデシビル群で7.1%,プラセボ群で11.9%であり(1059例において死亡のハザード比0.70,95%CI 0.47~1.04),生存率改善も示唆された.有害事象の発現率は同程度であった.サブグループ解析では,人工呼吸器やECMO治療を受けている患者を除く多重サブグループ解析で有用性が示唆されたことから,これらの進行した患者では有効性がないことが示唆された.
  • レムデシビルの5日治療と10日治療の有効性は,人工呼吸器が必要でないCOVID重症患者においては同等だった(N Engl J Med 2020年5月27日
  • 中等症のCOVID-19入院患者(胸部X線で浸潤あり,室内気での酸素飽和度>94%)を対象に,レムデシビル10日または5日投与と標準治療を比較したランダム化オープンラベル試験では,7ポイントの順序尺度による臨床状態において,標準治療と10日投与の間で有意な差はみられなかった.標準治療と5日投与の間には改善状態にわずかな差がみられたが,筆者らはこの臨床的意義は不明としている(JAMA 2020年8月21日).
  • Gilead社のプレスリリース:レムデシビル5日治療を受けた中等症COVID-19患者(酸素レベル低下なしの肺炎)では,標準的ケアに比べ大きな臨床的改善が示された.
  • NIHのガイドラインによれば,薬剤が不足している場合,レムデシビルは補助的酸素治療を必要とする入院患者,ただし高流量酸素,非侵襲的換気,人工呼吸,ECMOは必要としない場合に優先的に用いる.
  • デキサメタゾン
  • オープンラベルランダム化比較試験で有効性が示された
  • ■オープンラベルランダム化比較試験RECOVERY試験N Engl J Med 2020年7月17日)では,デキサメタゾン6mg1日1回・10日まで投与(n=2104)と,通常治療(n=4321)が比較された結果,28日死亡率はデキサメタゾン群の方が通常治療群より低いことが示された(22.9% vs 25.7%,年齢調整RR 0.83[95%CI 0.75~0.93],p<0.001).デキサメタゾンにより,侵襲的人工呼吸使用患者での死亡率(29.3% vs 41.4%,RR 0.64[0.51~0.81]),および侵襲的人工呼吸は不使用だが酸素吸入を受けていた患者での死亡率(23.3% vs 26.2%,RR 0.82[0.72~0.94])は低下したが,ランダム化時に呼吸補助を受けていなかった患者での死亡率は低下しなかった(17.8% vs 14.0%,RR 1.19[0.91~1.55]).デキサメタゾンは,通常治療よりも入院日数短縮(中央値12日 vs 13日),28日以内の退院確率向上(RR 1.10[1.03~1.17])に関連し,この効果はベースライン時の人工呼吸器使用患者で最大だった.ベースライン時の人工呼吸器不使用患者では,事前に規定された副次評価項目である,侵襲的人工呼吸使用または死亡の複合へと悪化した例はデキサメタゾン治療群で少なく(RR 0.92[0.84~1.01]),この効果はランダム化時点で酸素吸入を受けていた患者でより高かった.
  • ■重症COVID-19患者に対しステロイドを用いた最近のランダム化比較試験7件(デキサメタゾン3件,ヒドロコルチゾン3件,メチルプレドニゾロン1件)のプロスペクティブメタアナリシスでは,全身性コルチコステロイド治療を受けた患者で28日生存率の改善がみられた(オッズ比0.66[95%CI 0.53~0.82]).生存率改善は主にデキサメタゾンの研究によるものであった(JAMA 2020年9月2日).
  • 回復期血漿
  • 有効性は証明されていない
  • FDAは緊急時使用許可(EUA)承認を中断し,その24時間後に,35322例を対象とした以下の非対照非ランダム化試験に基づきEUAを発出した.
  • 35322例のCOVID-19入院患者を対象とした,Pre-printでピアレビューを受けていない非対照非ランダム化試験では,回復期血漿および高力価抗体(低,中等,高に層別化)を含む血漿のより早期の使用(診断後3日以内 vs >4日)は,7日および30日死亡率の改善に関連した.この結果は期待のもてるものだが,研究には多くの限界があり,COVID-19治療での回復期血漿の有効性を確定することはできない.第一のもっとも大きな限界は,非ランダム化観察研究のデザインであり対照群を欠いていることである.また,研究期間中の死亡率における長期の変動,組み入れられた患者の不均一性,アウトカムに影響を及ぼす可能性のある併用薬の使用もあり,レムデシビルとデキサメタゾンによる現在の標準的治療まで一般化できるかは不確実である.
  • 小規模で統計学的検出力の小さいオープンラベルランダム化比較試験(JAMA 324: 1, 2020)において,標準治療+回復期血漿(n=52)と,対照として標準治療のみ(n=51)が比較され,主要評価項目である28日での臨床的改善率について統計学的有意差は示されなかった(回復期血漿群51.9%,対照群43.1%,群間差8.8%[95%CI -10.4~28.0],HR 1.40[0.79~2.49],p=0.26).臨床的改善率は,重症患者では回復期血漿群91.3%(21/23例),対照群68.2%(15/22例)であり(HR 2.15[1.07~4.32],p=0.03),生命の危険のあった患者ではそれぞれ20.7%(6/29例),24.1%(7/29例)(HR 0.88[0.30~2.63],p=0.83)であった.28日での死亡率に統計学的有意差は示されなかった(15.7% vs 24.0%,OR 0.65[0.29~1.46],p=0.30).回復期血漿群は対照群と比べ,72時間でのPCRの陰性化と関連した(87.2% vs 37.5%,OR 11.39[3.91~33.18],p<0.001).
  • 回復期血漿治療を受けた5000例以上のCOVID-19患者を対象とした症例シリーズ(J Clin Invest 130: 2757, 2020)では,投与後4時間以内の重大な有害事象の発現率は<1%であった.
  • REGN-CoV2(Regeneron)
  • 2つのモノクローナル抗体(REGN10933およびREGN10987)の合剤であり,SARS-CoV2のスパイクタンパクの2つの領域に特異的に結合し,ウイルスの感染力を阻害するようにデザインされている.
  • COVID-19外来患者を対象としたREGN-CoV2の第I/II/III相試験結果をまとめたデータが,2020年9月29日に発表された(ピア・レビューを受けていない).
  • ・275例が登録され,REGN-CoV2の8g(高用量)投与群,2.4g(低用量)投与群,プラセボ投与群に1:1:1にランダム化された.
  • ・対象患者は登録時の血清学的評価(血清陽性または陰性)により層別化された:45%の患者が血清陽性,41%が血清陰性であり,14%は血清学的状態が不明のため「その他」とされた.
  • ・血清学的状態はベースラインのウイルス量と高度に相関しており,血清陰性患者のベースラインウイルス量は有意に高かった(p<0.0001).
  • ・プラセボ群では,血清陽性患者における症状消失までの期間は7日だったのに対し,血清陰性患者では13日であった.
  • ・7日間での鼻咽頭ウイルス量の変化:高用量群の血清陰性患者では,プラセボ群に比べウイルス量低下が0.60log10コピー/mL大きかったのに対し,低用量群のプラセボ群に対するウイルス量低下は0.51log10コピー/mLであった.ベースラインでのウイルス量が高いほど,REGN-CoV2治療7日でのウイルス量低下は大きかった.
  • ・血清陰性患者では,症状軽快(症状が軽度となる,または消失と定義)までの時間中央値は,プラセボ群13日,高用量群8日,低用量群6日であった.症状軽快までの時間については,ベースラインでのウイルス量が高い患者でもっとも有用性が高かった.
  • ・重大な副作用は,プラセボ群2例,低用量群1例でみられた.高用量群では0例だった.試験中での死亡はなかった.
  • (トランプ大統領は,高用量REGN-CoV2+レムデシビル+デキサメタゾンの投与を受けた)
  • IL-6受容体阻害薬
  • 有効性は証明されていない
  • サリルマブ:Regeneron PharmaceuticalsおよびSanofiからのプレスリリースによれば,米国での第III相試験において,サリルマブ+最適支持治療は最適支持治療のみ(プラセボ)に比べ,一次および二次エンドポイントを達成しなかった.
  • トリシズマブ:Rocheからのプレスリリースによれば,重症COVID-19関連肺炎で入院した成人患者を対象とした第III相試験において,トシリズマブは一次エンドポイントを達成しなかった.一次エンドポイントは,補助的酸素治療,集中治療および/または呼吸器使用の必要性に基づく7領域の順序尺度によって測定された臨床状況であった.
  • Chloroquineまたはヒドロキシクロロキン±AZM
  • 有効性を支持するデータはなく,重度の不整脈の可能性があるため,どのような状況でも推奨されない.
  • 外来患者,軽症,曝露後予防
  • ・COVID-19と確定診断され症状がある非入院患者[58%],または発症の4日以内に高リスクの曝露がありCOVID-19の可能性が高い患者計491例を対象とした二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(NCT04308668)では,5日間のヒドロキシクロロキンによる重症化の有意な減少は示されなかった(Ann Intern Med online 2020年7月16日).
  • ・ヒドロキシクロロキンに関する二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(N Engl J Med 383: 517, 2020)では,曝露後予防としてのヒドロキシクロロキンの有効性は示されなかった.
  • 入院患者,軽症~中等症:
  • ・COVID-19疑いまたは確定診断され,補助的酸素治療を受けていないか最大4L/分の補助的酸素治療を受けている入院患者を対象とした多施設ランダム化オープンラベル試験において,ヒドロキシクロロキン単独またはヒドロキシクロロキン+AZMは標準治療に比べ,7レベルの順序尺度で評価される15日での臨床状態を改善させなかった.ヒドロキシクロロキン±AZM群では,QTc延長および肝酵素値上昇がより多くみられた(N Engl J Med 2020年7月23日).
  • 入院患者,重症
  • RECOVERY試験(NCT04381936)では,1542例がヒドロキシクロロキン群,3132例が通常治療のみの群にランダム化されたが,COVID-19入院患者における臨床的有用性がみられなかったため,ヒドロキシクロロキン群への登録が中止された.主要評価項目である28日死亡率に有意差はみられず(ヒドロキシクロロキン群25.7% vs 通常治療群23.5%,HR 1.11[95%CI 0.98~1.26],p=0.10),入院期間やその他のアウトカムにおける有用性のエビデンスも示されなかった.
  • ・ブラジルでの研究(JAMA Netw Open 3: e208857, 2020)では,重症COVID-19患者81例を対象に,Chloroquine diphosphate 2用量が比較されたが,毒性のため早期に中止された:2例に心室性不整脈が発現し(どちらも高用量群),全体の15%(低用量群の11%,高用量群の18%)にQTc延長>500msecが発現した.
  • シチジンヌクレオシドアナログ
  • EIDD-1931:SARS-CoV-2,MERS-CoV,SARS-CoV,Bat-CoV group 2b/2cなどに広い抗ウイルス活性をもつ.レムデシビルに耐性変異をもつコロナウイルスにも有効.現在,COVID-19患者に対する第I相試験に入っている.
  • EIDD-2801:5'位がイソプロピルエステルである以外はEIDD-1931と同様の化合物.SARS-CoVおよびMERS-CoV感染マウスモデルでは,ウイルス力価の低下,体重減少の抑制,呼吸機能の改善がみられた.Sci Transl Med 12: eabb5883, 2020
  • HIVプロテアーゼ阻害薬
  • 臨床的有用性は示されていない.
  • ロピナビル・リトナビル
  • ・軽症~中等症COVID-19患者を対象としたオープンラベル第II相ランダム化比較試験では,3剤併用治療群(86例:ロピナビル・リトナビル400mg/100mg+リバビリン400mg12時間ごと+インターフェロンβ1b800万単位を隔日3回まで投与・14日)と,単剤治療群(41例:ロピナビル・リトナビル400mg/100mg12時間ごとのみ・14日)が比較され,併用治療群の方がウイルス量が検出不可になるまでの期間が早く(7日 vs 12日),臨床的改善までの期間も短かった(4日 vs 8日).いずれの群でも死亡はなかった.
  • ダルナビル:in vitroでの活性はなく,有効性のエビデンスもまったくない.使用しないこと(Johnson & Johnsonの情報).
  • インターフェロンβ
  • 有効性は証明されていない
  • Synairgenからのプレスリリース(7月20日)によれば,吸入インターフェロンβに関するプラセボ対照第II相試験は有望な結果であった.
  • 抗凝固薬
  • ・4389例において抗凝固治療(AC)なしと比較した結果,治療的および予防的ACは院内死亡率低下に関連した(それぞれaHR=0.53[95%CI 0.45~0.62],aHR=0.50[95%CI 0.45~0.57]).
  • ・挿管も減少した(それぞれ0.69[0.51~0.94],0.72[0.58~0.89]).
  • ・入院から48時間以内にACを開始した場合,治療的ACと予防的ACの間に統計的有意差はみられなかった.
  • ・89例(2%)に,医師の判定による大出血が認められた:治療的AC群では27/900例(3.0%),予防的AC群では33/1959例(1.7%),ACなしの群では29/1530例(1.9%)だった.
  • 注目される臨床試験
  • ACTT-2(NCT04401579)では,COVID-19入院患者を対象に,ヤヌスキナーゼ阻害薬バリシチニブとレムデシビルの併用が,レムデシビル単独と比較される予定である.
  • ACTT-3(NCT04492475)では,COVID-19入院患者を対象に,インターフェロンβ1aとレムデシビルの併用が,レムデシビル単独と比較される予定である.
  • BLAZE-1(NCT014427501)では,軽症~中等症COVID-19外来患者を対象に,静注LY3819253(LY-CoV555:SARS-CoV-2スパイクタンパクに対する中和IgG1モノクローナル抗体)がプラセボと比較される予定である.暫定的解析に関するLillyのプレスリリースでは,プラセボに比べ,治療開始前からのウイルス量変化,入院・救急部受診の減少を伴う臨床的有用性が示唆されている.現在,研究は安全性評価のため中断されている.
  • 評価中の他の治療選択肢
  • 臨床試験の現状についてはClinicalTrials.gov(検索語=COVID-19)を参照
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2020/10/28
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