日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

インフルエンザ,ワクチン  (2024/08/06 更新)


ワクチンの適応

ルーチン
  • 生後6ヵ月の全例に対し,インフルエンザワクチン年1回の接種が適応となる.
  • 2020~2021年以来B/山形株がみられなくなったことから,インフルエンザワクチンは再び3価となっている
  • 65歳には強化ワクチンが推奨される:高用量(HD-IIV3),アジュバント(aIIV3),または組み換え(RIV3)は,すべて強化ワクチンとみなされる.
  • ACIPは,年齢18~64歳の固形臓器移植レシピエントで免疫抑制剤の投与を受けている場合は,HD-IIV3またはaIIV3をIIV-3またはRIV3に代わる選択肢としてよいとしている.
  • 生後6ヵ月~8歳の小児は,インフルエンザワクチンを初めて接種する際には初回接種として2回注射し,その後数年間で1回注射とする.
  • インフルエンザ合併症リスクは以下のような場合に極めて高い
  • 生後6ヵ月~59ヵ月
  • ≧50歳
  • 慢性肺疾患(喘息を含む),心血管疾患(孤立性高血圧症を除く),腎臓病,肝疾患,神経性疾患,血液疾患,代謝性疾患(糖尿病を含む)のある成人および小児.
  • なにかの原因により免疫力が低下している人(薬剤やHIV感染による免疫抑制を含むが,これに限らない).
  • インフルエンザの季節に妊娠中または妊娠予定.
  • アスピリンやサリチル酸を含む薬を服用しており,インフルエンザウイルス感染後でライ症候群を発症するリスクがある子供や青年(6ヵ月~18歳)
  • 老人ホームやその他の長期介護施設の入居者.
  • アメリカ先住民/アラスカ先住民.
  • 極度の肥満(成人:BMI40).
  • インフルエンザワクチン接種がただ1回だけ必要なほとんどの人にとっては,理想的には接種は9月~10月に行われるべきである.ワクチン接種は,10月以降も,インフルエンザウイルスが流行しているシーズン中,有効期限切れでないワクチンが入手可能な限りはずっと続けなければならない.早期ワクチン接種が考慮されるのは,2回接種が必要となる小児,妊娠第3期の妊婦(インフルエンザ流行期における乳児に対する経胎盤抗体による保護を与えるため)である.
海外渡航
  • 温帯地域での季節性インフルエンザは,通常,北半球では10月から5月,南半球では4月から9月である.
  • ワクチン接種は,9月から10月いっぱい,ワクチン未接種の場合はインフルエンザ流行期を通じて推奨される.
  • 南半球に渡航する場合は,インフルエンザワクチンの接種時期が変更になることがある.南半球のワクチン製剤は異なるので,北半球では通常は入手できない.
  • 熱帯地方ではインフルエンザは一年中流行している可能性がある.
  • 合併症リスクが高い米国市民は,前年の北半球の秋/冬期でのワクチン接種を受けていない場合,南半球の冬期(4月~9月)に南半球または熱帯への渡航,または目的地がどこであれ,クルーズ船やツーリスト団体旅行では,出発前のワクチン接種を考慮すること.
  • 次シーズンのインフルエンザワクチンが使用できるようになる前,渡航のために製剤でのワクチン接種を受けた人は全員(リスク状態にかかわらず),次の秋または冬に最新のワクチン接種を受けなければならない.
投与量とスケジュール
商品名(製造元)
ワクチン(タイプ,CDC略語)
年齢
用量,経路
初回接種スケジュール-ルーチン
その後の
追加接種
不活化卵ベースでの標準用量
Afluria 3価
標準用量,卵ベース,IIV3
≧6カ月
6カ月~35カ月
7.5μg/0.25mL筋注

≧3歳
15μg/0.5mL筋注
生後6カ月~8歳の場合は初回2回接種

それ以外は1回接種
年1回
Fluarix 3価,FluLaval 3価,Fluzone 3価
標準用量,卵ベース,IIV3
≧6カ月
15μg/0.5mL筋注
生後6カ月~8歳の場合は初回2回接種

それ以外は1回接種
年1回
細胞培養ベースでの標準用量
Flucelvax 3価
細胞培養ベース,卵なし,ccIIV3
≧6カ月
15μg/0.5mL筋注
生後6カ月~8歳の場合は初回2回接種

それ以外は1回接種
年1回
強化
FluBlock 3価
組換え,卵なし,RIV3
≧18歳
45μg/0.5mL筋注
1回接種
年1回
Fluzone,高用量,3価
高用量,卵ベース,HD-IIV3
≧65歳
60μg/0.5mL筋注
1回接種
年1回
Fluad 3価
アジュバント添加,卵ベース,aIIV3
≧65歳
15μg/0.5mL筋注
年1回
弱毒化生
FluMist 3価
弱毒化生ウイルス,卵ベース,LAIV3
2~49歳
106.5~7.5 fluorescent focus units(FFU)/0.2mL鼻腔内
生後6カ月~8歳の場合は初回2回接種

それ以外は1回接種
年1回

有効性,予防効果持続期間/選択・互換性

標準ワクチン
  • 予防効果の持続期間は6ヵ月だが,約4ヵ月後から低下する.
  • >60歳では大きく減衰.
強化ワクチン
  • 臨床試験データは限られており,一貫していない.
  • 観察データは入手しやすいが,バイアスや測定不能な交絡因子の影響を受けやすい.
  • いくつかの研究では一般的に,標準ワクチンにくらべ,相対的有効性が17~30%とわずかに増加することが示されている.
選択,互換性
  • IIV3製品はほぼ互換性がある
  • LAIV3は適応患者の年齢幅がもっとも狭い
  • 3種の強化ワクチン(aIIV3,HD-IIV3,RIV3)はいずれも高齢者に適している.十分な直接比較研究はない.

毒性

禁忌
  • 卵食に対するアレルギー反応(アナフィラキシーを含む)は,現在では,インフルエンザワクチン選択において考慮する必要はない.2023年までにACIPは,卵アレルギーのある人はすべて年齢に応じたインフルエンザワクチン(卵ベースまたま非卵ベース)を受けることを推奨している.
  • ワクチンはすべて,アナフィラキシーの診断と対応が可能な状況で接種しなければならない.
  • いずれかのインフルエンザワクチンに対してアナフィラキシーの既往があれば,それ以降の卵ベースワクチンおよびLAIVの接種は禁忌となる.
  • LAIVについては,以下は禁忌とみなされる.
  • アスピリンまたはサリチル酸塩を含む医薬品を服用している小児
  • 過去12ヵ月以内に喘息または喘鳴の診断を受けた2歳~4歳の小児
  • 何らかの原因で免疫力が低下している小児または成人
  • 保護環境が必要な重度の免疫抑制者と密接に接触する人または介護者.
  • 妊娠中
  • 髄液漏が続いている人,または人工内耳のある人
  • 抗インフルエンザウイルス薬として,オセルタミビルとザナミビルを過去48時間以内,ペラミビルを過去5日以内,バロキサビルを過去17日以内に投与している人
警告
  • 発熱の有無にかかわらず,中等症または重症の急性疾患は,ワクチン接種に対する一般的な警告となる
  • インフルエンザワクチン接種後6週間以内にギラン・バレー症候群(GBS)の既往がある場合,予防接種の適応外となる.
  • 卵ベースのIIV,LAIVに対する重症アレルギー反応の既往(例えば,アナフィラキシー)がある場合は,ccIIV3またはRIV3の使用に「警告」となる.
  • Fluzone,四価ワクチン:ワクチン接種直後の失神が報告されている.
  • 昏倒による障害を避けるために,適切な処置を講じておくこと.
  • LAIVの場合,5歳以上の喘息,中等症または重症の現病歴,およびインフルエンザ合併症のリスクを高める基礎疾患がある場合,要注意である.
  • 卵アレルギー歴
  • 卵食に対するアレルギー反応は,アナフィラキシーも含め,もはや要因ではない.上記参照.
副作用
  • 痛み,赤み,腫れなどの局所反応
薬物相互作用
  • 抗インフルエンザウイルス薬はLAIVの複製を阻害し,効果を低下させる.

特に注意が必要な対象

妊娠,授乳
  • 妊娠中はインフルエンザによる合併症リスクが高まるため,インフルエンザワクチンの接種が推奨される.
  • 妊娠中のインフルエンザワクチン接種は,妊娠中および出産直後の呼吸器疾患やインフルエンザリスクの減少と関連する.
  • 妊娠中のインフルエンザワクチン接種は、新生児の呼吸器疾患やインフルエンザのリスク低下と関連している.
  • 授乳は,禁忌にも警告にもならない
免疫不全/HIV
  • CD4細胞が大幅に減少した患者では,HIVはインフルエンザワクチンの有効性の低下と関連する.
  • その他の免疫抑制も有効性を低下させる可能性がある.すべての議論は Clin Infect Dis 58: e44, 2014 を参照のこと.
  • 免疫不全患者は,LAIV3を接種すべきでない

血清学検査

  • 血清学検査は意味がない

コメント

  • 米国で承認されている,それぞれのワクチンのFDA添付文書
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2024/08/05