日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

チクングニア熱,ワクチン  (2026/02/17 更新)


ワクチンの適応

はじめに
  • チクングニアはアルファウイルスであり,デング,ジカ,黄熱,ダニ媒介性脳炎(TBE),ポーワッサン脳炎のようなフラビウイルスではない.
  • ヤブ蚊属(Aedes albopictusおよびA. Aegypti)により媒介され,早朝,午後遅くに刺されることが多い.
  • 米国では1種類のワクチンが,英国,カナダその他の国では別の生ワクチンが承認されている
  • Vimkunya(CHIK-VLP,Bavarian Nordic)は非生組み替えウイルス様粒子(VLP)ワクチンで,FDAおよびEMAは2025年2月に承認した.
  • IXCHIQ(CHIK-LAValneva),生弱毒化ワクチンで,EMAとカナダ保健省が承認した.
  • いままで承認されている他の高反応原性ワクチンと比較しても反応原性が高い.
  • 米国および他の地域で,重症有害事象(脳症を含む)および何例かの死亡と関連している.
  • 米国では年間100~200の輸入症例があり,そのほとんどがアメリカ大陸とアジアからの症例であった.
  • 10~20年ごとに爆発的な症例多発が起こる可能性がある
  • 2025年に新たに世界的な大規模症例多発が始まった
  • 死亡率は低く,流行地でも0.05%で,そのほとんどは高齢者および免疫不全者である.
  • 持続的な関節痛が,3ヵ月で約50%に,12ヵ月で約30%に起こるが,重症度はさまざまである.
ワクチンの適応
 標準コース(ルーチン)
  • チクングニアウイルス曝露の可能性のある検査施設従業員
  • 生ウイルスを用いた研究あるいは非常に特異的な診断作業者
  • ルーチンの臨床検体の取り扱い者は除外
  • 流行地住民についてのWHOのSAGEガイドラインは2026年になる予定
  • SAGEの方針では,ワクチン有効性のデータがなければガイドライン作成はしてはいけないことになっている.
 海外渡航
  • CHICK-VLP(年齢≧12歳)
  • CDCが指定した症例多発地域でのみ推奨される
  • 過去5年に米国旅行者の明らかな感染例が中央値1以上であった地域への長期渡航(たとえば,≧6ヵ月)では考慮すること.
  • 米国以外のほとんどの当局によると,CHIK生弱毒化ワクチンについてのみの場合,年齢>65歳は警告の対象となる.一般的には,ワクチン接種は遅らせるべきだが,ワクチン接種による予防の有用性が有害作用リスクを上回る場合には適応となることもある.
用量とスケジュール
商品名(製造元)
Vimunya(Bavarian Nordic)
IXCHIQ(Valneva)
(米国では撤退,現在は入手できない)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
組み替え蛋白(ウイルス様粒子). CHIK-VLP
生弱毒化ウイルス.CHIK LA
年齢
≧12歳
≧18歳(一部の国では>12歳)
用量,経路
0.8mL筋注
0.5mL,筋注
初回接種スケジュール(標準コース)
1回接種
1回接種
初回接種スケジュール(短縮コース)

なし
初回追加接種
未定
未定
それ以降の追加接種



有効性,予防効果持続期間/
選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
  • 2種類のワクチンの抗体反応は,中和化試験が異なり,製薬会社が用いた評価スコアが異なるため比較ができない.
  • 両ワクチンとも,ワクチン有効性試験は第IV相試験として実施され,2029~30年までに結果が発表される予定である.
  • Vimkunya
  • 年齢12~64歳:予防的抗体反応(SNANT 80≧100;推定上の抗体反応と考えられる),15日では97%,22日では98%,6ヵ月では86%.
  • >65歳:予防的抗体反応は,15日で82%,22日で87%,183日で76%.
  • 抗体反応の開始は早い:ほとんどのワクチン被接種者で8~15日
  • ワクチン効果(VE)に関する試験はない.VEデータではなく代理指標によって,FDAが新たな疾患に対して初めて承認したワクチンである.
  • ヒトでのVEデータはない
  • IXCHIQ
  • Valnevaは,チクングニア熱ワクチンIXCHIQ®の米国における生物学的製剤承認申請(BLA)および治験薬申請(IND)を,2025年8月にFDAによる承認停止を受け,2026年1月に自主的に撤回した.
  • 流行地でない米国の症例.抗体保有は,ヒト血清の動物への受動的移行および野生型チクングニアウイルス誘発の研究に基づき,FDAの基準と同様に,試験開始時のμPRNT力価陰性(μPRNT力価 <20)の参加者に対してμPRNT50力価≧150と定義された.
  • FDAが特定した抗体保有率は,重要な第III相試験での非流行地の症例で98.9%であった(Lancet 401: 2138, 2023).
  • 年齢65歳以上での力価は18~64歳と同じ.例数が少ない
  • 抗体反応はIXCHIQの方がVimkunyaに比べてより長く続くようだ(3年まで)
選択,互換性
  • 一部の専門家はIXCHIQについて,より若く健康な人でも一定のワクチンによる全身性ウイルス性の中枢神経および/または関節の炎症が起こることを懸念している.ただし若ければ脳症には至らない.
  • 有効な非生チクングニアワクチン(Vimkunya)が使える以上は,注意するのは当然のことである.

毒性

禁忌
  • Ixchiq:免疫不全者または妊婦
  • IxchiqまたはVimkunyaのいずれかの成分に対する重症アレルギー反応(たとえば,アナフィラキシー)の既往
警告
  • Vimkunya
  • 免疫不全者では免疫反応が減弱する
  • IXCHIQ
  • 年齢≧65歳
  • 重症または長期のチクングニア様副作用
  • 出産時にウイルス血症があった妊婦からの自然野生株チクングニアウイルスの垂直感染は多くみられ,新生児で致死的なチクングニアウイルス疾患を起こす可能性がある.
  • ワクチンによるウイルス血症は第1週に起こり,ワクチン接種後14日までに解消する.
  • ウイルスワクチンが垂直感染し,胎児あるいは新生児副反応を起こすかどうかは知られていない.
副作用
  • Vimkunya
  • 12~64歳の観察対象の中で以下の有害反応(>10%)が報告されている:注射部位痛(23.7%),疲労(19.9%),頭痛(18.0%),筋肉痛(17.6%).
  • 65歳以上での観察対象中の有害反応としてもっとも多く報告された(>5%)のは注射部位痛(5.4%),筋肉痛(6.3%),疲労(6.3%)だった.
  • 定義された観察対象以外の重症な有害事象はなかった.
  • IXCHIQについては,FDAが定義するCLIはなかった.
  • Ixchiq
  • 安全性データ登録:3,500例.そのうち346例が年齢65歳以上だった.
  • ワクチン接種後10日以内のsolicited(定義された観察対象中の)全身性有害事象は,ワクチン接種者で50%,プラセボ接種者で27%だった.
  • ワクチン接種群:頭痛(31.6%),疲労(28.5%),筋肉痛(23.9%),関節痛(17.2%),発熱(13.5%),悪心(11.2%)
  • 関連する全身性有害事象は,ワクチン接種者で1.9%,プラセボ接種者で0.1%だった.
  • もっとも多かったのは発熱(1.3%),関節痛(0.3%),筋肉痛(0.3%)
  • ワクチン接種後のチクングニア様疾患(CLI)は安全性の指標として興味深い.
  • ワクチン接種後30日以内に発症したのは,発熱,1箇所以上の関節痛または関節炎,筋肉痛,頭痛,背痛,発疹,リンパ節浮腫,一定の神経学的,心臓または眼症状など.
  • チクングニア様副反応は,ワクチン接種者で11.7%(361/3,082例),プラセボ接種者で0.6%(6/1,033例)だった.
  • ほとんどの症状は軽症~中等症だった.
  • 年齢65歳以上のコホートで明らかなリスク増大はなかった.
  • 日常生活に支障を来し医学的介入が必要となった重症のCLI反応は,ワクチン接種者の1.6%(n=48)で起こったが,プラセボ接種者では0%だった.
  • ≧30日長期化した反応はワクチン接種者の0.5%(n=14)で起こったが,プラセボ接種者では0%だった.
薬物相互作用
  • 知られていない.
  • 他のワクチンとの同時接種についてのデータはない.

特に注意が必要な対象

妊婦,授乳
  • ヒトでの十分なデータがないため,妊婦はワクチン接種の警告となる
  • IXCHIQは生ウイルスである:ウサギではVimkunya後の安全性シグナルが検出されている.
  • 通常は,ワクチン接種は出産後まで延期するべきである.
  • リスクが高く,曝露が避けられない場合にはワクチン接種が正当化される可能性があるが,妊娠第1期および妊娠36週以降のワクチン接種は避ける.
  • 両方のチクングニアワクチンが使用可能なら,CHIK-VLPによるワクチン接種の方が望ましい.
  • IXCHIQではデータがないため,授乳はワクチン接種の警告となる.
  • Vimkunyaでは,授乳はワクチン接種の禁忌でも警告でもない.
免疫不全/HIV
  • 免疫不全者におけるVimkunyaの抗体反応率のデータはない
  • Ixchiqは生ウイルスワクチンであり,すべての免疫不全者およびHIV感染の重症免疫不全者には禁忌である.

血清検査

  • どのような状況でも適応とならない

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2026/02/16