日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

前立腺炎-細菌性,急性  (2024/09/10 更新)
急性細菌性前立腺炎の治療


臨床状況

  • 急性前立腺炎の病原体および治療は患者の年齢によって異なる.
  • LVFX:通常用量は500mg:低用量での治療失敗の報告があり,より高い薬物濃度が望ましいことから一部の専門家は750mgを推奨している.
  • 急性前立腺炎は典型的に,発熱,悪寒,倦怠感,筋肉痛,排尿障害,骨盤/会陰部痛,混濁尿を示す(総説 Clin Infect Dis 50: 1641, 2010).
  • 合併症:菌血症,精巣上体炎,前立腺膿瘍,他の部位への進展あるいは転移(関節など),慢性前立腺炎への移行.

病原体

  • 年齢<35歳
  • N. gonorrhoeae
  • C. trachomatis
  • 年齢≧35歳
  • 腸内細菌科
  • Coliforms
  • Enterococcus

第一選択

  • 合併症がなく,性感染症のリスクあり(年齢<35歳):
  • CTRX 500mg筋注††1回,またはCFIX 400mg経口1回),その後DOXY 100mg 1日2回・10日
  • 合併症があり,性感染症のリスクが低い:
  • LVFX 500~750mg静注/経口1日1回,またはCPFX 500~750mg経口または400mg静注1日2回)・最低10~14日,または
  • ST 2錠(Trimethoprim 160mg)経口1日2回・最低10~14日
  • 4~6週の治療を勧める専門家もいるが,これは通常慢性前立腺炎で行われる治療である.
  • 泌尿器選択的αアドレナリン受容体拮抗薬(たとえばタムスロシン,Alfuzosin,シロドシン)を用いて,症状(たとえば尿閉,排尿困難)の緩和を考慮する.

(††:米国では処方される)

第二選択

  • Chlamydiaによる前立腺炎が判明した場合,AZM 1g週1回・4週で治療
  • 耐性の腸内細菌科に対して:Ertapenem 1g静注1日1回・最低2週(4週の治療が必要となることもある)
  • 耐性のPseudomonasに対して:(IPM/CS 500mg静注6時間ごと,またはMEPM 500mg静注8時間ごと)・4週

コメント

  • N. gonorrhoeae感染に対して,フルオロキノロンは耐性増大のため現在では推奨されない.
  • LVFX:通常の推奨用量は500mg:低用量での治療失敗の報告があり,一部の専門家は高薬物濃度を得るために750mgが望ましいとしている.
  • フルオロキノロン(N. gonorrhoeae以外)やSTなど,前立腺への移行性の高い抗菌薬(高脂溶性でイオン化の度合いが低く,解離定数が高く,蛋白結合率が低く,低分子量)を使用すること.
  • AIDS患者では前立腺はCryptococcus neoformansの感染巣になりうる.
  • 急性尿路感染症と同様14日治療(1回投与の処方ではない.4~6週治療が必要となることもある).
  • C. trachomatisおよびN. gonorrhoeaeの存在が不明の場合は尿検査を行う.
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2024/09/09