日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

結核-診断検査  (2023/05/23 更新)
結核および潜在性結核の診断のための検査


診断検査

  • M. tuberculosis(MTB)感染の診断検査
  • CDCおよびWHOは,結核皮膚検査(TST)またはインターフェロンγ応答測定法(IGRA)のどちらも,年齢5歳以上での潜在性結核(LTBI)検査に使用可能として推奨している(Clin Infect Dis 64: e1, 2017およびWHO潜在性結核ガイドラインを参照).
  • CDCは,ほとんどの状況にはTSTよりもIGRAを推奨しているが,5歳未満の小児には例外としている(ただし,3歳未満に対して推奨している専門家もいる).
  • TSTもIGRAも,潜在性結核と活動性結核を区別することはできない.
  • WHOからの新しい推奨は,新規の迅速診断検査と,より短期で安価な処方を用いることで,多剤耐性結核(MDR-TB)の検出を迅速化し,治療アウトカムを向上することを目指している.詳細はWHOのMedia Centreの関連ページを参照.

結核皮膚検査(TST)

  • TSTはPPDと同じ.
  • ツベルクリン5単位(一般診断用PPD)注射後48~72時間で,以下の基準でTST陽性を判定する.
  • 硬結≧5mmで陽性:HIV陽性,免疫不全,Prednisone≧15mg/日投与,胸部X線で結核の治癒像,最近の濃厚な接触
  • 硬結≧10mmで陽性:結核が高率に存在する国の出身,静注不法薬物使用者,低所得者,長期にわたる介護施設入居者,慢性疾患,珪肺症
  • 硬結≧15mmで陽性:他の点では健康
  • 2段階検査(最初の検査が陰性だった場合,1~3週以内に2回目のTSTを行う)は,医療従事者や療養施設入居者のように定期的な再検査が予定されている成人では有用である.この方法では,2回目のTSTに対する反応亢進が誤って最近の感染と解釈される可能性が低くなる.
  • BCGワクチンを小児期に接種している場合:
  • TSTで硬結≧10mmであり,結核が多い国の出身者である場合は結核を考える.
  • 結核の有病率の低い地域では,TST反応≦10mmから18mmまでは結核よりもBCGによる可能性が高い(Clin Infect Dis 40: 211, 2005).
  • BCG接種歴がある場合,2段階TSTで反応亢進の可能性がある.
  • ルーチンのアネルギー試験は推奨されない.

他の結核診断検査

潜在性結核感染(LTBI)
  • インターフェロンγ応答測定法(IGRA)(総説はJAMA 308: 241, 2012MMWR 59(RR-5): 1, 2010参照):T-SPOT.TB(Oxford Immunotec),QuantiFERON-TB GoldおよびQuantiFERON-TB Gold Plus(Qiagen)
  • IGRAは,BCGワクチン接種者(抗原検査はBCGと交差反応しない)や1回しか検査を受けない人に対して推奨される.
  • おそらくTSTが適応となるすべての状況で使用可能だが,5歳未満の小児や免疫不全者ではデータが限られるため注意して使用すること(免疫不全者でIGRAとTSTを比較した総説として,Am J Respir Crit Care Med 188: 422, 2013を参照).
  • IGRAは潜在性結核と活動性結核を区別できるものではない.
  • 感度~80~90%.
  • 注:低リスク患者ではTSTよりもIGRAの方が偽陽転率が高い.偽陽性となるさまざまな原因に関する総説:J Clin Microbiol 54: 845, 2016
活動性のM. tuberculosis感染に対する迅速(24時間)診断検査
  • 現在,活動性結核診断のためのさまざまなプラットフォームや検査が利用できる(Mol Biol Rep 47: 4065, 2020Chonnam Med J 54: 1, 2018),たとえばLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法,LPA(line probe assay)法,pyrosequencing(Clin Infect Dis 69: 668, 2019),全ゲノムシーケンシングなど.一般的に用いられるいくつかの検査法を下記にあげた.
  • Enhanced Amplified Mycobacterium tuberculosis Direct Test(E-MTD)(Gen-Probe):呼吸器標本からM. tuberculosisリボゾームRNA(rRNA)を増幅し検出.FDAは塗抹陽性および塗抹陰性の標本に対する使用を承認.
  • AMPLICOR結核診断検査(Roche Diagnostics):呼吸器標本からM. tuberculosis rRNA遺伝子を増幅し検出する.FDAは塗抹陽性の標本に対する使用を承認.
  • COBAS TaqMan MTB検査:呼吸器標本からM. tuberculosisを検出する,rRNA遺伝子を標的としたリアルタイムPCR検査(米国では利用できない)で,性能はAMPLICORと同等(J Clin Microbiol 51: 3225, 2013).
  • FDAの承認
  • 塗抹陽性および塗抹陰性の標本に対する使用を承認.
  • 1~2回の喀痰検体検査が陰性であれば,結核による隔離は中止する
  • 感度
  • 塗抹陽性,培養陽性の症例からの1回喀痰標本では感度98%.
  • 塗抹陰性,培養陽性の症例からの1回喀痰標本では感度70%まで(3標本なら感度90%).
  • 結核性髄膜炎,肺外疾患の診断に推奨されている(肺結核以外,肺結核では相対的に感度が低い).
  • 特異度99%.
  • 98%の症例でRFP耐性または感受性を正確に同定できる.
  • スメア陰性検体,小児患者,HIV感染患者,肺外結核でのM. tuberculosis検出についてはXpert MTB/RIFより感度が高い.
  • 特異度はXpert MTB/RIFよりやや低い.
  • WHOは,結核性髄膜炎が疑われる患者での最初の診断検査として推奨している:Xpert MTB/RIFまたは培養よりも感度が高い(Lancet Infect Dis 18: 68, 2018).
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2023/05/22