日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

黄熱,ワクチン  (2026/04/07 更新)


ワクチンの適応

標準コース(ルーチン)
  • 検査施設の職員
海外渡航
  • 自己防衛
  • 短期および長期滞在の渡航先
  • 渡航先の国が黄熱ウイルス(YFV)感染リスクを有する場合
  • 渡航先の地域にはリスクがないが,その国の他の地域にはYFV感染リスクがあり,滞在中にこれらの危険地域へ行く可能性がある場合(旅程が確定していない場合)
  • YFV感染リスクのある国の都市部に居住しているネイティブで,農村地域に渡航する場合
  • 法律で義務付けられているワクチン接種
  • 入国の際に全旅行者がワクチン接種の証明を必要とする国がある.その他の国では,入国前6日以内にYFVの感染リスクのある国に滞在または通過した旅行者に対し,ワクチン接種の証明が要求される.
  • 目的は,感染の国際的蔓延を防ぐため,ウイルスを媒介する蚊のいる国(現在YFVの感染リスクがない国でも)を,ウイルス感染した旅行者によってYFVが輸入されたり拡散するリスクから守ることである.
  • WHOの国別黄熱ワクチン入国要件(2022年)は一部の国では時代遅れとなっている.
  • 注:YFワクチン接種の入国要件を設けていない国があるとしても,その国にYFV感染のリスクが存在していないことを意味するわけではない.
  • これまで米国では,旅行者や帰国した米国市民に対し,黄熱ワクチンの接種を入国要件としたことはない.
  • WHOおよびCDCは,黄熱ワクチンの要請と推奨を公的に毎年更新し発表しているが,複雑である.
  • 以下のCDCウェブサイトより,国別入国要件と推奨事項を参照のこと.
  • 指定された黄熱ワクチンセンターのみが,旅行者のワクチン接種の証明に必要なICVP(国際予防接種証明書)の発行が可能.
  • ワクチン接種が禁忌であるか,またはワクチン接種を拒否する旅行者については,黄熱感染が著しい地域へ渡航すべきでない.また,渡航計画を変更するよう勧告されるべきである.
用量とスケジュール
  • StamarilとYF-VAXのワクチン製剤は,どちらもサノフィによって製造されている.
  • これらはほぼ同一の17D-204ウイルス株由来の弱毒生黄熱ワクチンであり,有効性と安全性は同等.主な違いは使用が承認されている地域とわずかな成分の違い.
  • YF-Vaxは北米とブラジルでのみ入手可能で,Stamarilは世界中のほとんどの国で使用されている.
商品名(製造元)
YF-Vax(サノフィ pasteur)州の指定センター1のみで使用可能
ワクチン(タイプ,CDC略語)
弱毒生ワクチン(YF)
年齢
>生後9ヵ月
用量,経路
0.5 ml皮下注
初回接種スケジュール-ルーチン
1回接種
初回接種スケジュール-追加接種
なし
第1回追加接種
10年という例がある2
その後の追加接種
10年という例がある2
  1. CDCは予防接種センターの指定権限を各州に委譲している.CDCが直接指定するのは,一部の連邦政府および軍のセンターのみ.
  2. 西アフリカおよび高リスク地域以外の低リスクの黄熱病流行地域に短期滞在する旅行者は,米国CDCにより長期間の免疫があると考えられているため,追加接種の必要はない.

追加接種は,10年の間隔で行うこと

YFリスク地域に長期滞在する人

西アフリカのような高リスク地域に滞在する人

現在症例多発の地域に滞在する人

最初のYFワクチン接種時にHIVに感染していた人

検査施設の職員

初回接種時に妊娠していた女性

最初のワクチン接種が不十分だった(分割接種を含む)可能性のある人

免疫不全者(下記参照)

さらなる追加接種が考慮されるのはHIV感染者(CD4数にかかわらず)と検査施設職員だけ


有効性,予防効果持続期間/選択・互換性

  • 健康な旅行者であれば,初回接種でほぼ100%の予防効果がある.
  • ACIPは,ワクチン接種者の92%が10年後,80%が20年後に血清陽性を示すと推断した.
  • 米国人旅行者を対象とした小規模コホートでは,約30年にわたる検査において,ワクチン単回接種後10年以上経過後の血清陽性率はわずか85%であったのに対し,接種後<10年では血清陽性率95%であった.
  • 非常に健康な対象集団において,米軍のワクチン接種者では,接種後少なくとも19年後の血清陽性率は95%であり,30~39年後の血清陽性率は91%以上であった.軍人では,一般人と同様の頻度での追加接種は必要ないことがある.
  • 最近明らかになったデータからすると,乳児および幼児期にワクチン接種した人では,単独ワクチン接種には長期間の予防効果はないかもしれない.
  • このような人では,曝露リスクが低い場合でも,ワクチン再接種を考慮してもよいだろう.
  • もっとも確実な予防としては,リスクを嫌う旅行者では,高レベルの予防を確実にするために,10年後に全量の追加接種が必要かもしれない.

毒性

禁忌
  • 生後<6ヵ月の乳児
  • 生後<9ヵ月の乳児に授乳中の女性
  • 卵/卵タンパクに対するアナフィラキシー反応の既往(インフルエンザワクチンよりも卵タンパク含有量が多い)
  • 免疫機能の異常を伴う胸腺疾患(ただし,胸腺摘出術を伴わないもの)
  • 原発性免疫不全症,悪性新生物,移植
  • TNF阻害剤,リツキシマブ,高用量ステロイド,化学療法などの免疫抑制療法および免疫調節療法
  • 重症免疫不全,コントロールされていないHIV,CD4<200のHIV患者(小児ではリンパ球<15%)
警告
(定義:一般にワクチン接種は延期すべきだが,副反応のリスクよりもワクチンによる予防の有用性が上回る場合には適応となることがある)
  • 中等症または重症急性患者(発熱の有無にかかわらず)
  • 旅程に真の感染リスクがある場合,または入国要件がある場合にのみ,ワクチンを接種する.
  • 高リスク地域への渡航が避けられない場合(脳炎のリスク)を除いて,6~8ヵ月の乳児には接種してはならない.
  • 年齢≧60歳の旅行者(特に初回接種者)に対しては,渡航が避けられない場合,渡航先特有のリスクを勘案し,ワクチン接種のリスクと有用性を検討したうえで,決定する必要がある.
  • 患者に,ワクチン接種後最低2週間は献血をしてはならないと伝えること.
  • 輸血関連感染症のリスクは非常に低いがゼロではなく,免疫不全のあるレシピエントでは致命的になることがある(Lancet Microbe 4: e711, 2023).
副作用
  • 注射部位に限局痛,腫脹,紅斑,腫瘤,温熱が最大1週間程度出現することがある.
  • 全身反応(ワクチン被接種者の10~30%)は概して軽度で,2~3日で発症し,5~10日間持続する.
  • 重篤な有害事象
  • 黄熱ワクチン関連向神経疾患(YEL-AND)には,髄膜脳炎,急性播種性脳脊髄炎,ギラン・バレー症候群があり,重篤だが死亡することは稀で,ワクチン接種後5~10日以内に発症し,最長30日間に及ぶ.
  • 黄熱ワクチン関連粘液疾患(YEL-AVD)は,自然発症の黄熱に類似しており(または非特異的な多臓器不全として出現することもある),生命を脅かすもので,現在までのところ,初回ワクチン接種者のみに発生している.ほとんどの症例はワクチン接種後5〜10日以内に発症する.
  • 米国でのYEL-AVD発生率は約0.3/10万ワクチン接種.60歳以上の高齢者では1.2/10万ワクチン接種,70歳以上では4/10万ワクチン接種までリスクが増大する.全世界で報告された全YEL-AVDにおける致死率は約50%.
薬物相互作用
  • 黄熱ワクチンは,他の生ウイルスワクチンと同様に,COVID-19ワクチンを含む不活化ワクチンと同時に(または前後のどの時点でも)接種できる.
  • 可能な限り,注射生ウイルスワクチンを同日に接種すること.同日に接種しない場合は,生ウイルスワクチンは少なくとも4週間の間隔を空けて接種する必要がある.
  • Chloroquineはin vitroで黄熱ウイルスの複製を阻害するが,黄熱ワクチンに対する抗体反応には影響しない.

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • 妊娠中における黄熱ワクチン接種は,渡航が避けられず,黄熱ウイルス曝露リスクが理論上限定的なワクチン接種リスクを上回ると考えられる場合のみとすること.
  • 通常,女性はワクチン接種後4週間は妊娠を避けなければならない.
  • 黄熱ワクチンは母乳を介してウイルスを伝播させる可能性があるため,9カ月未満の乳児に授乳中の女性は禁忌.
  • 接種を回避または延期できない場合は,接種後少なくとも2週間は授乳を一時中断し,その間は母乳を搾乳して廃棄すること.
免疫不全/HIV
  • 重症免疫不全,コントロールされていないHIV,CD4<200のHIV患者(小児ではリンパ球<15%)では禁忌.
  • 黄熱ワクチン接種はコントロールされたHIV感染者にも有効であると考えられるが,非HIV感染者に比べ,免疫力が急速に低下する可能性がある.
  • 安全性,有効性のためには,HIV患者のCD4よりもウイルス学的抑制の方が重要.
  • 免疫不全や免疫抑制のために黄熱ワクチン接種が禁忌の場合,黄熱リスクがある地域への渡航を避けるように,旅行者は強く勧告される.
  • 黄熱病リスクがある地域への渡航が避けられない場合は,医療免除を提供,防護措置に関するカウンセリングを強化する必要がある.
  • 海外渡航で必要とされる唯一の要件がワクチン接種である場合(感染リスク増加の理由ではない場合),医学的免除を提供すること.

血清学検査

  • 妊婦ではセロコンバージョン率が低いので,血清学検査を考慮してもよい.

コメント

  • 北米とブラジル以外では,Stamaril(Sanofi Pasteur)が最も広く使用されているワクチンであり,質的にはYF-Vaxと非常によく似ている.
  • ブラジルBio-Manguinhos/FiocruzおよびセネガルInstiture Pasteurからの黄熱ワクチンをWHOが事前審査しているが,医療資源の乏しい国々で上手に使えば安全かつ有効.
  • ロシアChumakov研究所のSinSa Vacは,WHOが2022年に事前審査し,旧ソ連地域で広く用いられている.
  • CDC ACIPの推奨は,実際にワクチン接種を行う医療従事者がアクセスすることの多いFDA添付文書と比べて,より広い(適応外使用)こともより狭いこともある.
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2026/04/07