日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ライム病-診断  (2024/04/09 更新)


二段階血清検査

  • 感度
  • 感染初期では低い,30~40%:抗体形成まで時間がかかる.
  • 播種性ライム病では70~100%,後期播種性疾患では95~99%.
  • 数ヵ月~数年症状があったが未治療の患者でIgG血清反応陰性なら,検査の間違いやまれな体液性免疫不全状態でない限り,ライム病の診断は除外される.
  • 特異度:すべての病期で95%
  • ライム病が疑われる症状の持続が30日未満の患者で,最初の検査が陰性の場合は,回復期血清検査を考慮する.
  • 第一段階:FDAが承認している酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)あるいは免疫蛍光法(IFA)は,B. burgdorferi抗原に対する全般的な抗体反応,IgM,IgGを測定するものである.これはスクリーニング検査であって感度は非常に高いが,播種性疾患に対する特異度は低い.検査結果が不定あるいは陽性なら,確認検査を行う必要がある.
  • 第二段階:あらかじめ選択されたB. burgdorferi抗原に対する抗体を,ウエスタン・イムノブロットにより検出する.この確認検査は播種性疾患に対し感度も特異度も非常に高い.播種性疾患患者では全例で,EIA/ELISAもウエスタン・イムノブロットも陽性になるはずである.
  • 所見/症状の持続が30日未満の患者では,確認検査としてIgMおよびIgGウエスタン・イムノブロットを行う.
  • 所見/症状が30日を超える患者では,確認検査としてIgGウエスタン・イムノブロットのみを行う.IgMウエスタン・イムノブロットは,後期播種性疾患では偽陽性となるため推奨されない.
  • IgMウエスタン・イムノブロットが陽性:2~3本のバンドが出現する(21~24,39,41kDa).ウエスタン・イムノブロット単独での陽性は,ほとんどの場合播種性疾患での偽陽性である.
  • IgGウエスタン・イムノブロットが陽性:5~10本のバンドが出現する(18, 21~24, 28, 30, 39, 41, 45, 58, 66, 93kDa)
  • 注:出現したバンドの数が上より少ない場合は,非特異的であり陽性結果と解釈すべきでない.
  • 2019年7月19日,FDAは新しいいくつかのライム病血清学検査を承認し,ライム病検査アルゴリズムの二次検査として,ウエスタンイムノブロットに替えてEIAを用いてもよいとしている:CDC-ライム病血清学的診断に関する推奨

ライム病の二段階検査








テスト結果の解釈

症状
流行地
での曝露
二段階検査
コメント
初期ライム病:遊走性紅斑(EM)と一致した病変
あり
なし
臨床的な検査前確率は高いが,初期では抗体検査の感度は低い.

なし
なし
検査前確率は低く,検査の感度は低い.偽陽性率が高い.他の診断を考慮する.
初期播種性ライム病:多発性のEM病変,顔面神経麻痺,髄膜炎,心臓炎
あり
行う
検査の感度,特異度は良好
 
なし
おそらく行う
検査前確率は低く,したがって偽陽性率が高い.陰性的中率は高い.他の診断を考慮する
後期播種性ライム病:大関節炎の再発
あり
行う
検査の感度,特異度は良好
 
なし
おそらく行う
検査前確率は低く,したがって偽陽性率が高い.陰性的中率は高い.他の診断を考慮する
後期神経系ライム病:末梢神経障害,脳炎,脳脊髄炎
あり
おそらく行う
後期神経系ライム病は米国ではまれ.他の診断を考慮する
 
なし
なし
偽陽性の可能性が高い.他の診断を考慮する
非特異的症状:頭痛,抑うつ状態,倦怠感,関節痛または筋肉痛
あり
おそらく行う
他の診断を考慮するが,症状が持続するようなら二段階検査を検討する.偽陽性の可能性が高いことに注意
 
なし
なし
検査前確率は非常に低く,偽陽性の可能性が高い.他の診断を考慮する

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2024/04/08